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 07:ふたりがいい

今日は新しく上陸した島でクラッカーはナナシと買い物をする事になっていた。何買おうかなー?なんて話をしながら甲板に出た時、それを聞いていたカスタードとエンゼルが自分達も一緒に行くと出てきた。
クラッカーは勿論ナナシと二人きりがいいので断るが、二人はなかなか引かずとうとう取っ組み合いの喧嘩が始まってしまった。9歳になったクラッカーは昔と違い二人に敵わなくもない。泣きながらも応戦している。
そんな三人を見てナナシは困ったものだと苦笑いした。

「あら?また喧嘩?」
「あぁ、コンポート」

ご覧の通りとナナシは肩をすくめた。

「ねぇナナシこんなの放っておいて私達と買い物に行かない?」
「おっと?」
「おしゃれなお店がいっぱいあるらしいのよこの島!」
「へーそうなんだ」
「ナナシに服を選んで欲しいわ」

コンポートとそんな会話しているといつの間にか後ろにアマンドが立っていた。他の女兄弟達も続けて船内から出てくる。
どうやら女兄弟で今日はショッピングに行くことにしたようだ。

「うーん、素敵なお誘いだけど……クラッカーと先に約束してるしなー」
「大丈夫よ」

アマンドはそう言うとモンデ、アッシュ、エヒィレに合図を出した。三人は頷くとまだ喧嘩しているクラッカー達をそれぞれ引き離す。アマンドはクラッカーの前に立った。

「皆で買い物に行くわよ」

アマンドのその言葉にカスタードとエンゼルは笑顔で頷くがクラッカーは納得できない。だってクラッカーは昨日からずっとナナシとの買い物を楽しみにしていたのだから。

「お、おれが、先にナナシと約束……」
「皆で行くわよ」

アマンドに睨まれクラッカーは泣きながら頷くしかなかった。





「ナナシこれどう?」
「コンポートはもう少し明るい色がいいよ」
「ナナシどっちがいいかしら?」
「アマンドなら右ー」
「ナナシ!この髪飾り可愛くない!?」
「おーカスタードに似合うねー」
「ねぇナナシ!私達とこれお揃いにしない?」
「うーん、ブリュレ達ならいいけど、私にはちょっと可愛すぎかなー」

楽しそうに姉や妹の服を選んでいるナナシの事をクラッカーは不満気な表情で見詰めていた。
でも姉達に逆らうことは出来ないし、仕方なくクラッカーは店内を適当にうろつく。とりあえず何かナナシに似合いそうな物がないか探す事にした。

とても派手な服が多い店だった。あまりナナシは好きそうじゃないなーとクラッカーは思い、服を諦め小物の棚に目をやる。
何か良いものがないかと端から順番に見ていくと小さなパールが付いているヘアピンが目についた。
これなら可愛いがあまり派手じゃないしナナシが好きそうだとクラッカーは思った。

「何見てるの?」
「うっわ!エ、エンゼル!」

いつの間にか後ろに立っていたエンゼルがクラッカーの手元を覗き込む。

「ナナシに、これ……」
「あ、可愛い!」
「だ、だろ!」

クラッカーは得意気な顔をする。やっぱりこれがいいとヘアピンを手に取ろうとしたら、エンゼルが先にそれを手にした。

「ナナシに教えてくるよ」
「あ!それ、おれが………!」

エンゼルはナナシー!と叫びながら行ってしまった。クラッカーは悔しくて泣きながら店の外に出ていった。





少ししてクラッカーがいない事に気付いたナナシは慌てて店を飛び出した。
でもクラッカーはすぐに見つかった。店の入り口の側に小さくなって座り込んでいたのだ。ナナシはほっと胸を撫で下ろしクラッカーの前にしゃがんだ。

「クラッカー?」
「………………」
「クラッカーくーん?」
「……………ナナシはおれの事嫌いなんだ」
「え?なんで?好きだよ?」
「……………でも、おれがいないの気付かなかった」
「うーん、すぐに気付かなかったのはごめん。でもちゃんと気付いたよ?」
「……………」
「怒んないでよクラッカー」
「………ぐすっ」

完全に拗ねてしまい下を向いたまま泣き出すクラッカーにナナシは小さく溜め息をついた。頭を撫でたり、何度も謝るが顔を上げてくれない。仕方ないとナナシはクラッカーの頬を掴んで無理矢理上を向かせた。クラッカーの目にあのヘアピンが映る。

「……………あ」
「これクラッカーが選んでくれたんでしょ?ありがとう」

そう言ってナナシはクラッカーに微笑んだ。
エンゼルはちゃんとクラッカーが選んでいた事を伝えていた。そしてナナシはそれを気に入りすぐに買ってその場でつけたのだ。

「クラッカーは私の好きな物が本当によくわかるねー似合うかな?」
「ん………似合う」
「やった。ねぇクラッカー?」
「なに?」
「私ちょっと疲れちゃってさーケーキでも食べに行かない?」
「…………ふ、二人なら、いいよ」

そうやって小さな声で言うクラッカーにナナシは笑顔で頷いてやった。















「ナナシ!ここ!ここにしよ!」
「はいよー」
「あれ?ナナシにクラッカーじゃないか。ペロリン♪」
「あ、ペロスペローにカタクリ達も」
「お前らもここに入るのか?」
「あ、は、入らない!!」
「なんだよ。一緒に食おうぜ?」
「や、やだ!やだぁぁ!!ナナシー!!」
「うるせェ!外であんま泣くな!」
クラッカーはカタクリに頭を殴られた。
「こら!そうやってすぐ手を出さない!」
そしてナナシもカタクリの頭を殴る。
「えぇ……お前それ、言ってる事とやってる事が違いすぎるぜ。ペロリン♪」










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ヒロインはシンプルな物が好きー

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