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 09:かすり傷は大ケガ

ナナシは自分の頭に巻かれた包帯が気になって仕方ない。

「大袈裟では?」
「大袈裟ではありません!!おでこから血が出ていたんですから!!」

ナナシは結婚してから初めてケガをした。木から落ちてしまいその時枝でおでこを切ったのだ。
いや、切ったとは少し大袈裟で本当はただのかすり傷。血が出たとはいってもほんの少しだ。

でもそれを見たメイドが何故かパニックを起こしてしまった。
それは他の使用人達も同じで、ナナシが大丈夫だよーと言っても全く聞いてもらえず、医務室に強制連行された。
そして医務室の医者にそれはそれは丁寧に消毒をされ包帯まで巻かれてしまった。

ナナシはこのくらいのケガならいつも絆創膏で済ませていたのでとても鬱陶しい。

「取りたーい!」
「ダメに決まってるでしょ!!何言ってるんですか!?」
「だって邪魔なんだもん!」
「ナナシ様のお顔に傷が残ったら大変です!」
「そうですよナナシ様!」
「これくらい別に………」
「ダメです!!!!」

医者とメイドに怒鳴られ、なんて過保護な所なんだとナナシは思っていた。

自分の今まで住んでいた国だとかすり傷なんて日常茶飯事だったので、またですかー?と笑われて絆創膏を貼ってもらうくらいだった。

「あ!カタクリ様にもお知らせしなければ!」
「ス、ストップ!カタクリ様今日は忙しいって言ってたから!それにこんなかすり傷でいちいち報告なんて………」
「では、私が!」
「ちょっ、話を聞いてェェェ!?」

メイドは走って出ていってしまった。
ナナシはこんなかすり傷の報告されたってカタクリ様が困るだけだろうと溜め息をついた。

「さ、横になってくださいナナシ様」
「え?」





ナナシは医務室を出たくても出してもらえず仕方なくベッドに横になっていた。窓から脱出してしまおうとしたのだが医者に泣かれたのでやめた。

まだ遊び足りないナナシが動きたくてうずうずしていると廊下がなんだか騒がしくなってくる。

「ナナシ!!!」

バンっと勢いよくドアが開かれカタクリが入ってきた。そしてベッドで横になり頭に包帯を巻いているナナシを見て顔を青くする。何故か医者は黙ってしまうし、メイドは目に涙を浮かべる。

しーんと静まり返る医務室。

これなんの時間?とナナシは思った。

「大袈裟なんですよ皆!!」

ナナシはきっと呆れられるだろうなと思いながらカタクリにケガを見せるために包帯を取っていく。

「ほらね?全然…………」
「ひ、ひどいケガだ!」
「嘘でしょ!!?」

ナナシはまた医者によってしっかりと包帯を巻かれてしまった。どうなってるの?と思いながらナナシは首を傾げた。
そんな事を思っている時に医務室のドアが開いてパティシエが入ってきた。

「あ、ナナシ様!それにカタクリ様も!」

パティシエはペコリと頭を下げた。そのパティシエは手をケガしているようで持っているタオルが真っ赤に染まっていた。ナナシはそれを見てぎょっとする。

「た、大変だ!!!」
「あーこれくらいどうってことありませんからー」

あははと笑いながらパティシエは医者の側にいき手当てを頼んでいる。
カタクリ達はケガをしているパティシエを見ても気を付けろよとか大丈夫ですか?となんだかさっきと比べると随分軽い。

あれーとナナシは不思議で仕方ない。頭の包帯を取ってパティシエにおでこの傷を見せてみた。

「ねェこれどう思う?」
「わあァァァァァ!!ナナシ様がひどいケガを!!!」
「ナナシ!!包帯を取ったらダメだろう!!」
「ナナシ様いけません!!」
「……………き、基準がわからない」

ナナシがとても美しいから、ここの人達はかすり傷ひとつでも大ケガだと思ってしまうらしい。





ナナシはカタクリにそれはそれは丁寧に運ばれて部屋のベッドに寝かされてしまった。心配そうにこちらを見てくるカタクリになんだか申し訳ない気持ちになってくる。

「私元気です!!」

ナナシは笑顔で勢いよく立ち上がったのだが、カタクリにまた優しく寝かされてしまう。

「うぐぐっ」
「傷が痛むか?」
「こんなの痛みませんよー!」
「よかった…………ところで、何故ケガを?」
「え?あ、木登りで!」
「木登り………そういえば初めて会った日も登っていたな」
「はい!好きですから!」
「…………今までも木登りでケガはしていたのか?」
「いえ、そんなに………あ!一回だけ骨折しちゃった事ありますねー!着地失敗して!」

ドジですよねーと笑うナナシとは違い骨折と聞いたカタクリは顔を青くする。
そしてもしもまた着地に失敗して、今度は頭を打ちそのまま………なんて事まで考えてしまったようだ。

「ナナシ……もう木登りはしないでくれ」
「え!?き、木登りは楽しいから嫌ですー!」
「お前がもしも落ちたらと考えるとおれは……」
「大丈夫ですって!」
「頼む」
「だーから、大丈夫ー!」

ナナシは笑っているがカタクリは心配で仕方ないようだ。

「おれが大丈夫じゃないんだ……………お前が木登りをやめないなら、おれは島の木を全部殴り倒す」
「やだ、何それ怖い」

ナナシは流石に引いた。そしてカタクリ様までこんなに過保護だなんてどうしようと頭を抱える。
でもナナシは木登りは楽しいからやめたくない。どうすれば木登りをやめないでいられるか一生懸命考える。

「あ!じゃあ、じゃあ!カタクリ様が一緒の時に木登りさせてください!」
「………何?」
「ほら、あの、見聞色の覇気使えば落ちるかわかりますよね!?そしたらケガなんてしませんよ!!だからーお願いします!!」

手を合わせて自分を見詰めてくるナナシを見てカタクリは小さく溜め息をついた。

「わかった」
「やった!!ありがとうございます!!」
「でも、もしおれがいない時に木登りをしてケガをしたら木を全部………」
「わ、わかりました!絶対登りません!!」

ナナシはもし遊んでいてケガをしたら今度は絶対に誰にもバレないように気を付けようと思っていた。















「ところでお仕事は大丈夫ですか?」
「今はお前が心配だから側にいたい」
「ぜ、全然大丈夫ですよ私?だからまた遊びに行きたいなーって………」
「傷が治るまでダメだ!」
「…………はーい」










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たぶん町の人達も夢主がケガしたらパニックになります。

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