ヘリファルテに射抜かれて
その名はレム
港にたどり着き急ブレーキを踏めばそこに見えたのは二人の女性の姿と、男が一人、少し離れた所に搬入される荷物が見える、状況確認。女性二人は味方とみていいだろう、ただし向こうは思いっきり警戒している、当たり前だ、こんながっつりトメニア帝国軍人参上☆といった感じで現れた人間を味方だなんて思えないだろう。男の方は恐らく職員、ただし見覚えがある、あ、る?
「あれ、シュテファーニエじゃないか。何でこんな所に?」
流暢なトメニア語、ああやっぱり、この声は、見た目こそ妙に若々しくなっているが見間違えるわけがあるものか。
「……貴様、アードラー……アードラー・ベルシュミーデか。貴様こそ、こんな所で何を?」
ぎ、睨みつける。沈黙制止数秒。短髪の彼女は恐らく会話がわかるのかきょとり、此方を見つめている。突き刺さった日傘、恐らくあれはアードラーがやったのだろう、結論付ければ片手で触れていた銃を引っ張り出し彼へと向けて発砲、当たった、様に見えたけれど全く効果なし、麻酔弾なのだから当たった所で死にはしない、多分な。
「やだなぁ、シュテファーニエ。急に撃ってこなくってもいいじゃないか。」
「黙れアードラー、悪いが此処は通してもらうぞ。」
きょとんとしている女性二人、短髪の彼女はまだ会話がわかるのだろうが長髪の女性の方は会話すらわからないだろう、外国語で男女が言い合っている程度にしか見えないのかもしれない。それでもそうだ、一言、叫んだ。
「私は、君たちの味方だよ椿組のお嬢さん方!」
それだけ叫べば車を降りて一直線、向かうは金髪の彼の方、踏み込んで、突っかかる。
正直に言おうCQCで彼に勝てる気などしないけれどもやるしかない、此処で車で突っ切った所でこの身体の彼は追いかけてくるだろう、そうしたらどこでやっても同じ事。ある程度増援に来そうな職員は車で引くか麻酔弾をぶちこんでやった。とりあえずこの男は私が押さえる、お嬢さん方は傘を抜くついでに他の奴らの足止めをしていただく、それでいいではないか、完璧だ。
「へぇ、君、少尉になったんだ。」
そんな男のつぶやきをよそに力をかける、拮抗状態嗚呼嘘だ少しおされぎみ、いっそ刺し違える覚悟で、力を込めた。全く青い空が憎いものだ。
Title by トリステーザ、死す