ルッキオラを部屋に

その名はレム


がやがやは消え去って再び聞こえるのは煩い蝉の声、縁側でアイスを食べるついでに煩いからもう一匹潰して遊べばまあ案の定ショートカットの彼女に怒られた。しゃりしゃり、アイスの音と蝉をすりつぶす音は似ている気がした。
応接間から戻ってきた組長の話によれば現状対立関係にある椿組との共闘、それを持ちかけられたのだと言う。少し考えれば否考えなくってもわかるかもしれない、どう考えても面倒事は押しつけられかねない。いざとなったらしっぽ切り辺りに使われるのだろう。少し向こうで話している昭吉、慶二郎、一縷、未明の四人の雰囲気からしても決して明るい話には思えない。ああ組長は少しばかり、楽しそうだけれど。ハートでキュートなお目目をパチクリさせつつ縁側の少女二人がアイスを齧れば差し込む西日にきらり、ソーダアイスが輝いた。

「たいちょーはあの人たちと遊ぶの?楽しいの?」

第一声これである、静かに流れかけていたシリアスな空気は残念なことに消し飛んで何処かで爆破四散。この娘は状況が分かっていないのか、否わかっていてわざとなのか、恐らく前者と後者の中間くらいなのだろう。愛作・P・三知という娘はそう言う生き物なのだから。

「おう、この場合はそうなるんかのう。」

からから、笑顔を見せながらそう告げる組長はやっぱり相変わらずだ。ハートお目目の星が増えた、きらり、流れ星。空気を読め、なんて視線は誰からも送られてこない、寧ろこいつが空気を読んだら明日は大地震並みの何かだ。

「たいちょーがやるなら、さんちもいっぱいがんばるよ!」

笑顔が飛ぶ、花が咲く、星が流れてきらきらり。やっぱり、いつもの平和な風景だ。きっときっと永遠に、変わらない平和が続くんじゃあないかと思えてくる。楽しみだなあ、なんて叫びながらアイスを持った手をぶん、と振れば棒からアイスが抜け出して宙を舞う、黒髪に落ちた。どこに?慶二郎の頭の上に見事に着地、沈黙。

「……あ、あ、ごごごごめんねふくたいちょー!」

珍しく慌てたように髪を揺らして謝罪の言葉を述べればその顔を覗き込む、ああ紫ってきれいだなあなんて至極どうでもいい事をぼんやり浮かべつつ。

「………まあ、いつものことだから、うん。」
「わあありがとう!じゃあまたやるね!」
「それはやめてくれ。」

一同爆笑、やはりこれからちょっぴり危険でスリリングな楽しいお仕事が待っているとは思えない。

「あ、じゃあ私お風呂入れてきますね、とりあえず入っちゃった方がいいでしょうから……髪洗うついでに。」

やはりこう彼女は気がきく。可愛い!なんてどうでもいい事を浮かべながら風呂場へと走っていく友人を妙な瞳はじ、と追っていた。和やかムードはやはり好きだ。片っ苦しい雰囲気は好きじゃアない。けれどもたまには刺激も欲しい古くカビ臭い本の表紙をそ、となでつつお日様の向こうそのまた向こう宇宙の先を見つめながら誰に言うでもなくぽつり、ぽつり。

「……お友達、いっぱいよんでいい?」

非常にどうでもいい事ではあるが愛作三知は荒神という存在自体が嫌いである、非常に。荒神に嫌がらせが出来るのならばまあちょいとばっかし無理もしたい勢いで。ぼぅっと向こうの方を見つめるとそこに兄がいる様な気すらしてくる、いるわけないのにね。

「………無理はするんじゃあないわよ、三知。」

一縷は返す、少しばかり寂しそうだったコズミックの表情がやや明るくなる、戻る、よし完璧。

「えっへへーいったんもね!無理しちゃやあよ!あ、そうだたいちょー!ふくたいちょー!みーちゃんにいったん!作戦会議しよう!みしりはよーどーしたい!!あとねーきえきえを此処に一人残して行くのはやっぱりふあんです!」

たどたどしくも流暢に、楽しそうに、こうやって皆と話す時間も、楽しいのだから仕方ない。握りしめた本の友達も、きっと楽しく聞いていることだろう。戻ってきた人間の友人、も交えてきゃっきゃうふふと途中からどうでもいい方向に話が傾いたのはまた、別の話である。

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