ゆっくりと育む | ナノ
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 01:泣き虫な10男

ナナシがビッグ・マム海賊団に入ってから三年がたっていた。毎日ペロスペローと一緒に年下の兄弟達の面倒を見ている。下の子達は優しいナナシにとてもなついていて、本当の姉のように慕っていた。
特にクラッカーのなつきようは凄かった。





「うわぁーん!ナナシー!」

クラッカーは泣きながらナナシを探していた。
昼食も終わりキッチンで父と一緒に食器を片付けていたナナシはその声に気付くとひょっこりと廊下に顔を出す。クラッカーは随分と遠くの方を歩いている。よく響く泣き声だ。ナナシは苦笑いで廊下に出てクラッカーに手を振ってやった。
ナナシの姿を見つけたクラッカーは更に泣き声を大きくしナナシ目掛けて一直線に走り出した。
小さい体が体当たりするように突っ込んで来る。それを少しよろけながらもなんとかナナシは支えた。

「さっきまでご機嫌だったのにどうしたのかな?」

そう言いながらナナシはクラッカーの頭を優しく撫でてやるのだが、クラッカーはナナシに抱きついてただ泣くだけだ。
ナナシはクラッカーを抱き上げキッチンへと入っていった。
お父さーん!とナナシが言うと父はミルクを鍋に入れ火にかけた。クラッカーが泣きながらキッチンにやって来た時は必ずホットミルクを作ってやるのだ。ナナシはクラッカーを椅子に座らせてやると涙でぐちゃぐちゃになった顔のクラッカーと目が合う。ナナシはその顔がおかしくて笑いながらハンカチで顔を拭いてやる。

「今日はどうしたの?」
「………」
「なんで悲しいのか言ってくれなきゃわからないよ?」

そう言いながらナナシが優しくクラッカーの頭を撫でてやる。クラッカーはしばらく無言だったが、ナナシが微笑みながらクラッカー?と優しく言ってやると小さな声で話し出した。

「カ、カスタード達が…………お、おれ、女の子だって、言った……」
「あらまぁ」

そう言って泣き出すクラッカー。

同じ三つ子のカスタードとエンゼルは強い子だった。転んだってそうそう泣かない。それに引き換えクラッカーときたらとにかくよく泣くのだ。転んだ時など大変で、これでもか!というほどに大声で泣き叫ぶのだ。そしてなかなか泣き止まない。
兄達は男なら泣くな!なんて叱るし、姉達も情けない!と助けない。
カスタードとエンゼルはかっこわるーい!とクラッカーを笑う。
そんな兄弟達の態度をみかねてナナシはクラッカーに優しくしてやるのだ。
これがクラッカーがナナシになついている理由のひとつでもある。

「そんな事言われちゃったかー」
「…………うん」
「よし。じゃあ、クラッカーが嫌なら私が二人に言わないでってお願いしてあげるね」
「…………ほ、本当?」
「本当本当!私が嘘ついたことある?」

ナナシがそう言って首を傾げるとクラッカーは首を横にブンブンと振った。
二人がそんなやり取りをしている間にホットミルクが完成したようだ。父からコップを受け取ったナナシはクラッカーに差し出した。

「これ飲んで元気になったら一緒に行こうか」
「…………はちみつは?」
「いっぱい入れてあげるよー。おまけでビスケットも1枚あげようね」

その言葉を聞いたクラッカーは笑顔で頷くのだった。





ナナシとクラッカーは手を繋いで兄弟達の遊んでいる部屋に来ていた。
すっかり上機嫌なクラッカーはナナシの手を放し部屋の奥で遊んでいる兄弟達の側に走っていった。
ナナシはやれやれと思いながらカスタードとエンゼルが遊んでいる方へと歩いて行った。

「あ、ナナシだ!」
「一緒に遊ぼー!」

そう言って二人は抱きついてきた。ナナシはそんな二人の頭を優しく撫でてやる。
二人はいい子なのだ。
別にクラッカーが嫌いでからかうわけではない。三人で仲良く遊ぶときだってある。ただ本当にクラッカーが泣き虫すぎて女の子のようだと思ってしまったのだろう。まだ3歳。思ったことはすぐ口にしてしまう。
ナナシはそれがわかっているので仕方ないんだよなー。と思いながらもいつも二人にお願いするのだ。

「二人ともクラッカーに女の子って言わないであげてくれるかな?」
「なんで?」
「クラッカー本当に弱くて女の子みたいに泣くよ?」

ねー!と笑い合う二人にナナシは苦笑い。

「嫌なんだって」
「えー?だけど……」
「ね?お願い」

ナナシが困ったように笑うと二人ははーい!と頷いてくれた。やっぱりいい子だ。
ナナシがありがとー。と二人の頭を撫でている時、突然クラッカーの泣き声が部屋中に響いた。
ナナシが驚き声のする方を見ると弟のズコットにナナシからもらったビスケットを奪われているクラッカーが目に入る。

「あ!クラッカーが弟に負けてる!」
「かっこわるーい!」

大きな声で笑い出す二人にナナシは頭を抱えるのだった。















「うぐっ!おれのビスケット……!」
「またあげるから」
「おいナナシ!お前ちょっとクラッカーに甘過ぎるぞ!」
「いや、だって……」
「クラッカー!お前も弟に負けて恥ずかしくないのか!?」
「うっうぅ……」
「よしっ!おれ達が鍛えてやる!」
カタクリ、ダイフク、オーブンはそう言うと泣いているクラッカーを引きずり外へと出ていくのだった。
「う、うわぁーん!ナナシー!!」
「お、おぅ。が、がんばれクラッカー!」










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痛いから鍛練はしたくないクラッカー。

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