日常パニック | ナノ
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 08:休まらないよ

ナナシが仕事に行くために家から出ると、目の前にはカタクリが立っていた。
しばし無言で見詰め合う二人。カタクリは少し気まずそうに目を逸らした。それを見てナナシは慌てておはようございます!と頭を下げた。

「………き、昨日は悪かった」

そう言いながらカタクリは手に持っていた花束とキャンディの詰め合わせをナナシにおずおずと渡してきた。

「わっ!あ、ありがとうございます!!」
「いや…………キャンディはペロス兄からだ」
「あ、そ、そうなんですね!お礼を言わないと……」
「仕事があるからもう帰った」
「あ、そ、そうですか……では、あの、ありがとうございますと今度伝えておいて頂けますか?」
「……わかった」
「お、お願いします!そ、それでは、私は、その、これを部屋に置くので……し、失礼しますね」

ナナシは頭を少し下げて部屋の中へと戻っていった。キャンディをテーブルの上に置き、花束はとりあえずバケツに突っ込んだ。
ナナシが仕事に行くために再び外に出るとカタクリはまだ家の前にいた。

「ひんっ!?わ、ま、まだ何か?」
「……………肩は大丈夫か?」
「え?あ、あぁ!だ、大丈夫です!」

ほら!と言いながらナナシは笑顔でぶんぶんと腕を振ってみせた。
カタクリは昨日のナナシの泣き顔が頭から離れなかった。そして痛い思いをさせてしまったことを本当に後悔していてずっと胸が苦しかった。
でもナナシのそんな姿を見てカタクリは少し安心できて、ほっと胸を撫で下ろした。

「し、心配してくださり本当にありがとうございます!で、では、私そろそろ仕事に行きますので……」
「仕事は休みだ」
「………はい?」
「お前は休んでいい」
「………えぇ、で、でも」

ナナシの体を心配していたカタクリは最低でも今日一日は絶対に休ませたくて、ナナシの代わりに働くようにと喫茶店に部下を送っていたのだ。だから問題ないとナナシに説明をした。
ここ最近ずっと寝不足が続いていたのでナナシとしてはとても有り難かった。

「き、気を使って頂きありがとうございます!」
「ゆっくり休め」
「は、はい!そ、それでは」

ナナシが頭を下げドアを閉めようとした時、カタクリは慌ててドアを掴んだ。まだナナシに言いたい事があったのだ。でも緊張してるし慌てているせいか力が入ってしまいドアから嫌な音がしてくる。
その音を聞いてナナシは慌てて叫んだ。

「カ、カタクリ様!せ、せっかくペロスペロー様に直して頂いたドアがまた壊れてしまいます!!」
「わ、悪い」

カタクリはすぐに手を離した。ドアはなんとか無事だ。

「ま、まだ何か?」
「…………いや、なんでもない」
「そ、そうですか」

ナナシはドアを閉め、溜め息をつきながらそのまますぐベッドに入り眠りについた。





しばらくしてナナシはお腹が空いて目を覚ました。枕元の時計を見ると十二時を過ぎたところだった。ナナシは眠たい目を擦りながら、キッチンへと向かう。冷蔵庫の中はほとんど空っぽ状態。
ナナシはとりあえずあるもので適当にお昼を済ませて買い物に行くために外に出た。

「………休めたか?」
「ひゃあっ!?」

突然声をかけられナナシは飛び跳ねた。カタクリはナナシの家の壁にもたれかかり座っていたのだ。カタクリは驚かせてしまって悪かったと思い謝った。
ナナシは大丈夫です!と一応答えたが恐怖で少し震える。

「え?あの、も、もしかして、ずっと?」

カタクリは気まずそうに目を逸らしたのでナナシはその反応でずっと居たのだと察した。
どうしたんだこの人……とナナシが思っていた時、ぐぎゅるるると大きな音が響いた。その音は目の前にいる人物から聞こえてきて、そして赤く染まっていくカタクリの顔。そう今のはカタクリのお腹の音だった。

「あ、も、もうお昼過ぎてますからね」
「……………あぁ」

そのまま無言になる二人。
ナナシはここは何か出さなければいけないのかもしれないと思ったが、今冷蔵庫はほとんど空っぽなので出せるものはない。どうすればいいのかわからずナナシは困った。

「ご、ごめんなさいカタクリ様!あの、今家何もなくて………」
「気にするな」
「で、でも………あ!朝頂いたキャンディなら!」
「………本当は」
「は、はい?」
「お前を……飯に誘うつもりだった」

今にも消えそうな声でカタクリは呟いた。カタクリがさっき言いたかったことはこれだった。でも緊張して言えなかったというわけだ。
それを聞いてナナシは震え上がった。だってカタクリと二人で食事なんて難易度が高すぎる。外に出る前にご飯を済ませていた自分の事を心の中で褒めた。

「あ、そ、そうなんですね!す、すみません。わ、私もうご飯食べちゃったから」
「そうか……でも問題ない」
「………へ?」
「デザートがうまい店がある」

行こうとカタクリは立ち上がり歩き出した。ナナシはそんなカタクリを呆然と見詰めていた。だってデザートなんて別にいらないし、せっかくの休みなのにこのままじゃ休みじゃなくなる。
でも先を行くカタクリに早く来いと声を掛けられたらナナシはついて行くしかないわけで……ナナシは少し泣きながらカタクリの側へと駆け寄ったのだった。















「カタクリ今日はどうだった?」
「ペロス兄のキャンディ喜んでたぞ」
「それはよかった。ペロリン♪」
「仕事もちゃんと休ませた」
「うんうん」
「あ、あと、一緒に食事をしたんだ」
「は!?お、お前!それは無理矢理連れて行ったんじゃ……」
「無理矢理なんて連れていくか!ちゃんとついて来た」
「………ほ、本当に本当か?」
ペロスペローはもう色々心配で仕方なかった。










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お兄ちゃんは心配で心配でもう自分から電話しちゃう

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