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 16:好きなの選べ

ナナシは突然ママに呼び出された。
またお茶会でも開くのだろうかと思いながらママの部屋へと続く長い廊下を歩いていく。

「お、ナナシ」
「あ、ペロスペローだ」

ペロスペローは今キャンディ島で大臣を務めているのでホールケーキアイランドに住んでいないので、二人は随分と久しぶりに会った。

「今日はどうしたの?」
「ママに呼ばれたんだ。ペロリン♪」
「え?ペロスペローも?」
「ナナシもなのか?」

奇遇だねーと話ながら廊下を進めば今度は三つ子がいるではないか。三つ子もそれぞれ大臣を務めているので会うのは久しぶりだ。三つ子もママに呼ばれたのだと聞いて本当になんの用なのだろうかと皆で首を傾げた。





「待っていたよお前達!!」

ママはご機嫌で迎えてくれた。

「今日はナナシの事で話があって呼んだんだ」
「え?わ、私!?」

他の島に住んでいるペロスペローと三つ子を呼ぶくらいだから何か大事な話だろうとは思っていたが、まさかその話が自分の事だとは思っていなかったのでナナシはつい大きな声を出してしまった。

「そうさ!お前は随分と綺麗になったねェ」
「え?あ、ありがとうママ」
「傘下に入った海賊によくお前をくれないかと言われるんだよ」
「え?」

ナナシは本当に美しく成長した。だから傘下に入った海賊はナナシがママの娘じゃないと知るとその話をしてきていたのだ。
それを知ったナナシの顔は曇る。だってママがもしも行けと言うならば拒否権などないのだから。
そんなナナシの顔を見てママは大きな声で笑った。

「安心しな!もちろんぜーんぶ断った!お前はおれの娘みたいなもんだからねェ!そう簡単に手放す気はないよ!」
「ほ、本当に?」
「あぁ!それにお前のお菓子は絶品だ!!」

ママがナナシを本当の娘のように思っているというのは事実だけど、でも手放さない本当の理由はお菓子。ナナシの考えたお菓子をシャーロット家の中でママが誰よりも楽しみにしているのだ。
その言葉を聞いたナナシはママに頭を下げた。

「ありがとうママ!これからもママのために頑張ってお菓子を考えるから!」
「ハ〜ッハハママママ!お前はいい子だねェ。だがこう何度も断るのは面倒でね………だからおれは考えたんだ!本当の娘になればいいと!」
「はい?」
「おれの息子と結婚すればいいんだよ〜!可愛いお前になら好きなのを選ばせてやろう!」

さぁ誰がいい?とペロスペローと三つ子を指差すママ。皆突然の事に頭が追い付いていない。それはもちろんナナシもで、固まったまま動かなくなってしまった。それを見てママの顔付きが変わる。

「なんだい?嫌だってのかい?年が近い方がいいと思ってわざわざこいつらを呼んでやったのに……」

ナナシは慌てて首を横に振った。

「ち、違うの!マ、ママの本当の娘になれるなんて凄く嬉しい!」
「ハ〜ッハハママママ!そうだろう?」
「で、でも、結婚までは………」
「おれの息子とは嫌だって言うのかい!?」
「そ、そういうわけじゃ……み、皆素敵だから迷っちゃうなー!」

ナナシは心にもないことを言ったので声が裏返ってしまった。その言葉を聞いた三つ子は鳥肌がたち、ペロスペローは溜め息をついた。

「そうかいそうかい!それじゃあ仕方ないねェ!ゆっくり考えるといい!」





ママの部屋から出て皆は頭を抱えた。

「た、大変な事になった!!」
「お前なんで断らなかったんだ!?」
「断れるか!カタクリが言えばよかったじゃん!」
「よりによってナナシとなんて最悪だ……」
「失礼だぞオーブン!」
「いや、その通りだ!女としての魅力が何一つないナナシと結婚なんて地獄だ!!」
「ぶざけるなダイフク。あるだろ魅力!ほら!」
「ペチャパイが何言ってんだよ!!」
「……………私ダイフクと結婚しまーす!!」
「はぁあ!?」
「一生尻に敷きまーす!!」
「ふっざけんな!!!」
「おれ達のためにありがとうダイフク」
「お前の犠牲は無駄にはしない」
「おい、こら。一妻多夫制でも私はいいんだぞ?」
「勘弁してください」

ぎゃーぎゃーと騒ぐナナシと三つ子を見てペロスペローはなんでこいつらは揃うとすぐふざけてしまうのかと思いながら溜め息をついた。

「ほら、その辺にしておけよ?ペロリン♪」
「あ、ご、ごめん、つい………でも本当にどうしよう」

ナナシは皆とは5歳の時からずっと一緒にいるのだ。ペロスペローの事は双子の兄弟のように思っているし、色々喧嘩もするが三つ子だって結局は可愛い弟だと思っている。だからそんな兄弟達と結婚だなんて正直なんだかなーという感じだ。
夫婦として一緒にいるだけでいいのならまだいいが、もしもママに子供を作れと言われてしまったらと考えるとナナシは鳥肌がたった。

「うげェ………子作りとか無理だわー」
「き、気持ち悪い想像するなよ!」

三つ子だってもちろんナナシの事を姉以上には思えないのでその言葉を聞き鳥肌がたつ。

「こうなったら消去法で………ペロスペローごめん!犠牲になってください!」
「………いや、クラッカーと結婚すればいい」
「へ!?」
「ママは誰でもいいと言っていたからな。クラッカーでも問題ないだろう。ペロリン♪」

ペロスペローの提案にクラッカーの気持ちを知っている三つ子もそうか!と大賛成で、カタクリがクラッカーを呼んでくるとさっさと行ってしまった。ナナシだけはその提案になんだかアワアワしている。

「どうせ誰かと結婚しなきゃいけないんだからいいだろ?」
「そ、そうだけど、でも……」
「なんだよ。嫌なのか?」
「か、可哀想、だよ」
「大丈夫だ!ペロリン♪」
「え、えー」

一件落着と笑っている三人と違いナナシだけはなんだか浮かない顔をしていた。





「ここにいたのか」
「ん?お、兄貴!珍しいなどうした?」
「お前の結婚が決まった」
「は?」

クラッカーは顔を青くした。だって兄達はまだ誰も結婚していないのだ。なのに何故好きな人がいる自分がいきなり結婚なんてしないといけないのかと泣きそうになる。

「マ、ママの命令なのか?」
「そうだ」
「なんで………なんでおれなんだよ」

今にも泣き出してしまいそうなクラッカーの頭をカタクリは優しく撫でてやった。

「安心しろ。相手はナナシだ」
「は?」
「ナナシとお前が結婚するんだ」
「う、嘘、だろ?」

クラッカーはカタクリの腕をがっと掴んで前後に激しく揺らした。顔がにやけてとんでもないことになっている。

「ほ、本当か!?本当なのか!?こ、こんな奇跡が起きるなんて………は!こ、これは夢なのか!?あ、兄貴ちょっとおれの事なぐっ……ぶふっ!!」

クラッカーが最後まで言い終わる前に、カタクリは顔面を殴ってやった。ちょっと揺らされるのが鬱陶しかったのだろう。
でも顔面を殴られてとんでもなく痛かったクラッカーはこれは現実なのだと実感する。

「お、おれ生きててよかった!!!」
「よかったな」
「へへ、結婚かー。でもナナシはおれの事、弟にしか思ってないんだよなーきっと………」

そんな事を考えてしまいクラッカーの顔が少し曇るが、でもこれからもっと強く、そしてかっこよくなってナナシに男として見てもらえばいいのだと考えた。

「よしっ!ナナシに好きになってもらえるように頑張る!」
「お前は物好きだな」
「物好きって失礼だな!兄貴は誰か好きになった事ないのか?」
「………ないな。強くなる事しか考えていない」
「それはそれでどうなんだ?まぁ、いつか兄貴に好きな奴が出来たら応援するよ。いつでも相談しろよ?」
「もしそんな日が来たとしてもお前じゃ役に立たなそうだから、ペロス兄に相談する」
「酷いな兄貴……まぁいいけど!」

これからのナナシとの生活を考えているクラッカーはご機嫌だ。
二人はママに報告するために歩き出した。















「ご、ごめんねクラッカー」
「え!?ぜ、全然!!」
「好きな人とか出来たら遠慮せず言ってね?」
「や、お、おれは……」
「と、とりあえず今まで通り仲良くしよ?」
「…………う、うん」
「ほ、本当にごめんね!」
ナナシの言葉にクラッカーは少し複雑な気持ちになったが、頑張るぞ!と気合いを入れたのだった。










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いつも以上に会話だらけに。

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