日常パニック | ナノ
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 11:お兄さんは心配

「………ナナシ」
「は、は、はい」
「なんでもない」

そう言ってカタクリは去っていく。ナナシはパタンとドアを閉めてから溜め息をついた。
紅茶を飲み終わりカタクリが部屋を出ていってから、何故かわからないがニ、三十分おきに部屋を訪れるのだ。
ただ名前を呼んでなんでもないと戻っていく。
いったい何の確認なのかとナナシは少し怯えだした。





「………夢じゃないな」

カタクリは今ナナシが自分の屋敷にいる幸せを噛み締めていた。
これから毎日こうして好きな時に会えるのかと嬉しくてニ、三十分おきにナナシの顔を見に行っているというわけだ。
ナナシが少し怯えている事にはもちろん気付いていない。


そしてしばらくしてカタクリがまたナナシに会いに行こうと立ち上がった時ドアが勢いよく開かれた。そこには息を切らしたペロスペローが立っているではないか。
朝向かうと言っていたのにもう着いたのかと随分と早い到着にカタクリは少し驚いた。

「そんなに慌ててどうしたんだペロス兄?」
「あ、慌てるに決まっているだろう!早く説明しろ!」
「何をだ?」
「あの子がお前の屋敷に住む事になった経緯に決まっている!」
「あぁ、そういえば忙しくて話せなかったからな。是非聞いて欲しい」

カタクリはナナシとの喫茶店でのやり取りを全てペロスペローに話した。
その話を聞いてペロスペローは頭が痛くなった。まずナナシが仕事をやめると言ったのは絶対にカタクリに会うのが怖いからだと思った。そしてあの性格ならばカタクリに言われたから断れず渋々頷いたのかもしれないとまで考えた。
ペロスペロー大正解である。

もしかしたらナナシが部屋で泣いているかもしれないと心配になったペロスペローはすぐにカタクリに案内を頼んだ。





コンコンと部屋のドアが叩かれナナシは怯えた。三十分過ぎてもカタクリが来なかったので、やっとゆっくり出来ると思っていたからだ。
何か用があるなら言ってくれよ!と思いながらナナシはドアを開けた。

「ペロス兄が来た」
「こんにちは。ペロリン♪」
「ひぇっ!?ペ、ペロスペロー様!?」
「突然申し訳ないね。大丈夫か?色々と」
「え?あ、ん?だ、大丈夫です、よ?」

色々とはいったい?と思いながらナナシは首を傾げる。
そんなナナシの姿を見てペロスペローは少しほっとした。少し怯えているようには見えるが思っていたほどではなかったからだ。
入っても?とペロスペローが聞けばナナシはもちろんです!とドアを大きく開けた。

「あ、椅子………」

今ナナシの部屋にはカタクリ用の椅子とナナシ用の椅子しかない。もちろん自分の椅子を譲りたい所なのだがちょっとペロスペローが座るには窮屈だろう。
ナナシがどうしようとオロオロしているとそれを察したペロスペローが能力を使い一瞬でとても美しい椅子を作り出した。
ナナシは目をキラキラと輝かせパチパチと拍手を送る。

「や、やっぱりペロスペロー様の能力は素晴らしいですね!とても素敵な椅子です!」
「くくくく………それは恐縮」

家の壁の時もーと楽しそうにナナシは話し出した。

自分抜きで楽しそうに話している二人がカタクリはもちろん気に入らない。しかもペロスペローはナナシに能力を褒められ拍手までされているのだ。なんて羨ましいんだ!とカタクリは思った。
カタクリも自身の能力で椅子を作り出し二人の間にドンッと置いた。
突然の事にナナシはビクッと飛び跳ねる。

「………おれだって椅子くらい作れる」
「は、はい………?」
「………すごいと思わないか?」
「え?あ、あぁ!は、はい!す、すごいと思います!」

そう言いながらナナシはカタクリにも拍手を送った。
満足気なカタクリの顔を見てペロスペローは呆れていた。


「あぁ、そうだ。カタクリ何かお菓子はないのか?」
「あ、わ、私何か貰ってきます」
「いやいや、君は今日来たばかりだろう?慣れない屋敷の移動は大変だ。カタクリ頼むよ。ペロリン♪」
「わかった」
「えー!い、いや、わ、私が!」
「ゆっくりしているといい」

カタクリはそう言って部屋から出ていった。ナナシは本当にいいのだろうかとちょっと落ち着かない様子。
よし今だ!と思いペロスペローはナナシに話し掛けた。

「ナナシ!弟が本当にすまない!」
「…………へ?」
「屋敷に住む事だ。カタクリに言われて断れなかったんじゃないのか?」
「そ、そ、そん、そんな事、は!」

図星をつかれナナシの声は裏返り目は不自然に泳ぐ。
あぁ、やっぱり!と思いペロスペローは頭を下げた。その行動にナナシは驚き慌てる。

「あわわ、ペ、ペロスペロー様!?」
「あの弟はどうも君に対してポンコツでね」
「え、ポ、ポンコツ……?」
「君がここにいるのが嫌だったら私からカタクリに話をしよう」

その言葉を聞いてナナシはブンブンと首を横に振った。カタクリに嫌がっていると知られるのが怖いからではない。別に今はここにいてもいいと思っているからだ。

「だ、大丈夫ですよ!ちょ、ちょっとだけ、カ、カタクリ様がこわ………ごほっあ、いや!んー、き、緊張してしまいますけど!お優しい方だとわかりましたから!」
「え?ほ、本当か?」
「はい!わ、私の事を隙だらけで放っておけないと、心配して下さっているみたいです!」

へへっと少し照れ臭そうに笑うナナシを見てペロスペローはあぁ、カタクリもそれなりに頑張っているんだなと少し安心した。

「そうか………どうやら私の取り越し苦労だったようだな!紅茶を頂くよ!ペロリン♪」
「…………?ど、どうぞ」

なんだか楽しそうなペロスペローの様子にナナシは首を傾げるのだった。

しばらくするとカタクリは大量のお菓子を持って部屋に戻ってきた。

「待たせたな」
「ありがとうカタクリ。ペロリン♪」
「あ、ありがとうございますカタクリ様!」
「気にするな。何か話をしていたか?」

カタクリは自分がいない間に二人が楽しくおしゃべりしていたのではないかと気になって仕方ないようだ。

「あ、カ、カタクリ様が私の事を隙だらけで放っておけないと言ってくれたお話を……」
「あ、あぁ、そ、その話か………」

何故か少し気まずそうに目を逸らすカタクリを見てペロスペローは不思議に思う。隙だらけで放っておけない。隙だらけ。隙、すき………あぁ、なるほどなと、ペロスペローはなかなか勘がいい。

「ヘタレめ」
「んっな!?」
「ど、どうかしましたか?」
「な、なんでもない!!」

カタクリは真っ赤な顔で叫んだのだった。















「………とはいえ」
「は、はい?」
「私はやはりポンコツな弟が心配なんだよ。ペロリン♪」
「そ、そうなんですね………?」
「だから君にこれを渡しておこう」
「あ、電伝虫」
「弟が手に負えなくなったら掛けてくれ。可能な限り対応しよう」
「あ、ありがとうございます?」
それではと去っていくペロスペローの背中を眺めながら、手に負えない時っていったいこれから何が!?とナナシは色々考えてしまい恐怖した。










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これからもペロスペローはカタクリには電話します。

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