ゲミュート震えて

その名はレム


久々に訪れた機械技師の元に戻ってきた家出コズミックガールの話を聞いたならば思わず口を開いていた。

「……それは、密輸、ということか?」

青が揺らぐ、本来ならば、そうだ祖国のやることにケチをつけるのはやるべきことではないし正しくない。けれどもどうにも、嫌な予感がしなくもない。これがトメニアからの荷物でないのならどうだってよかったろう。冷たいかもしれないが宇宙娘に気をつけるようにと告げるついでに一応程度に銃の使い方の指南をする程度で済んだかもしれない。けれども残念ながらトメニアからの、荷物なのだ。確かにかつての戦争で天照と同盟を結んでいたこともある。けれど今は欧州戦争真っ只中で、天照とは同盟もなにもありゃしない。それでも密輸するというのならなにかしら、意図か利益が絡んでいるのは目に見える。かつての大戦の折にも密輸なんぞは当たり前のようなものだった、しかし、それでも。

「ん、んんー……わ、わかんな、い!でも多分そう!だよ!荒神のクズどもはバカばっかだしわるいひとだからきっと密輸、なんだよ!!」

だいぶ確定の仕方があやふやではあるうえに非常に偏った見方ではあるがその可能性が高い、ならば、どうするべきか。軍人としてはここで祖国を取るべきであろう、シュテファーニエ・ローゼンハイムという1人の機械としても生き延びさせてくれた国を取るべきであろう。けれども、シュテファーニエ・ローゼンハイムという1人の女として、人間としての思考は、その荷物の中身を、確認し一部上層部への不満を持つものが勝手にやったことかどうか確認するべきではないだろうか、とも思ってしまう。つまり、祖国を取るのであれば、即ち。

「……三知、明日も何時もの組へ向かうのなら私も、連れていってくれないか。今回の件少しばかり、協力しよう。」

ふぅ、と息をつく、目をパチクリさせる彼女を横目に奥でお菓子をかじっている薔薇の少女を呼び寄せた。明日10時頃にまたここで、と彼女と、彼女の保護者に告げたなら可憐なる我が妹……ただし血縁関係はないしどちらかといえば保護対象というべき彼女と共に居住地へ戻る。ああ、明日と突入当日はこの子をバイト先の喫茶店のマスターのところにでも預けなくては、少しでも危険にさらすようなことはしたくない。

「マノラ、明日と……15日は目蓮氏のところにいてほしいのだが、大丈夫か?」

足を折り彼女と同じ目の高さ。ああその金の瞳はやはり美しい。

「う、ん……大丈夫…シュティが、帰ってくるまで……まつ。」

なんて愛くるしい少女か!一時たりとも離れたくないが連れ回して危険にさらす事になる方が耐えられない!そっとその柔らかな頭を撫る、ふわり優美な香りが鼻腔をくすぐった、様な気がした。

Title by トリステーザ、死す
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