これから、このまま

ちょっとだけ成長日


ハッピーメリークリスマス!

それ、昨日も聞きました。
落胆からくる冷たい言葉を心にしまって、オニオンナイトは自分の家に向かった。

この時期の街の盛り上がりようは、異常なくらいだ。
本来ならば、自分もその中に混じって楽しく過ごすのだろう。
しかし、今年はそうもいかない。
クリスマスはティナと一緒に…と思っていた矢先、彼女は他の仲間の家ですごすという。
滅多なことでは落ち込まない自分が、ただそれだけのことに寂しさと悔しさで押し潰されそうだ。

自宅へ帰る道の途中、そのことばかりが思考を支配して、ちゃんと前を見ていなかった。

「おっと!ごめんな!」
「あ、すみません…って、ロックさん?」

驚きで変な声になってしまった。

「あ、オニオンじゃない。今帰り?」
「セリスさんも…」

2人は、表情からして随分と楽しそうだ。

「あ、もしかしてデートの途中…?」
「違うって!」

ロックが強く否定の言葉を口にしたが2人とも頬が赤い。
ああうらやましいななんて思っていると、セリスが言葉を付け足した。

「本当に違うの。このあとみんなでクリスマスパーティーだから、買い出しに行ってたの」
「あ、たまねぎもティナに誘われてそっちに向かってたのか?」

なるほど、確かに2人は手に大きな荷物を持っていた。
そして、ティナの用事はこのことか。

「僕は誘われて無いです…」
「せっかくだから来たら?ティナ、あなたにも来て欲しがってたわよ」
「え?」
「オニオンに俺たちとパーティーやるって言ったら、すっごく落ち込んで、そのまま帰ったから誘えなかったって聞いたぞ」
「…僕、ちゃんとティナの話聞いてなかった…」

感情のなすがままに、相手の思いを汲めなかった自分が恥ずかしい。

「で、用事あるの?」
「…無いです」
「じゃあ決まりね。行きましょ」
「はい!」

その喜びに満ちた表情こそ幼さが滲んでいたが、気にする者は誰もいない。


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