日常パニック | ナノ
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 05:鳴らない電伝虫

今日は喫茶店の定休日。ナナシは家でここ最近のカタクリの奇行を思い出していた。
喫茶店に来るのはまだいいとして。でもドーナツ、お見舞い、花、そして電伝虫。いったいなんのために?

「あー!わからなーい」

ナナシはやっぱり自分がカタクリに好かれているなんて微塵も思っていないのだ。大きな溜め息をつきながらナナシは目の前に置いているカタクリに渡された電伝虫を見詰める。

カタクリが遠征に出てからもう三日たったが、電伝虫はまだ一度も鳴っていない。
鳴ったら鳴ったでナナシは恐怖するのだが、連絡すると渡されたのに一度も鳴らないのはやっぱり心配になる。
だって海は何が起こるかわからない。もし嵐に襲われていたら?そんな考えがナナシの頭を過る。

「………今なら鳴ってもいいですよー」

ナナシは電伝虫をつんつんと突っついた。





一方カタクリは嵐に襲われる事などなく予定通りに航海を続けていた。
そして初日にペロスペローに電伝虫を没収されたカタクリは何度も電伝虫を盗み出し、そして壊すという事を繰り返していた。結果残りの使える電伝虫は全部箱に仕舞われて、ペロスペローにキャンディでかたーく固められてしまった。カタクリならキャンディで固められた箱を破壊することも出来るだろう。でもそれほどの力を加えたらきっと中の電伝虫も一緒に壊れる。カタクリはどうすればいいか箱の前で胡座をかき考えていた。

「………くそっ」
「またここにいたのか。ペロリン♪」
「ペロス兄……ナナシに三日も会ってないんだ。せめて声が聞きてェ」
「お前自分が何個受話器を壊したかわかっているか?」
「…………悪かったと、思ってる」

カタクリはペロスペローから目を逸らした。





カタクリが遠征に出て一週間がたった日の夜。カタクリはまだ帰ってきていないようだったので、ナナシは少し心配になり町の人に話を聞いた。カタクリの部下の人達が明日の朝までには帰ってくると言っていたそうで、ナナシは無事だったのかとほっと胸を撫で下ろした。そして明日帰ってくるならばきっともう電伝虫が鳴ることはないだろうと思いスキップしながら家に帰った。

ナナシは自分が寝ている時に電伝虫が鳴ったらどうしようと不安であまり寝れていなかった。
久しぶりにゆっくり寝れるとナナシは急いで夕飯とお風呂を済ませベッドに入ったのだった。





コンコンっとドアを叩く音でナナシは目を覚ました。枕元の時計を見ると夜中の三時。ナナシはちょっと怖くなり、きっと気のせいだと思い布団に潜る。でもまたコンコンっとドアが叩かれる。気のせいではないようだ。
ナナシは震えながらベッドから抜け出しドアにゆっくりと近付いた。

「………ど、ど、どなたですか?」

勇気を振り絞りナナシは尋ねた。

「……………おれだ」
「ひぇ!?カ、カタクリ様!?」

ナナシは勢いよくドアを開けた。

「………寝ていたか?」
「す、すみません!!」
「いや………こんな時間に悪かった」

カタクリは気まずそうにナナシから目を逸らした。
カタクリは今さっき島に帰ってきたばかりだ。結局丸々一週間ナナシに会えず、連絡をすることも出来なかったカタクリは一目でいいからナナシに会いたかった。だから悪いと思いながらも何度もノックしてしまったのだ。

「い、いえ!大丈夫です!な、何か急用でも?」
「…………………いや」

ただ会いたかった。そんな事言えるわけもなくカタクリの顔は赤くなっていく。

「あ、あの、立ち話もなんですし……よかったら」

このままだと失礼かと思ったナナシは、眠いし怖いしで嫌だったが、ドアを大きく開けた。
カタクリの顔が真っ赤になる。口元のストールを頭まで持ち上げ、その場に座り込んだ。
これはもしやただの癖なのかかも?と思いながらナナシはカタクリを見詰めた。

「…………こ、ここでいい」
「あ、そ、そうですか………えっと、うーん、ホットミルクでも、飲みますか?」
「…………頼む」

ナナシは部屋に戻り飲み物の準備をした。いったい何しにカタクリが来たのかわからないナナシはどうしよう!と震え上がった。

「お、お待たせしました!」
「………あぁ」

カタクリの前に正座で座るナナシ。戻ってきた時にはストールは元の位置に戻されていた。
カタクリはホットミルクを受け取るとなんだかそわそわと落ち着かない様子なのでナナシは首を傾げる。

「な、何か?」
「………あれだ」
「は、はい?」
「その、なんだ………お、お前は、その、男を、あーすぐ、家に入れるのか?」
「………へ!?や、まさか!!入れませんよ!まず男性が訪ねてくることありませんし!」
「そ、そうか……ならいい。こんな時間に本当に悪かった」

カタクリは受け取ったホットミルクを一気に飲み干すとまた明日。と言って帰っていった。
その言葉にナナシは大きな溜め息をついたのだった。















「ペロス兄悪い。戻った」
「カタクリ!全くどこに行っていた?ペロリン♪」
「…………ナナシに会いに」
「…………こんな時間にか?」
「…………我慢できなかったんだ」
「本当に仕方ない奴だねお前は。ペロリン♪」
弟の迷惑な行動に嫌われないかと心配になるペロスペローだった。










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ペロス兄このままカタクリさん家にお泊まりです。

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