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 10:心配もほどほどに

ナナシがおでこをケガしてから五日がたった。
おでこの傷はナナシ的には治っているのだが、医者にかさぶたが取れたらいけませんからとまた包帯を巻かれて、今日もベッドの中。

ナナシはムスッとした顔をしていた。

「カータークーリーさーまー!」

カタクリはナナシの事が心配で仕事を寝室でしていた。

「どうした?」
「ひーまーでーすー!」
「………しりとりでもするか?」
「それ飽きたって言いましたよね!?もー!!」

ナナシはベッドの中で体をバタバタとさせる。それをカタクリは困った様子で見ていた。

「仕方ないだろう?ケガが………」
「じゃあ聞きますけど!!カタクリ様はこれくらいのケガでベッドに寝るんですか!?ええ!?」
「………ケガなんてそうしないからな」
「そーですか!!」

ふんっと言いながらナナシは布団を被ってしまった。
カタクリは溜め息をついた。それが聞こえたナナシは勢いよく起き上がる。

「溜め息つきたいのはこっちなんですけど!?」
「わ、悪い」

ナナシはふんっと言いながらまた布団を被る。もう完全に拗ねている。
最初の一日目は過保護だーとか笑いながら話をしていたのだが、二日目、三日目とどんどん口数は減っていき、四日目はほとんど無言で、今日はとうとうキレた。

「…………何か甘いものでも食べるか?」
「いらない!!動いてないんだからそんなにお腹なんて減らないですからね!!!」
「そ、そうか」

カタクリは本当に困っていた。

「どうしたら機嫌が直るんだ?」
「遊びにいっていいよ!って言ってくれたら一発です!!」
「それは無理だ」
「じゃあ直りませんね!!あーあ!!もォォォォ!ああああああああ!!!!」
「……………困ったな」

ナナシはチラッと布団から顔を出してカタクリを見た。

「外じゃなくてもいいんですよ?」
「何?」
「キッチンとか………お菓子作り出来るし」
「……………」





ナナシはエプロンを着けてウキウキとしながらキッチンに立っていた。カタクリもセットで。

「今日はクッキーを作ってみましょうか」
「はーい!」

お菓子作りが始まろうとした時カタクリがちょっと待てと手を挙げた。

「包丁は使うのか?」
「い、いえ!今回は使いません」
「そうか。でもオーブンは使うな?」
「は、はい」
「火傷しないだろうか?」
「も、もちろん!ナナシ様には危ないのでオーブンの出し入れはさせません!大丈夫です!」
「他に何か危険はないか?」
「……………出口はあちらですカタクリ様」

ナナシはぷくっと頬を膨らませてキッチンの出入り口を指差しカタクリを睨んだ。





キッチンを追い出されたカタクリは最初は廊下から覗いていたのだが、ナナシに部屋に戻って!と怒鳴られてしまい仕方なく部屋に戻っていた。

ナナシがまたケガでもしたらと考えると落ち着かなくて、カタクリは部屋の中をぐるぐると歩き回る。仕事なんか手につかなかった。

しばらくすると廊下をバタバタと走る音が聞こえてきてバンっとドアが開かれる。そこには満面の笑みのナナシが立っていた。

「見てくださいよカタクリ様!」
「ケガはしてないか?」
「もー!!してませんよ!!いい加減にしてください!!これ見てほら!!」

ナナシはカタクリに駆け寄りクッキーを見せた。今回は焦げていないし、形もちゃんとしている。

「うまく出来たな」
「へへへ!見た目だけじゃなくて味も美味しいんですよー!!食べてみてください!」

そう言われるとカタクリはクッキーを一つ口の中に入れた。パティシエ達が作るのと比べたらまだまだだが、でもちゃんと美味しかった。

「うん、うまい」
「やった!!たぶんもうすぐ紅茶が来ますから一緒に食べましょ!」
「そうだな」

ナナシの機嫌はすっかり直っているしケガもしなかったようなので、カタクリはほっと胸を撫で下ろしていた。















「あ、最後の一個です!お待ちかねのじゃんけんターイム!」
「待ってくれ。今回はおれにくれないか?」
「え?」
「お前の手作りだから食べたいんだ」
「…………し、仕方ありませんね!はい!」
「ありがとう」
「次はもっと、もーっと美味しく作りますね!」
「ああ、楽しみにしている」










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パティシエ達はめっちゃドキドキしながら教えてました。

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