日常パニック | ナノ
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 09:お仕事やめます

ナナシはとうとう仕事をやめると決心した。

今カタクリは家までやって来るようになったのだ。ナナシの心安らぐ時間が本当にない。
カタクリが自分を殺す気がないのはもう流石にわかった。わかったが海賊だしデカいし家を壊されたし、やっぱり怖い。
しかも一度怖くないと言ってしまった手前、今更やっぱり怖いですとも言えない。それにカタクリの泣きそうな顔は見たくなかった。

だからせめて接客じゃない事をしようと思ったのだ。そうすればカタクリと顔を合わせなくて済むはず。ナナシは少しでもカタクリの事を考えなくていい時間が欲しかった。





店に行きその事を店長にすぐ告げた。店長は慌てて止めたが、ナナシの意思は固かった。

「いきなりで本当にすみません!!」
「そうか、まぁ仕方ないな……でも急にどうしてだ?」
「だ、だって、カタクリ様の行動が意味わからなくて怖いから……」
「はぁ!?」

ナナシのその言葉を聞いて店長は驚いた。だって全くカタクリに好かれていると気付いていないから。
店長だって最初はそんな事あるわけないと思っていたが、でも忙しいはずなのに毎日店に通い、色々プレゼントまで渡されていて……そしてナナシの事をとても愛しそうに見詰めているのだ。
そんな風にされたら普通だったら気付いているはず。

「お、お前まだカタクリ様の好意に気付いてないのか?」
「え!?何失礼な事言ってんですか店長!あ、ありえない!」
「いや、だって」
「だいたい私なんか好きになって何の得があると!?」
「いや、損得じゃないだろ?」
「だ、だとしてもありえません!!絶対にない!!なんか怖いからやめて下さい!!!」

こうも全力で否定するナナシを見て店長は少しカタクリが不憫だと思った。

「はぁ……でもお前ちゃんとカタクリ様に言うんだぞ?」
「…………え?な、何を?」
「やめることに決まってんだろ?」
「む、無理無理無理!!と、とりあえず店長先に伝えといて……」
「駄目だ!自分で言え!!」
「うぅ………はい」





そろそろカタクリが来る時間になりナナシは大きく深呼吸した。
そしてカランっとドアの鈴が鳴る音が聞こえるとナナシはよし!っと気合いを入れてキッチンから飛び出した。

「い、いら、いらっしゃいませカタクリ様!!」
「………あぁ」
「あ、と、その、昨日はありがとうございました!美味しかったです!!」

ナナシは深々と頭を下げて先に昨日の食事のお礼をした。

「おれが行きたかっただけだ………その、また誘う」
「………は、はい」
「ブ、ブレンドティーを」
「は、はい!かしこまりました!あ、あと、その」
「なんだ?」
「あ、あの、えっと」

ナナシは言葉に詰まった。
だってカタクリの紅茶はいつもナナシが入れている。だから急にやめるなんて言ってカタクリに、わざわざ来てやっているのに!と怒られるのでは?と思ってしまったのだ。
どうしようとビクビクしていると、カタクリに早く言えと急かされてしまったのでナナシは決心して叫んだ。

「し、仕事やめます!!」

その言葉を聞いたカタクリは一瞬固まったがすぐに口を開いた。

「……………理由は?」
「え?」
「理由はなんだ?」

まさか理由を聞かれると思っていなかったナナシは口ごもる。
そんなナナシの様子を見てカタクリは何か勘違いしてしまった。

「………何か嫌な事があったのか?」
「え!?あ、いや、そ、その……」
「言え。おれがその原因を排除してやる」

カタクリはそう言って勢いよく立ち上がり、体から槍を出した。目がとても怖い。

ナナシは恐怖でガタガタと震えた。なんて物騒な物を出すんだ!原因はそんなあんただ!なんて言えるわけもなく必死に首を横に振ることしか出来なかった。

「…………違うのか?」
「は、は、は、はい!!違います!!!」
「……じゃあ何故だ?」
「えっと、あの、あの、うーん……」
「大丈夫だ。おれに任せろ」
「ち、ちがっ!あ、うっ、あー、あ!か、環境を変えてみたくて!だから普通に転職したいなって!」

引っ越しとかもしたくてーなんて言ってナナシは適当に誤魔化した。
それを聞いたカタクリはそうかと言って出した槍をしまいまた席についた。

「あ、あの、お気遣いありがとうございます……ブ、ブレンドティーすぐお持ちしますので、少々お待ち下さい!」

ナナシはとりあえずカタクリに仕事をやめる事を伝えられたのでほっとしながらキッチンへと入っていった。
ナナシの後ろ姿を見ながらカタクリは何か考えていた。





「……………ナナシ」

カタクリが突然キッチンに入ってきた。
別に紅茶の準備に時間がかかっていていつもより待たせているなんて事はない。

「わっ、カ、カタクリ様!?す、すみません!ま、まだ紅茶の準備は……」
「…………おれはお前の紅茶が好きだ」
「え?あ、わっ、あ、ありがとうございます!」
「…………おれの屋敷には空いている部屋がある」
「は、はぁ………?」
「その、だから………お、おれの屋敷に住めばいい」
「…………………………んっ!?」

カタクリはナナシの話を聞いて自分の屋敷で住み込みで働けば転職も引っ越しも出来て、しかも自分がナナシと一つ屋根の下で暮らせるしで一石二鳥、いや三鳥だと考えてしまったのだ。

ナナシはその提案を聞いて恐怖した。だってカタクリと離れたくて転職するのにそれじゃ何も意味がない。
ナナシは千切れそうな勢いで首を横に振った。

「む、むむむむ、無理です!!!」
「……………何故だ?」
「わ、わわわわわ、私無能です!!!」
「そんな事はない」
「ほ、本当に!!こ、紅茶しか入れられませんし!!!」
「十分だ」
「で、でも、でも……」

本当に謙虚な奴だなと思いながら、カタクリはナナシの前に跪いた。

「おれのために毎日紅茶を入れて欲しい」

赤い顔でカタクリはナナシを見詰めた。

そんなカタクリを見てもナナシはやだ!なんか怖い!としか思えないわけで……でもとても断れる雰囲気ではないので目に涙を浮かべながら首を縦に振ったのだった。
それを近くで見ていた店長は、え、プロポーズじゃね?とか思っていた。

カタクリは自分の行動がだんだん恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして明日迎えに行く!と言い残してそのまますぐに帰っていった。
ナナシはキッチンで泣きながら店長にすがり付く。

「ど、どうしよう店長!どうしよう!!た、助けて!!」
「幸せになれよナナシ」
「ど、どうやったってなれないでしょ!?」















「調子はどうだ?ペロリン♪」
「あぁ、絶好調だ!」
「それはよかったよ」
「色々話したい事はあるんだが、今忙しいんだ」
「ん?何かあったのか?」
「その……ナナシが屋敷に住むことになってな」
「…………は?」
「迎え入れる準備をしている。悪いが切るぞ」
「いや、待てカタクリ!!カ、カタクリ!?」
切れた電伝虫をしばらくペロスペローは眺めていたが、急いで仕事に取り掛かった。弟の所へ向かうために。










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大変な事になった(笑)

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