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 01:お一人様ご案内

ナナシの住んでいる国は気候が安定していて、それに土がとても良い。だから野菜も果物も素晴らしく美味しい物が育つ。
そして有り難いことにその野菜や果物は他の国からいくらでも出すから売って欲しいと言われるほど。
そのおかけで国はとても豊かで平和だった。

そして今日とても美味しい果物があると噂を聞き付けた一隻の船が港にやって来ていた。

「到着しました!」

部下のその一言に男は立ち上がる。

「偵察してくる」
「お供致します!」
「おれ一人で十分だ」
「そうですか………………では、いってらっしゃいませカタクリ様!!」





兄に見付かるとすぐにお説教が始まってしまうのでナナシは城の廊下をこそこそと歩いていた。

「あら?姫様どちらに?」

途中メイドに話し掛けられてしーっ!とナナシは慌てる。そんな様子にメイドはクスクスと笑ってしまう。

「また遊びに行かれるんですか?」
「うん!お兄様には秘密にしてね?」
「王子様に聞かれたらお答えしますよ」
「う、裏切り者!」
「だってあんなに素敵な王子様に嘘なんかつけませんよー」
「う、うぅぅ!」
「フフフ、冗談ですよ。お気をつけて」

メイドの言葉にナナシは顔を輝かせた。
今日のおやつはシュークリームにしてね!なんてちゃっかり言ってからナナシは城を飛び出した。

町に出れば皆気軽にナナシに話し掛けてくる。お姫様とか関係なく皆ナナシが大好きなのだ。

「お!姫様おはよう!」
「おはよー!」
「あら、姫様!昨日またどっかの王子様が落ち込んで帰っていったけど、いったい何を?」
「お近づきの印に蛇のオモチャ投げただけー!」
「まあまあ!相変わらずですねー」
「えへへ」
「あ、姫様!今朝ちょうど果物を収穫したとこだよ!」
「本当!?やった!後で食べに行くねー!」
「ひ、姫様ー!!大変だー!!」

ナナシが町の人達とそんな話をしている時子供達が慌てた様子で港の方から走ってきた。
はぁはぁと息を切らしながら子供達は一生懸命話し出す。

「すっっっっごいデカイ人がいた!!」
「な、なんか怖かったんだよー!!」
「も、もし、町で暴れたりしたら………」

子供達のその言葉に町の人達はごくりと息をのむ。
ナナシはパンっと手を叩いた。

「世の中には色んな人がいるの!巨人もいれば小人もいる。手長族に足長族。だから!体が大きいだけで怖いとかダメ!」

そう言いながらナナシは子供達のおでこを指でつついた。たしかにそうだと町の人達は安心してすぐにいつもの様子に戻る。でも本当にデカイからびっくりしたんだと子供達はナナシに話続ける。

「OK!じゃあ案内を頼むよ!」
「え!?」
「あ、危ないよ姫様!」
「だ、誰か強い人呼ぼうよー!」
「大丈夫だって!私巨人とか見た事ないから見たいんだー!!」

行くぜ!と走り出すナナシ。実に好奇心旺盛である。

「そ、そっちじゃないよ姫様!」





カタクリは港から町に向かって歩いていた時、突然目の前に人が飛び出してきた。

「こんにちはー!!」

ナナシである。子供達は後ろで怯えた様子で立っている。カタクリは覇気でナナシが飛び出てくるのがわかっていたので別に驚いてはいない。
ナナシはカタクリの周りをクルクルと回りながら観察する。本には巨人はもっと大きいと書いてあったと思いながらも、こんなに大きい人を見るのは初めてなナナシは大興奮だった。

「わー!すごい!えっと……」
「509cm」
「ふぁ!?」

身長はいくつですか?と聞く前に答えが返ってきてナナシは驚いた。顔がキラキラと輝いて後ろにいる子供達の方を見た。

「この人予知能力がある!!」
「ひ、姫様!あ、危ないよ!」
「………姫だと?」
「あ、申し遅れました!私はこの国の姫ナナシと申します」

ドレスが嫌いなナナシは普段ラフな格好をしている。今も普通のワンピースだ。とてもお姫様がする格好ではない。
でも両手でワンピースの裾をつまみ頭を下げる姿は品があって美しい。カタクリは息をのんだ。そして少し鼓動が早くなる。

「どうかしましたか?」
「………いや」
「ひ、姫様もう帰ろうよー」

子供達はまだ怯えていて、大丈夫だよーとナナシが呼んでも距離を取ったまま。

「今日は何もしない……偵察に来ただけだ」

今日『は』と言う言葉を特に気にする事なく、いや正確には気付いてないだけなのだが、ナナシは笑顔を浮かべた。

「つまり…………観光ですね!!」
「いや、偵察………」
「皆ー!この人観光だってさー大丈夫だよー!」

観光と言われたら子供達は安心して寄ってくる。いきなり元気だ。

「なーんだ!観光かー!よかった!」
「おれん家の野菜うまいんだぜー!」
「ご飯はおれん家の店で食べてよー!」

初めて見る大きな人だから驚いて怯えていたが、もともとこの島の子供達は人懐っこいので観光客とわかるとばんばん話し掛ける。

「よーし!ここで会ったのも何かの縁です!私が今日はご案内しましょう!」
「いや、だから………」
「お一人様ご案内でーす!」

笑顔でこちらにどうぞー!と言いながら歩き出すナナシと子供達を見て、まァいいかとカタクリは後に続いた。










「あ、ところであなた様のお名前は……」
「…………カタクリだ」
「カタクリ様ですね!今日は是非私の国を楽しんでくださいね!」
「………よろしく頼む」
「姫様!あそこ行こうぜ!」
「いや、まずうちの野菜!」
「おれん家でご飯ー!」
「いや、最初は森で遊びましょう!かくれんぼ!」
「…………観光じゃないのか?」










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この国の人達手配書は一応確認するけど、ちゃんと見ないからカタクリの事知らない。

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