日常パニック | ナノ
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 18:兄弟に紹介

クラッカーは憂鬱な気持ちでカタクリの屋敷の前までやって来た。遠征中の兄の事を思い出すとなんだか屋敷に入る気がしなくて大きな溜め息をつく。

「…………よし!急用が出来た事にして帰ろう!」
「おっ!クラッカーじゃねェか!」
「久しぶりだな!」
「うげっ!」

声のする方を見てみればダイフクとオーブンが立っていた。二人もカタクリに呼ばれたらしい。
じゃあ、早く入ろうぜ!と言われて、ダイフクとオーブンはクラッカーの腕を掴んで屋敷に向かって歩き出す。
クラッカーは抵抗しようにもデカイ二人に腕を掴まれているので宙にプラプラ浮いている状態。逃げる事は出来なかった。





「早かったな」
「お前に話があるって呼ばれたら急いでくるだろ」
「で、なんなんだ?」
「とりあえず座るといい」

そう言われて椅子に座る三人。
すぐにお茶とお菓子がメイドによって運ばれてくる。これにクラッカーは首を傾げた。遠征中はずっとカタクリのお茶の用意をナナシがしていたのを見ていたからだ。それに遠征中カタクリは基本ナナシの側にいたので、今部屋に姿がないのも不思議に思った。

「なァ兄貴、ナナシはいないのか?」
「今日は買いたい物があると出掛けている」

クラッカーはなるほどなと思いながら、あいつがいないなら兄貴は変な事はしないだろうと安心して出されたお茶を飲み始めた。
初めて聞くナナシという名前にダイフクとオーブンが首を傾げている。

「そのナナシって奴は誰だ?」
「まぁ、その、お、おれの恋人だ」

顔を赤くして照れながらカタクリは言った。
その言葉を聞いた瞬間クラッカーは飲んでいたお茶を噴き出した。

「げっほ!なんっこ、こいっ!?」
「喜べクラッカー。お前が前に言った通りナナシは義理の姉になるぞ」
「ま、待て待て!話が見えねェ!!」
「いつの間に!?」

昔から女の話なんて全くしてこなかったカタクリの口から恋人が出来たなんて言われたら二人はそれは驚くだろう。

「その、一昨日だな。む、向こうに好きだと言われて」

嬉しそうに話すカタクリを見て、二人もなんだか嬉しくなる。

「よかったなーカタクリ!!」
「なんで出掛けてんだよー!どんな奴なのか見てェのに!」
「すぐに帰ってくる」

楽しそうに話している三人をクラッカーは呆然と見ていた。そして遠征中の二人の事を思い出してみる。
ナナシはカタクリの事は嫌いではなさそうだったが、でもちょっと怯えている様子だった。そんなナナシがこの数日でいきなり兄を好きになるだろうかとクラッカーは疑問に思う。
でもナナシがいないので確認したくても出来ない。

そんなクラッカーをよそに三人は楽しそうに会話を続けている。

「でもなんでもっと早く教えてくれなかったんだよ!」
「そうだ!水臭いぞ!」
「いや、て、照れ臭くてな………ペロス兄にだけ相談していだが、つ、付き合ってる事は今日初めて兄弟に話した」
「つまりおれ達が最初か!?」
「そうだ」
「じゃあいいか!」
「あと、今日はちょっと相談もしたくて呼んだんだ」
「相談?」
「プ、プロポーズをしようと思ってな」
「……………は?」

流石に早くねェか?と二人は黙る。でもカタクリはママをどう説得するかとか、指輪はどうするだとか色々話が止まらない。クラッカーは大丈夫だろうかと顔を青くしている。

「ま、まァ、ママだって普段頑張ってるカタクリのワガママの一つくらい聞いてくれるんじゃないか?」
「そ、そうだよな!ついでにお宝の一つでも持ってけば、ママはご機嫌で許可してくれるかもしれないぜ?」
「なるほど!ママは説得できそうだな。後は指輪をどうするか………花もいるか?」
「ど、どうだろう」
「……そのプロポーズはいつするつもりだ?」
「今日だが?」
「今日!!?」

一昨日付き合い始めて今日プロポーズは流石に早すぎると二人は慌てた。なんかカタクリが変だとちょっと思い始めている。クラッカーは頭が痛くなってきた。

「善は急げと言うだろう?」
「そうだが……」
「ちょっと、な?」
「や、やめとけよ兄貴」

そんな会話をしている時にドアがコンコンとノックされた。

「カ、カタクリ様、ナナシです。戻りました」

今日は兄弟が遊びに来るから戻ったら部屋まで来るようにナナシは言われていたのだ。
入れと言われてナナシはご兄弟の誰が来ているのかとドキドキしながらドアを開けた。
すぐにクラッカーの姿が目に入りほっとするも、隣のダイフク、オーブンを見てガタガタと震え出した。二人はカタクリと三つ子なわけだから、もしかしたらカタクリと同じで何か変な行動をするかもしれないと思って怯えているのだ。
でもとりあえずあいさつはしなければとナナシは慌てて頭を下げた。

「は、はじめましてダイフク様、オーブン様!ク、クラッカー様もお久しぶりです!」
「なるほどこいつが」
「どれどれ」

ダイフクとオーブンは立ち上がりナナシに近付く。

「………なんか意外だな」
「………思ってたのと違う」
「あ、あわわわ」

大きい二人にジロジロと見られてナナシは怖くなり目に涙が浮かぶ。それに気付いたカタクリは立ち上がりナナシの盾になるように二人の前に立った。

「あまりジロジロ見るな。ナナシが驚いているだろう」
「あ、わりィ」
「だって気になるだろ?」
「あ、わ、す、すみません、だ、大丈夫です。あ、ありがとうございます」

ナナシはそう言いながらちょっと目に涙を浮かべたままカタクリを見上げた。
守ってやりたくなるようなその姿を見たカタクリはナナシの手をガシッと掴んだ。

「指のサイズは?」
「え?」
「薬指のサイズだ」
「え、えっと………たし、か」

ナナシは薬指のサイズをカタクリに言った。カタクリはすぐに戻ると言って走って部屋から出ていってしまった。

「え?カタクリ指輪買いに行ったのか!?」
「いや、それよりもあれはカタクリなのか!?」
「あ、あの、えっと?」
「……………ナナシ」
「は、はい!ク、クラッカー様どうかしましたか?」
「お前は、その、兄貴と付き合ってるのか?」
「えっ!?そ、そんな事あるわけないじゃないですか!!!ないです!ないない!!!」
「……………は、はあァァァ!!?」

ダイフクとオーブンは叫んだ。
クラッカーは気を失いそうになった。















「あ!これはこれはカタクリ様!いらっしゃいませ!!」
「指輪を!」
「はい?」
「婚約指輪を今すぐに!!!」










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皆びっくり!

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