ロートに染める

その名はレム


作戦決行日、目を覚ませばしまって置いていた軍服に腕を通す、まあ、多少暑そうではあるが仕方あるまい。会合……というには少々大げさかもしれないがそれでも話し合いの場であるのならやはりこう、しっかりした格好をしておかないと落ち着かないのだ。髪を整えたのち、朝食作りの最中に起きてきた桃色を視界にとらえればそっと近づき朝の挨拶、その頬に口づけを。相変わらずきょとん、としている様子もまた可愛らしい。

「おは、よう。シュティ。……今日のご飯、なに?」

たどたどしい喋り方も嗚呼全く!可愛いったらありゃしないではないか、こう、胸がキュンと来ると言うのはまさにこういうことであろう!そうだ、絶対そうだ異論など認めない受け付けるが認めるものか!……っと危ない、また悪い癖が、落ち着かなくってどうするのか。

「ん、今日は黒パンとチーズ、ハムと焼いたソーセージだ。いつも通り無理しない程度に、しっかり食べてくれ。」

ほわり、ほわり、甘く麗らかな香りを残してテーブルへ向かう彼女と共に己も椅子に腰かける。二人で食べる朝食というのは一人よりずっと、暖かい。
そうして全てぺろり、食べ終えた皿をキッチンまで戻してくれる彼女も可愛い、実に愛らしい、兎に角異論は受付すらしない、認めもしない。認めてたまるものかっ!………うん、そうだ、落ち着け、落ち着くのだよローゼンハイム、そう深呼吸。何事かと金色の瞳をまんまるにしているマノラの桃色の髪をくしゃり、撫でて。とりあえず気がえてくる様にと言えばこくり、頷く。だからそう言う動作いちいちが可愛いのだ。そうして戻ってきた彼女は先日一緒に買いに行った淡い桃色に薔薇の飾りのついたワンピースを着ている、うん我がチョイスながら本当に可愛い、つらい。
そんな彼女の手を引いて、家を出る。向かうは何時ものバイト先。喫茶店『目目目』まで向かう。前もって目蓮氏にマノラを預ける許可は取ってあるから大丈夫だ、彼が忘れてさえいなければだけれども、まあ彼は流石にきっと忘れてはいないだろう。
そうこう、マノラと言葉を交わしつつ店の前まで来られればその戸をあける。からん、と客の来店を告げる音が鳴った。

「いらっしゃいませ……おや、シュテファーニエちゃんにマノラちゃん。」

店主は相変わらず優しげな笑顔を浮かべたままカップを拭く手を止めた。そ、とその傍までマノラを連れてよれば彼女の目線まで膝を折る、しゃがんでもどうも少しばかり視線が上になってしまう自身の身長がこの時ばかりは憎らしい。

「マノラの事、頼みます。……それでは、行って参ります。」

す、と自然に敬礼の動作を取りつつその場を後にしようとすればぱしり、軽く頭を叩かれた。何事かとそちらを振り返れば目蓮氏は相変わらず優しそうなその笑顔のままで。

「行って参ります、じゃなくて行ってきます。なら送りだせるかな。」

──ああ、やっぱりこの人はこの人だ。被りかけてた帽子を下におろしもう一度敬礼。

「それでは、行ってきます。」
「うん、気をつけて。」

何をしに行く、とも言っていないけれど彼は何となく、わかってくれているらしい。笑顔で手を振ってくれた、マノラもまたあとでね、なんて手を振る。ああもう、可愛いったらありゃしない!それじゃあまた後で、と声をかけ向かうは先日と同じくあの日本家屋、一応程度に作戦の再確認と途中までの行動を共にすることとなっているのだ。久々の戦闘行動に胸が高鳴りそうになるのは見ないふり、別に戦闘狂になった覚えはない、けれど。真っ青で雲ひとつない綺麗な空は、あの日と同じ色だった。

Title by トリステーザ、死す
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