これから、このまま

闇に堕ちて


許されない。
許してはいけない。
でも、その命令には逆らえない。
あなたには、逆らえない。

「…セシル?」

声の主はローザだった。

「顔色が良くないわ。大丈夫?」
「大丈夫さ。僕の顔色が悪いなんて、いつものことだろう」
「そのいつもより悪いと思うからじゃない」

幼なじみの彼女は、何かと僕やカインの世話を焼きたがる。
嫌じゃない。むしろ嬉しいくらいだ。
でも、その優しさがつらい。

「…ごめん、心配かけたね」
「カインもあなたも…本当にいくら心配しても足りないわ」

その優しさを、他の誰かにあげればいいのに。
僕の暗黒に染まった心に、優しさなんて相応しくないのに。

「セシル!」

カインが、息を切らしながらこちらに近づいてきた。

「陛下がお呼びだ」
「陛下が…?」

そう言って、一瞬曇らせた表情を、二人は見逃さなかった。

「どうしたの?」
「どうした?」

はっとして、すぐに笑顔でごまかす。

「いや、なんでもない。すぐに向かうよ。ありがとう、カイン」

そうして二人の顔を見ないようにしてその場をあとにした。

ローザもカインも、大切な仲間だ。
二人は僕に居場所を、安らぎを、優しさをくれる。
だけど、甘えなんて許されない。

僕は、陛下のために手を汚し続けている。
人々に恐怖を与え続けている。
そんなこと、許されるなんて思ってるわけがない。

だから、待つんだ。
いつか陛下が昔のように、平和の満ちた世界を望むのを。
その時、罪人として僕が罰を受けることになったって構わない。

その日まで、僕は陛下のために、闇の力で命令を遂行し続けよう。


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