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 19:心機一転

クラッカーの押しに負けて結局ベッドを買いに行くことになった。
外に出たらクラッカーが手を差し出してきたので、ナナシはよくわからなくて握手をしてみた。

「…………違う」
「え?」

クラッカーはナナシと手を繋いだ。

「あーそういう事ね」
「そういう事だ」

ご機嫌でどんなベッドを買うかなーとか言いながら歩き出すクラッカーを見てナナシは笑った。





町に出れば色んな人にあいさつをされる。
そして皆いつもと違う様子の二人をちょっと不思議そうな顔で見ていた。兄弟みたいなものなのでとずっと言っていたから、気になるが皆聞けない。

「クラッカー様ーナナシ様ー!」

町の子供達が二人に駆け寄ってくる。ナナシは頭を撫でてやり、クラッカーは弟や妹にするように手を叩いて子供達にビスケットを出してやった。
わーいとビスケットを頬張りながら、二人が手を繋いでいるのを見て子供達は首を傾げている。

「なんで手を繋いでるのー?」

子供は素直だ。遠慮する事なく思った事を聞いてくる。周りの大人が慌てて止めに入る。

「こ、こらこら!お、お二人は兄弟みたいに仲良しだからで………す、すみません」

その言葉を聞いてクラッカーの顔が曇る。
ナナシは今までずっと否定してたからなーと思って口を開いた。

「私達ママの勝手で結婚しましたけど……これからは本当の夫婦としてやっていきますから」
「え?」
「ね?旦那様?」

ナナシが笑顔でそう言えば、クラッカーは町中でみっともないと思いながらも我慢できずに、にやけてしまう。それを隠すようにそうだ!とクラッカーは叫んでナナシの手を強く握り直して早足で歩き出したのだった。

そんな二人に町の人達はおめでとうございます!とかよかったですねクラッカー様!とか拍手を送った。クラッカーの気持ちはバレバレだったようだ。
クラッカーの顔はどんどん赤くなってきて何も言わない。だから変わりにナナシがありがとうございまーす!と頭を下げていた。
二人は完全に見世物状態だ。

「ぐっ!なんだこれは、恥ずかしいっ!」
「まぁまぁ、祝福されるのはありがたい事だよ」
「だが、こんな町中で……」
「じゃあ、手離す?少しは………」
「は、離さない!!!!」

クラッカーは顔を真っ赤にして叫んだ。





「うーん………やっぱり大きすぎない?」
「小さいよりいいだろう?」

クラッカーが選んだベッドは本当に特大だった。
ナナシとしては存在感が強すぎてちょっとという感じだが、クラッカーは満足気だ。
そんなクラッカーの顔を見てしまえばまぁいいかとナナシは思ってしまいベッドに寝転ぶ。

「あ、いい感じ!」
「おれも」

クラッカーもベッドに寝転んだ。そしてそのままナナシの背中に抱き付く。

「う、うーん………今までは平気だったのに、意識するとなんでこんなに恥ずかしいのか」
「お、おれもまだちょっと照れ臭い」

そう言いながらクラッカーはナナシの服の中に手を入れたのだが、すぐにバシッと叩かれた。

「こらこらこら!約束は?」
「いや、その………」
「私ソファーで寝ようかな」
「わ、悪かったって」

ナナシはクルリと寝返りをうってクラッカーの方を向いた。距離の近さにクラッカーは顔を赤くして息をのむ。

「あのさ……本当に私でいいの?」
「え?」
「もっとクラッカーにぴったりで素敵な……ん」

ナナシが言い終わる前にクラッカーはキスをした。

「お前しかありえないんだおれは」
「…………私ペチャパイだけどいい?」
「…………そ、そんな事」
「いや、そこ気を使わなくていいから」
「む、胸なんかどうでもいいんだ!」
「…………でも大きい方が良くない?」
「いや、だから!お前だったらそんなのどうでもいいんだおれは!」
「…………そっかー」

ナナシはクラッカーの体に手を回した。

「ク、クラッカーがいいなら、いいかな」
「え?」

少し赤い顔で自分の事を見詰めてくるナナシを見てクラッカーの心臓はどうにかなりそうだった。

「ど、どうぞ」
「い、いい、のか?」
「ま、まぁどうせいつかはするわけだし……」
「ナナシー!!」

クラッカーはガバッとナナシに覆い被さり何度も深く口付けをした。
口が離され真っ赤な顔をしたクラッカーが荒い息遣いで口を開く。

「や、優しく………」
「う、うん」
「優しく出来そうにねェ!」
「え?は?クラッ……んむっ!?」

嘘だろ!?と思いながらも理性を失っているクラッカーは離してくれそうにもないし、自分から誘ったのに蹴るのは流石に可哀想で出来ない。
これは頑張るしかないかとナナシは腹を括った。





次の日ベッドから立つことが出来なくなったナナシにクラッカーは土下座をしていた。















「悪かった!!」
「…………もうしたくない」
「え!?こ、困るよ!!」
「腰が痛い」
「ほ、本当に悪かった!!」
「今日のお昼はキムチ」
「え?」
「おやつは紅茶じゃなくて炭酸飲料」
「じ、地味な嫌がらせはやめてくれ!」
「一週」
「うーナナシー」
「1ヶ月」
「わ、わかったよ!」
ちょっとナナシは怒っていた。










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若いクラッカーさんは兄弟の前ならいいけど、他人の前だと照れそう。次が最後。

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