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 15:初めてのお茶会

明日はホールケーキアイランドで初めてお茶会が開かれる。
ナナシはお茶会が決まった時にママに呼び出され期待しているよ!と言われてしまった。ママの期待には答えなければならないとナナシはお茶会までの間に色々なお菓子のアイデアを考えた。

「うん、これだけあればママもきっと満足してくださるはずだ」
「はぁー間に合ってよかったー」
「それにしても今回も素晴らしい物ばかりだな」
「いえ、そんな……シュトロイゼン様のアドバイスがあってこそですよー」

ナナシとシュトロイゼンがそんな話をしている時コンポートがキッチンに顔を出した。

「ナナシ準備はどう?」
「順調ー」
「それはよかった。ねぇ、明日のお茶会のためのドレスを選びましょ?」
「うーん、素敵なお誘いだけど私はまだ………」
「いいじゃないかナナシ!レシピがあるしこっちは問題ない」
「え?でも……」
「ほら、シュトロイゼンもいいって言ってるじゃない!ナナシお茶会の時にドレス着たことないし、たまにはいいでしょ?」
「え?私がドレス着るの!?い、いいよ!皆の選ぶ………」
「ほら、早く!皆待ってるから!」

私がめかし込んでも笑われるだけだってーと思いながらナナシはコンポートに引っ張られていった。





お茶会当日。幼い兄弟達以外は客人を迎えるために会場に集まっていた。

ナナシはまだ部屋にいて鏡に映る自分の姿を見て大きな溜め息をついていた。
昨日は女兄弟達に色々なドレスを着させられた。ナナシが皆に選ぶことはあっても、皆がナナシの物を選ぶことは今までほとんどなかった。
だから皆とても楽しそうに可愛いのがいいとか綺麗なのがいいとか選んでくれてナナシ自身も楽しかったのだが、でも外で着るとなるとまた話が違う。普段子守りばかりしているナナシはラフな格好ばかりで、スカートもほとんど履かない。
そんな自分がおしゃれなドレスを着て髪もセットして、おまけに化粧までされたわけだ。

「恥ずかしい」

やっぱりいつも通りにしようかでもせっかく選んでもらったしと、なかなか部屋から出れないでいるのだ。うーんと悩んでいる時にドアがノックされた。

「ナナシまだー?」
「あ、今行く!」

ナナシは決心して部屋を出た。





「おぉ、ナナシ!似合っているな!ペロリン♪」
「き、気を使わせてごめん」
「気なんかつかってないさ!」
「ナナシ綺麗だ!」
「あ、ありがとうモンドール」

いつもと違うナナシを皆褒めてくれた。事実今日のナナシはとても美しいのだ。ナナシにドレスを選び化粧をした女兄弟達は誇らしげな顔をしている。

「こういうの馬子にも衣装って言うんだぜ?」

ここで空気を読めないのがダイフクだ。それを聞いたカタクリとオーブンは噴き出す。この三つ子にはナナシを普通に褒める事なんて出来ない。お菓子に関しては別だが。
ナナシだってそれは少し思っていた事なので気にはしないのだが、三つ子に笑われると何故かイラッとしていまう。

「発言には気を付けなよ。二人も笑うな……今のあんた達の身長だと股間がちょうど殴りやすいのよ?」
「トテモオキレイデズ!」

三つ子は背筋を伸ばし叫んだ。

「棒読み禁止!声が小さい!はい、もう一回!」
「とてもお綺麗ですっ!!!」
「よしっ!」

まったく困った奴らだと思いながらペロスペローは溜め息をついた。そしてクラッカーがいない事に気が付く。
まだ少し思春期を抜け出せていないが、最近はまたナナシの側にいたはずなのにおかしいなと辺りを見回すと、少し離れた場所で固まっているクラッカーが目に入る。ペロスペローは首を傾げながらクラッカーの元へと向かった。

「おい、クラッカー大丈夫か?」
「…………う、美しすぎて近付けない」

本当にめんどくさい奴だとペロスペローは思った。





お茶会はママもご機嫌で問題なく行われていた。
ナナシはいつもと違い男性に声を掛けられる事が多くてちょっと疲れていた。早く終わればいいのにと思いながらナナシは大きな溜め息をつく。

「なかなかいいのがいるじゃないか」

そう言いながら一人の男が近付いてくる。最近傘下に入った海賊の男だ。ナナシの事を上から下まで舐めるように男は見てくる。
ナナシは気持ち悪いと思いながらもただのコックの娘だし我慢するしかないかと無理矢理笑顔を貼り付けた。

「どうも」

ナナシがそう言えば男はにやにやしながらナナシの腰へと手を回す。突然のこの行動にナナシは気持ち悪くて震える。

「ん?寒いのか?」
「え、えぇ、少し……」

ナナシは男から離れようとするも何故か男は更に体を密着させてくる。誰か助けてくれ!と思いながら辺りを見渡すもこういう時に限って側には誰もいない。

「おれが温めてやろうか?」

男はナナシの耳元で囁いた。ナナシはぶわっと鳥肌がたつ。苦笑いでご冗談をと言いながら男の体を押すもやっぱり離してはもらえなくてナナシは心の中で舌打ちをした。

「あの、すみません。困ります」
「なんだよ!どうせビッグ・マムの息子達の相手とかしてるんだろ?なぁ?だったらおれだっていいよな?」

その言葉にナナシはプッチーンと切れる。これは皆に対する侮辱だと思った。傘下の海賊?知ったことか!と思いながらナナシはぶっ飛ばしてやると思い拳に力を入れた時、突然肩を掴まれ体が男から引き離された。そしてそのまま強く抱き締められる。

「こいつに触るな」

ナナシは突然抱き締められたので顔が見えなかったがクラッカーだと声で気付いた。初めて聞くクラッカーの低く冷たい声にナナシは少し驚く。

「な、なん………」
「同じ事を言わせるなよ?」

クラッカーに睨まれて男は渋々去っていった。

「ちっ……なんだあいつは弱いくせに馴れ馴れしい」
「ク、クラッカー」
「ナナシならあんな奴簡単にぶっ飛ばせるだろ?」
「あの、クラッカー、様?」
「な、なんだよ!様はやめろよ!」
「いや、く、苦しい」

ナナシは本当に強く抱き締められており、このままでは吐いてしまうと思いクラッカーの腕をバシバシと叩いた。
クラッカーは無意識にナナシを抱き締めていたのでそれに気付くと顔を真っ赤に染め慌てて手を離し両手を上げた。

「ごめんなさい!」
「え?何そのポーズ……いやー苦しかったけど助かったよ。ありがとう!」
「い、いや、おれが嫌だっただけというか、その………」
「ん?何?」

ナナシが微笑みながらクラッカーの顔を覗き込めばクラッカーは耳まで赤くなる。

「お、おれの………」
「ん?」
「き、今日のナナシは、綺麗だから………あ、い、いつもが綺麗じゃないわけではなく!その、なんだ、だから、お、おれの……」

クラッカーは遠くからずっとナナシを見ていたのだ。色んな男に声を掛けられているナナシを見ながらもやもやしていた時、ナナシの腰に手を回す男を見て我慢の限界がきたわけだ。
他の男と話すナナシをクラッカーはもう見たくなくて、側にいて欲しいと言いたいのだがでも恥ずかしくて言えない。そんなクラッカーを見てナナシはクスクスと笑ってしまった。

「ふふ、ありがとう!綺麗って言われて嬉しい」
「そ、そうか」
「ねぇ、クラッカーの側にいてもいい?」
「え?あ、もちろん!!」
「よかった!あーなんかお腹空いたなー!」

ナナシはご機嫌でクラッカーの手を掴んで歩き出す。もちろんその後のお茶会は楽しく過ごせた。















「ん?ナナシなんか顔が赤くないか?」
「え?そう?んーなんだろ?なんか熱いかも?」
「じゃあ、何か冷たい物でも飲むか?」
「うん、そうする」
「おれが取って……いや、駄目だな。い、一緒に行こう」
おずおずと差し出されたクラッカーの手をナナシは笑顔で握った。










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ビッグ・マムがホールケーキアイランドを治めるようになったのはいつくらいの設定なのかなーと思いながらも書いてしまいました。

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