日常パニック | ナノ
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 04:しばしの別れ

カーテンの隙間から差し込む朝日でナナシは目を覚ました。時計の針はまだ5時を過ぎたところだ。
寝過ぎたせいか少し体がダルいが熱はもうないようで、ナナシは立ち上がりキッチンへと向かう。
シンクに置かれた二つのカップを見てナナシは溜め息をついた。

「………現実だった」

ナナシはカップを洗い仕事に行く準備を始めた。昨日休んでしまったので、早く行き店長の代わりに準備を済ませておきたかったのだ。

朝食を軽く食べナナシはドアを開けた。目の前には壁。今までこんなものなかった。いや、それにこれは壁ではない足だ。ナナシが恐る恐る顔をあげるとカタクリと目が合う。
ひっ!と小さく悲鳴をあげたナナシは腰を抜かしそうになったがなんとか耐えた。

「お、おは、おは、おはよう、ございます!」
「あぁ……ずいぶん早いな」
「き、昨日たくさん寝たので……カ、カタクリ様は何故ここに?」
「……………………さ、散歩だ」

そう言って目を逸らすカタクリ。
ナナシの体調が気になってあまり寝れなかったカタクリは、四時頃から家の前でスタンバっていた。

「…………体調はいいのか?」
「は、はい!もうすっかり!ご、ご心配おかけしました!で、では、私は仕事に………」

ナナシは早くこの場から立ち去りたかったので、すすーとカタクリを避けようとしたら、ぼふっと顔に何かが当たりとっさに目を瞑る。
攻撃された!と一瞬パニックになったが、別に痛くないしとてもいい香りがしたのでナナシがゆっくり目を開けると、目の前には可愛らしい花束があった。

「………わぁ」
「昨日手ぶらで来てしまったからな。女は、その、花が好きだと聞いた」

昨日電伝虫で結婚はまだ早いからとペロスペローに説得されたカタクリは、とりあえず見舞いに何を渡せばいいか相談していたのだ。
カタクリ的にはお菓子一択だったのだが、花にしとけとペロスペローに言われた。

「………私に?」
「………あ、あぁ」
「ふふ、お花なんて初めてもらいました」

花を抱えて笑っているナナシを見てカタクリは、流石ペロス兄だ。とか思っていた。





ナナシはカタクリにお礼をいい別れたのだが、何故かずっと後ろを歩いているカタクリ。最初はカタクリもこっちに用があるのかと思っていたナナシだったが、もう町の外れだ。後は喫茶店くらいしかない。このまま喫茶店に来てしまうのかとナナシは心の中で悲鳴をあげていた。この時間だとまだ店長はいないから、またカタクリと二人きりになってしまうからだ。

そしてカタクリはというとただ話したい事がありナナシの後をついて歩いていた。でもなかなか話し掛ける事が出来ないのだ。

二人は無言のまま喫茶店に着いてしまった。ナナシも流石にこのまま黙って店に入るわけにもいかずカタクリの方を見る。

「あ、あの……そ、掃除とかしないといけないので、えっと、外で良ければ、こ、紅茶のご用意を」
「………いや、これからおれは遠征に行かなければいけない」
「え?」

ナナシの顔が少し明るくなる。遠征ということはしばらくカタクリは喫茶店には来ないわけだ。ナナシの平和な日常が戻ってくる。

「あ、そ、そうなんですね!ち、ちなみにどのくらい?」
「一週間だ」
「………あ」

思ったよりも短い期間にナナシの顔は暗くなる。どうせなら一ヶ月くらい行ってくれたらいいのに。なんて思っていた。
そしてカタクリはナナシの顔が暗くなったのは自分と一緒で一週間も会えないのが寂しいと思っているからだと勘違いしていた。

カタクリはポンっとナナシの頭に手を置いた。突然の事にナナシは恐怖で固まる。

「大丈夫だ。なるべく早く戻る」

全然ゆっくりでいいんですけど!?と思いながらもナナシはとりあえず空気を読みコクコク頷いた。

「病み上がりだ。あまり無理はするな」
「は、はい!カ、カタクリ様も」
「おれは問題ない」
「あ、うあ、そ、そうですよね!私が心配なんて、す、すみません」
「い、いや、その、う、うれ…………くっ!」

カタクリは自分が今ナナシの頭に触れていることと、心配された事が嬉しく耐えていた照れが急に押し寄せてきた。またいつものように口元のストールを頭まで持ち上げる。
何度目かのそれにナナシも馴れてきたのか、少しビビりながらもそのままカタクリの様子を見る。

「カ、カタクリ様?」
「………………い、いってくる」
「お、お気をつけて!」

そのまま歩いていくカタクリをナナシは深々と頭を下げながら見送った。
のだが、カタクリは何故かUターンして戻ってくる。そしてナナシの前に仁王立ちで止まるカタクリ。何故か息遣いが荒くて、ナナシは震えながらカタクリを見詰める。

「………………こ、これを」
「う、うえ?」

そう言いながらカタクリが差し出してきたのは電伝虫だった。

「え?あ、これ………」
「れ、連絡する!!」

カタクリはそう叫ぶとすごい勢いで走り去っていった。ストールで前が見えないままだから何本か木を倒しながら。ナナシはひきつった顔でやべー!と思いながらそれを見ていた。
そしてカタクリの姿が見えなくなってから手の上の電伝虫としばしにらめっこ。

「…………は!こ、これ、もし出れなかったらどうなるんだろ。てか、まずなんの連絡がくるの!?え、やだ、恐い!」

ナナシは電伝虫を今すぐ野生に還したかったが、カタクリに渡されたものなので仕方なく持ったままお店の中へと入っていった。















「ペロス兄」
「どうした?ペロリン♪」
今回の遠征はペロスペローと一緒だった。
「花喜んでくれた」
「そうか!それはよかったな。ペロリン♪」
「あと、一週間会えないから電伝虫を渡したんだが………」
「ほぅ」
「緊張してかけられないんだ!さっきから何回も受話器が壊れる!」
「……うん!受話器がもったいないから諦めろ。ペロリン♪」
そう言いながらペロスペローは弟の電伝虫を没収するのだった。










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カタクリさんが全然かっこよくならなくて困ってる。

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