ぼくだけのテルラ

その名はレム


平和である、実に平和である。
平和かつ平穏はいいことだと居候先の彼は言っていたがこうも刺激がないと暇で暇で仕方がない。
相も変わらず剛犬組本部の戌福家に入り浸るコズミックオカルトホラー系女子は品もなく縁側に寝転び足をばたつかせた。

「さんちさんつまんないよー、きえきえとあそびたい!!暑い!!!つまんない!やだーっ!」

暑い暑い詰まらない!と叫びながら暴れるから余計に暑いんじゃあなかろうかとも思えるがそこまで考えが回るわけもなくただただ足をバタバタ手をバタバタ。三知があんまりにも煩いものだから奥でTVを眺めていた一縷は首だけそちらに向けてあきれ顔。

「ちょっと静かにしなさいよ三知。暑い暑いって言ってると余計暑くなるわよ。」
「じゃあ寒い!!!」

ああそうだ、彼女にこういう事を言うとこうなるんだった。深いため息、沈黙、再び視線はTV画面に映されるいつものあの子へ向かう。明るい声がブラウン管の向こうから響いてくる。

「うえええーいったんがむしするー。つまんないー、みーちゃーん、かまってー。」

次なるターゲットはどうやらその奥にいた彫り師、未明に決定したらしい、と言うか現状此処にはコズミック含め三人しかいないのだからこうなるのは当たり前と言えば当たり前か。

「……(´・ω・`)」
「…………えー。つーまーんーなーいーよー!みーちゃんもいったんもいじわるするー!きえきえー!きえきえがいいー!!」

会話が通じ合っているのかかみ合っているのか定かではないがまあ、彼もおおよそ同じ様な反応。赤ん坊の様に手足をばたつかせる16歳にどう対応すべきなのか迷っているのか現状継続。
蝉が鳴く、嗚呼うるさいと宇宙娘はつぶやいた。

「ふくたいちょーもいないしさー、たいちょーもいないしさー、きえきえもいないとかつまんないよー!やーだー!構えー!いったんもみーちゃんも構えよぉお!!」

そう言うが早いか一縷と未明の身体に思いっきりのしかかった、袴の赤が揺れる、宇宙色の髪も跳ねる、実に迷惑極まりないがそんな事知ったこっちゃあない、寧ろそんな事気にし出したら恐らく心配されるレベルであろうこの娘は。

「ちょ、あんた!やめなさいよ!」

やや高い声が響いた、TVの音は蝉の声にかき消される。

「……!!」

無言の悲鳴、戸惑った様な瞳が見える見える、気にしないけれど。

「やめないもーん!かまえー!」

恐らく日常的光景、くしゃくしゃと二人の髪を撫でつけつつふわり、リボンが揺れた所で戸が開く音が聞こえた。三人ともふ、と廊下を見つめれば数秒、わいわいがやがや、どう考えても三人以上の人々が邸宅内に入ってきた。好奇心は猫を殺す、そんな事しったこっちゃあないのが愛作三知という娘である。真っ先に廊下に出れば見覚えのあるたいちょーこと組長昭吉にふくたいちょーというか幹部慶二郎、その後ろにはまあ見たことのある様なない様な、片角の男。思わず妙な虹彩の瞳を細めればやいやい何だとばかりにその男へと距離を詰める、横に控えたシスター服の女性が構えたのなどお構いなし、知ったことか。

「……わんちゃんたいちょー組になんかよーなの。変な用事だったらねーさんちさんぶっとばすよ!」

幼女並みの語彙力でひねり出す言葉に迫力もなにもありゃしない、構えていたシスターが何か言いたげに口を開く前に三知の素敵なたいちょーは彼女の肩へと手を置いてやっぱり困ったような笑顔を見せた。

「三知、大丈夫じゃって、気にするな。ちぃっとばっかし大事な話をするからのぅ、一縷を呼んで来てくれんか?応接間に来るようにつたえとくれ。」

やや納得いかず、けれども彼が言うからには大事な話なのだろう。わかったと口には出さずとも頷けばくるり来た道を戻ると言ってもまあ数秒。いったんたいちょーが呼んでたよ。なんて先ほど飛び付いた一縷へ告げれば彼はわかったと口にして応接間へと行ってしまった。

「……みーちゃん、つまんないね。」

不満げに口を尖らせる、だって詰まらないものは詰まらないのだ。

「( ´・ω・)ノ」

話を振られた未明はといえば暫し首をひねった後に慰めるようにそんな絵を見せた。しばしの沈黙、ああやっぱり蝉がうるさい。あんまりにもイライラしたものだから庭に出てセミを一匹愛用の名状しがたいバールの様なもので潰して遊んでいればふと思いついたように縁側の未明の元へ戻って戻ってそうして一言。

「覗きに行こう!」

未明が何か見せるより先にその着物の裾をむんず掴んでずるずると、応接間のふすまの前までやってくる。そぉっと襖をあけて隙間から向こうを覗けばたいちょー、ふくたいちょー、いったんの三人は先ほどの片角の男とシスターと向かい合って何やら話していた、よく聞こえない。
もっと聞こうとみようと身を乗り出せばそこで再び聞こえた戸の音に宇宙カラーの瞳は星の数を増す。

「きえきえだ!」

ば、と五人が此方を振り返ったのなどやはり気にせず玄関へと駆けたなら予想通り。友人の一個上位の関係だと勝手に思っているショートカットの少女がいた。

「あ、三知ちゃんただいま……誰か来てるの?」

外に並ぶどう見ても堅気の雰囲気ではない男や車。此処自体がやのつくお仕事な家であるからまあ驚くことはないのだがその数は妙に多く感じられるらしい。

「あんねーあんねーたいちょーがねーよくわかんないおっさんとおねーさんと大事な話してんの!ふくたいちょーといったんもはなしてるよー!」

喜びからか声量は自然と大きくなって恐らく応接間にも届いただろう。お帰りおかえり!と嬉しそうに彼女の手をぶんぶん振りながら応接間の前においてきぼりを喰らった未明を回収、今度は応接間には目もくれず縁側でアイスを食べようなどと言い出したのは言うまでもないだろうか。
この“大事な話”の件で色々騒がしくなるのはまた、もう少し後の話。

title by /Title by トリステーザ、死す
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