戦場のレクス

その名はレム


698光年程先へ先へ、嗚呼嘘だ大ウソだそんな遠くは離れちゃあいないさ!
段ボールの中でうごめく影二つ、ほんのり香るバニラの香り、少女二人だけの密会会場、嗚呼これも嘘、多少ウソ。二人は別に密会なんかしちゃあいないさ!
こんな所嫌だよ狭いよ!なんて娘の抗議の声もむなしく嗚呼無念なるかな無垢な少女二人は箱の中へと押し込められる、これから私たちどうなっちゃうの?なんて不安だらけ、嗚呼これもまた嘘、ウソ嘘だらけ。別に彼らは少女らを無理やり詰め込んだりはしちゃあいないさ!

「うー、さんちさん、つまんないよー。きえきえー。」
「あ、ちょっと三知、離れて……あと静かにしないと駄目だってば……。」

外では何やら難しそうな話をしている、職員パスがどーのこーの、よくわからないしとにかくつまらない!いっそこの段ボールを破ってびっくりばこさながらに外の奴らを脅かして陽動作戦がしたいだなんて話す宇宙ポニーテールを諌めるようになだめる様にもう少しだからと彼女の肩へ手をやる娘。片手にはしっかりクリームパンを持ってきている辺り案外に強かなのか本人のみぞ知る。寧ろ誰もわからない?
暫くして漸くトラックが止まる、外に出られるね!と明るく笑う三知にそうだね、なんて喜恵は笑った。

「……たいちょー!やだ!みしりさん、狭いのやーだー!!」

外に出て第一声これである、やっと外へ出て楽しく華麗にかっぽカッポと闊歩できると思ったのに!酷い酷いと抗議の声を荒げる敵陣地内へ侵入したと言うのに実に緊張感の欠片も無い。

「あ、三知、だからここでも静かにしないと駄目だってば……!」

クリームパンをかじりつつショートカットの乙女はささやく、口のとこにクリーム付いてる!なんて反省の色もなく嬉しそうに指で取って舐める宇宙娘はデリカシーもなにもあったもんじゃあないのはまあ言うまでもないか。兎に角もう一度箱へと押し込められ……いやまあ半分自主的に入り込み、がたがたがたり、台車に揺られる。ドナドナの牛はこういう気分だったのだろうか。
暫しゆられゆられて三千里、ウソ、そんなに長くは走って無い。でもつまらない、がたがたと段ボールの中から箱を揺らす、ゴトリ、痛い、ぶつけた落ちた。

「やー!いたいつまんな、むぐっ!」
「ささ三知!だから静かにしなきゃだめだってばぁ……!」

箱の穴からちらり見える赤、たいちょーへの抗議の声を上げかけて口をふさがれた、静かにしてってばー!なんてひそひそ声、これだけ見れば小さな子供が悪戯でもしたのかかくれんぼでもしてる様にしか見えない見えない見えっこない。
たいちょー殿から頼むと言われればまあ仕方ないむすっと不機嫌そうに唇をとがらせつつも宇宙娘は静かになった、そうして再びドナドナ再開、台車に揺られどこまでも。そうして再び三千里、しばらくしたら台車は止まった。

「とまった!」
「……みたいだね、でもまだおとなしくしてなきゃ……ってあ、駄目だってば!」

さて問題、本日彼女が言った駄目だってばの数はいくつでしょう。答えはわかんない、以上唐突な質問タイムでした。
宇宙娘はここぞとばかりに箱から飛び出す、外を見る、たいちょー以外は白い壁。

「たいちょー、たいちょー。あそぼーよー、みちつまんないよー。」

飛び付いた、たいちょーに、後ろから、思いっきり。ぐらり揺れる、もすぐに立て直す。

「………でてくんなっていったろうに!」

怒られた、至極当然である、けれども周囲に誰もいないことが幸いしたかまあそのままでもいいと言われた、わーい、なんて子供じみた感想と共に周囲をうろうろ、不安そうに見つめる喜恵にだいじょーぶ!と告げるもなにが大丈夫かは甚だ疑問である。
うろうろする子供の観察力というのは案外侮れないもので、変なにおいがすると気が付いた、寧ろ友人が囁いた、喜恵ではない方の友人が、頭の中で。

「……たいちょー!なんかあった!」

爽やか笑顔、これなーに、なんて相変わらず。しめた、なんて顔をしたたいちょーを確認した後再びそれへ目をやればきらり、星が光った。
それから先は至極単純、離れろ!と叫ぶたいちょーどのにかばわれる様に吹っ飛んだ、台車が転がる、勢い余って喜恵も落ちる、たいちょーがかばってくれたからさんちはちょっとぶつけたくらいで済みました。

「ごめんね、たいちょー、きえきえも、大丈夫?あんなのくらい、みしりのお友達がいたら、消せたのに。」

各々の無事を確認すれば首をひねる、上手くいけばお友達と、きれいさっぱり、ここ事消してしまえたのに!嗚呼残念残念だ!
鳴り響く警報が煩い、嗚呼うるさい黙れ静かにしてくれ鳥肌が立つ!そこで何をしている!なんてベターな台詞が聞こえてきた。煩いなーなんて思いつつ宇宙少女はその目を向ける、白衣の人が1、2、3……兎に角沢山。どーしよーなんて呟けば目の前に差し出されたのは名状しがたいバールの様なものというかバール、三知さんのお嫁さんなんだよ!

「そんじゃあ、いっちょやるとすっかのう。」

たいちょーはゴルフクラブ、きえきえは模造刀、さんちさんはバール、完璧!これ以上に完璧なものなんてないくらい、完璧!

「よーし、いっくぞー!」

動くなという声が聞こえた、無視した、振りあげた、おろした、命中!1hit!
ざわざわと声が聞こえる、無視する、振りあげて、振り下ろす、命中!2hit!
順調にコンボを繋げる、向こうはきえきえ、あちらはたいちょーそしてここはみしりさん!

それでは此処でお手を拝借、振りあげて振りおろして下さいませ!青春を駆ける足音は着実に、港の方へ!

Title by トリステーザ、死す
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