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 14:嫌いになんてならない

クラッカーの思春期は相変わらず続いていた。
ナナシに話し掛けられてもクラッカーはつい素っ気なくしてしまう。本当はナナシと楽しくおしゃべりしたいし、頭を撫でられたい。もちろん抱きついたり……あわよくばそれ以上の事もしたくて。

「あああーー!!!」

クラッカーは今日も悶えていた。





「ぺ、ペロス兄助けてくれ」
「はいはい、頑張れ頑張れ」
「つ、冷たい……おれは深刻なナナシ不足で悩んでいるのに」
「今すぐナナシに抱きつきにでもいけばいいさ。それで全て解決。ペロリン♪」
「それが出来たら苦労はしない」

いったい何度このやりとりをしただろうかとペロスペローは溜め息をついた。
ナナシを好きと自覚してこんな面倒な事になるなら気付かないままの方がよかったかもなとペロスペローは思う。

「まぁ、でもいつかはこうなっていたか」
「何だ?」
「独り言だ。一応言っておくがナナシはお前のその態度に傷付いてるからな?」
「え!?」

ペロスペローはナナシにクラッカーの態度についての相談を受けていたのだ。それを聞いたクラッカーの顔が青くなる。

「ほ、本当か?」
「こんな嘘ついてどうする?」
「……ど、どうしよう」
「素直になったらどうだ?嫌われたら元も子もないだろ?」
「うぅ」
「私もお前の話を聞くのは飽きたしな。ペロリン♪」
「………酷いなペロス兄」

でも確かにそうだとクラッカーは立ち上がった。

「ナナシに頑張って話し掛けてくる!」
「健闘を祈るよ」

今は14時を少し過ぎたところ。ナナシはきっとおやつを作っているだろうと思いクラッカーはキッチンに向かった。





廊下からキッチンの中を覗いてみればやっぱりナナシはおやつの準備をしていて、クラッカーは深呼吸をしてからキッチンの中へと入った。
ナナシは集中しているようでクラッカーが入ってきたのに気付いていないようだった。幼い子達が喜ぶようにと果物を色んな形に切っている最中。邪魔したら悪いだろうかと思ってしまい、クラッカーは話し掛けることが出来なくてとりあえずいつも座っていた椅子に腰掛けた。
最近は目が合うだけで恥ずかしくてまともに顔を見ていなかったなーと思いながらクラッカーはナナシを見詰める。

「………………何かあった?」
「えっ!?」

ナナシは作業に集中してはいたがクラッカーが来たことには気付いていた。でも話し掛けていいのかわからず、でも視線を感じたのできっと自分に用があるのだろうと思い声を掛けてみた。
クラッカーは自分が見詰めているのに気付かれていたのかと顔が熱くなる。

「べ、別に、何も………」
「そう…………あのさ、よかったら少し手伝ってもらえないかな?」
「え?」
「前はよく手伝ってくれたじゃない?あ、でも、嫌ならいいから」

そう言いながら弱々しく笑うナナシの顔を見てクラッカーは胸が痛くなった。

「………じゃない」
「え?」
「嫌じゃない!!!」

クラッカーは立ち上がりナナシの側へ駆け寄る。

「何をすればいい?」
「あ、えっと、じゃあ、それ混ぜてもらえる?」
「ん」

クラッカーは言われた通りに材料を混ぜ合わせていく。そんなクラッカーの姿を見てナナシの目からポロポロと涙が落ちてくる。
クラッカーはそれを見て驚いて固まってしまった。だってナナシが泣いているところを今まで一度も見たことがなかったから。

「なんっえっ!?ど、どう……」
「わ、私クラッカーに嫌われちゃったのかと思ってて………」

ナナシはクラッカーの態度に最初はやっぱり反抗期だなと思っていた。
でもだんだん自分が拒絶されているだけにしか思えなくてなって、何かしてしまったのかと謝りたくても目も合わせてくれないし、会話もまともに続かない、だからはどうすればいいのかわからなくなっていたのだ。
でも今日嫌じゃないと、自分の隣に来てくれて嬉しくてナナシは涙が止まらなくなった。

その言葉を聞いてクラッカーは自分の行動がこんなにもナナシを傷付けてしまっていたのかと、とても後悔した。

「ごめん!本当にごめん!おれはナナシを嫌いになんてならない!!」
「…………ほ、本当?」
「何があってもそれだけは絶対にない!!」
「……………ふ、ふふ」
「な、なんで笑うんだよ!?」
「いや、なんか私昔のクラッカーみたいになってるなって」

そう言いながらくすくす笑うナナシの顔を見てクラッカーもつられて笑う。

「確かにそうだな」
「だよね。ふふ、ありがとうクラッカー」

ナナシはクラッカーの頭を撫でようと手を伸ばしたが慌てて引っ込めた。前に手を振り払われた事を思い出したのだ。

「これはもう、駄目だよね」
「そ、そんな事はない!!」

クラッカーはつい大声で叫んでしまい恥ずかしくなって下を向く。そしてたまにならいいと今度は小さな声で言った。ナナシは笑いながらクラッカーの頭をわしゃわしゃと撫でた。
久しぶりに頭を撫でられてクラッカーは顔がにやけて仕方なかった。















「ペロスペロー!」
「あぁ、ナナシ。やけにご機嫌だな?」
「わかる!?クラッカーに嫌われてないのがわかってさ!」
「だから言ったろ?ただの思春期だって」
「その思春期ってのがよくわからないんだけど……でもよかったわ!なんか迷惑かけてごめんね?」
「お前が元気なら別にいいさ。ペロリン♪」
「へへ、ありがとう!」
「どういたしまして」










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ペロスペローにいつも苦労をかけてしまうな。

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