月の見えるフェネストラ

その名はレム


わるいひとはきらいです、でもあらがみさんはもっときらいです。

眩しい日差しは沈みかけ、作戦会議スタート、作戦会議と言う名の偉大なるさんちさんの意見を出す会だとかなんとかそんな話はどうでもいい。
愛すべき親友きえきえこと喜恵と、己の絵を描きいざとなったらまかせろ、という風な未明を禍々しく神々しい瞳が捉えれば不服だと歪みなく伝えるようにその唇を尖らせる。

「あらひどいみーちゃん!みちさんはそんな弱くないよ!」

ぶーぶーと垂れ流す不満、明らかに自分は弱いですアピールに聞こえなくもないが偉大にしてすてきな邪神の加護下にある三知はまあ、ある程度そこいらの女子高生よりも力だけは強いだろう、力だけは。おつむの方はまあ、言わずもがなであろうか。
ゆるりゆらり、庭の木は風でざわめく。
けたけたと笑いに包まれる、やはりこの雰囲気は愛おしくってたまらない、私の居場所、そう思う人間はきっと1人ではないと信じている。
ゆるりゆらり、会議は踊る……主に宇宙ポニーテール娘のせいで。
気がつけば日は完全に沈み振り子時計が七時を告げた。

「あーっ!もうこんな時間なの?!さんちさんお家帰らなきゃ!叔父さんが心配するの!えっとねーえっとねー、あとはまかせた!また明日までにみしりたくさん計画考えるから!」

がたり、立ち上がり世界は揺れる。またねー!なんて声をあげて、そばにあった本を拾い上げ、居間の五人に手を降って、コズミックにオカルティック、宇宙を揺らし玄関へ、戸の傍に立て掛けた名状し難いバールのようなものというかバールを拾い上げればもう一度大声。

「たいちょー!ふくたいちょー!きえきえ!いったんにみーちゃん!またあしたねー!!」

声を張り上げる、がらがらがしゃんと戸をくぐり抜けスキップステップついでに破裂音、ガラスを割って楽しくお家へ帰ります。
曲がりくねった道を抜け、さらに抜け、そのまた向こう、入り組んだ道の奥の奥の、そのまた奥の目立たない扉を開ければつん、とかおる油の匂い。慣れてしまえば大好きになるこの匂い。

「ギュスターヴさんただいま!!」

声をあげればおくからひょっこり二つの色が飛び込んで思わずパチクリ、おや今日は誰かくる予定だったか、それとも、まさか。慌てて焦ってかけよれば、躓いた。いつぞやたいちょーに飛びかかった時のように滑って躓いて地面にどかん……とはならず、なにやら支えられたような感覚と、微妙な機械音。

「……大丈夫か?」

金の髪は揺れて、覗き込む青に宇宙は沈む。ああ、なんだ彼女か。確かトメニア出身の軍人だと言っていた。機械の体故に整備が必要らしいのだが周辺に己の身体を任せられる人間がいないと彼のところに時々やってくるのだ。

「だいじょーぶ!さんちさん丈夫だから!それよりシュティ来てたんだー!えへへ、いらっしゃい!!」

にんまり、笑う。続いて横から顔を出した眼鏡の初老の彼はいつも通りの笑顔でお帰り、なんて言ってくれるのだ。

「おかえり、三知……何か楽しいことでもあったのかい?」

やはり彼は鋭い、少しばかり浮かれ調子なのを見抜かれていたらしい。

「うん!あんねーあんねー!みしりさんねとねーたいちょーたちね!一緒に悪い奴らをやっつけに行くのよ!ねくたーる?とかいうところに突っ込むの!トメニア、そうトメニアから!荷物がくるからねーそれもらっちゃうの!荒神のバカどもがお祭り騒ぎの学芸会する日に!漁夫の利だね!」

トメニア、その言葉を聞いた軍人殿の眉がぴくり、動いた。ギュスターヴと呼ばれた紳士も沈黙してことを見守る。ある意味情報漏洩だがそんなことを気にするような娘ではない。にこにこにっこりにんまりと笑顔のままでいれば口を開いたのは軍人殿。

「……それは、密輸、ということか?」

その言葉を聞けば宇宙が揺れた、難しいことはよくわからない、とばかりに眉間にシワを寄せ考え込み暫しうんうんと唸り声。

「ん、んんー……わ、わかんな、い!でも多分そう!だよ!荒神のクズどもはバカばっかだしわるいひとだからきっと密輸、なんだよ!!」

きっとそうきっとそうさ!さんちは嘘をつきません、あいつらは嘘しかつかないけれど!
そう言わんばかりのキラキラ笑顔でそう答えれば青い瞳の間にシワがよる。

「……三知、明日も何時もの組へ向かうのなら私も、連れていってくれないか。今回の件少しばかり、協力しよう。」

宇宙の瞳が大きく見開かれる、まさか、彼女がこんな申し出をしてくるとは思っていなかった、けれども確か、トメニアという国は何だか、こう、すごかったような気がしている、つまり、これで、たいちょーたちは、パワーアップ!!ではなかろうか。

「そうだねえ……三知に何かあっても三知がお世話になっている方が何かあっても困りますからねぇ……悪いけどシュテファーニエさん、彼女らの事、いざとなったらお願いできるかい?」

ギュスターヴのおじさんも、少しばかり困った様に笑いながらそう言った、そうしてその後は軍人さんのいつも連れているピンクの可愛い女の子をギュスターヴに預ける話だとかをして本日は解散、明日の作戦会議と必要であればその他の日の演習、当日の突撃作戦に本物の軍人が加わる事になりそうだ。

「うふふー、みしりさんたち、ぱわーあっぷね!」

彼女等が帰った後楽しげに漏らすつぶやき、大波乱の予感である。

Title by トリステーザ、死す
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