アベイユの自殺
その名はレム
ごうごう、風が唸っております、世界は反転した?ウソです、非常非情なに大ウソです。
ねちゃりぬちゃり、嫌な音が響く、少女笑う、笑顔、笑う、さようならと囁いた。
「あーあ、上手くいっちゃったんですね。」
先ほどまでと打って変わって実に落ち着いた声色、宇宙は生まれ変わったのか?いえ、正常に戻っただけで御座います。笑って笑ってくるり回って。向こうにいる職員はみたくないものを見た様に、お化けにでも出会った様に目を見開いて、倒れた。そちらの職員は泡を吹いてぶっ倒れ。死屍累々……ウソ嘘大ウソです、誰ひとり死んじゃあおりません。
ぼそぼそと、何か声が聞こえます、何を言っているかなんて理解できませんしてはいけません少女は笑ってぬちゃぬちゃとしたそれへ、笑顔を向けた。遠くの職員がありえないと叫んで倒れた。
「殺したら駄目ですよ、荒神のクズは殺してもいいですけれど関係ないその辺の職員はちょっと気絶させる程度で結構ですよ。後出来たら味方の皆さんからはあんまり吸い上げない様に……。こんなタイミングで上手くいってしまうなんて私も運がいいのか悪いのか……。」
一人楽しそうにつぶやく、一度壊れてしまったものが正常に戻るわけ、ないので御座います。笑顔笑顔歌う歌う、ルンルン気分で少女は笑う。向かいにいた男が何か言いかけました、けれどぱたり、眠る様に倒れてしまった。成功とばかりに先ほどの女性陣三人へ目をやれば気分が悪そうにしている、まあ当たり前か。仕方ない。
「離れててくださいって、言ったのに。大丈夫ですか。」
引っ込めてくれと黒服が言った、けれども引っ込めるわけにもいかなくて。ひっこめたらみんな元気にすぐなっちゃう!笑った。
「無理です!無理ですよお姉さま!ごめんなさいね、でも頑張って、少しは慣れれば楽になれます、楽になります。」
そう言って少女は笑顔を浮かべた、普段のあの太陽の様な笑顔ではなく、月の様な、そんな笑顔。
「……お友達、とやらは大分凄いんだな。」
軍服の彼女はそう言って車に戻る、頭が痛そうにしている短髪の彼女と顔面蒼白になりかけの長髪の彼女をその車に乗せればアクセルを踏んですぐそこの船のもとまで一直線、車というのは便利である。
「これで、よかったのか?」
深く深い闇の底、暗い暗い海の底、世界の底から、声が響いた様な気がした。
Title by トリステーザ、死す