驚かし少女

 私はホグワーツに住む幽霊だ。生徒からはルイと呼ばれているけれど通称は"驚かし少女"だ。

 とにかく人を脅かすことが大好きいきなり現れてビックリさせることも好きだし、ジワジワと演出をしながら驚かすのも好き。
 そんな感じで何年も、何十年も?いつどう死んだかなんて記憶にないからわからないけど驚かしているうちにそろそろ新しいネタがほしいなと思っているとマートルから面白いことを聞いた。
 なんと彼女は監督生のお風呂場に忍び込んで裸な姿を観賞しているらしい。
 なにそれ面白そう!裸を見られたら羞恥で二倍驚くんじゃないかな。

 そう思って私はお風呂場に忍び込むことにした。
 けれど監督生のお風呂はマートルの縄張りだ、驚かせたらもう幽霊が入れないようにされてしまうかもしれないと言って譲らないから仕方なく私は違う場所へと向かった。



 「ばあっ!!あははっびっくりした?」

 私が夜に向かったのは闇の魔術に対する防衛術の先生であるルーピンだった。
 普段は私がいくら驚かそうとしても驚いてくれないからやってきちゃったのだ!
 ルーピンが一人お風呂に浸かっているところを見計らい湯船の中から現れてみた。
 すると普段は笑顔でかわす目を見開きルーピンが驚いた様子で私を見た!成功だ。
 私は嬉しくなりルーピンを覗き込みニヤリと笑うと。

 ルーピンの顔が私に近寄り、触れられない唇へとキスをした。

 「っっな!?」

 私は驚いて浴槽から浮かび上がると、ルーピンは真面目な顔をして私を見上げている。

 「なにするの!変態教師」

 「風呂場を覗く君に言われたくないよ。これに懲りたら人がお風呂に入っているときのイタズラはしないことだね。君は女性なんだから」

 「ふ、ふん。別に死んでるから私は何かされることないし。びっくりしたけどキスだってされてないわ」

 「何かされないなんて分からないよ。君みたいな幽霊に実体を与えるための魔法を考案している者もいるかもしれない。そんな人に今みたいな行動をとったらどうなるか」

 「そんな酔狂な人いるわけないじゃない」

 「残念ながら目の前にいるよ」

 淡々とそう言ったルーピンを私は訝しんで見た。けれど、ルーピンは至って真面目な顔をしていた。

 「僕は君に触れたいんだ」

 「おっ、驚かそうったってそうはいかないんだからね!」

 絶対これは驚かされたことに対する嫌がらせだ。
 そう理解して私は変な雰囲気を誤魔化すためにあっかんべーをして、天井に付くまで浮上して「今度こそはぎゃふんと言わせてやるんだから」と逃げるように立ち去った。





 むかしむかしあるところに仲のいいお友達がいました。
 まるで兄妹のように一緒にいた二人でしたが、いつの日か彼は彼女に恋をしました。
 けれど、彼は狼だったので人である彼女へ思いを伝えることができませんでした。
 彼は諦めていました。彼はただ一緒にいられるだけでいいと思っていました。

 けれど彼女は死んでしまいました。

 彼はとてもとてもとてもかなしみました。

 ある日、彼は彼女が幽霊として学校にいることを知りました。
 けれども怖くてすぐには会いに行けませんでした。
 会いに行かないながらも彼は幽霊から人にする方法を研究しました。
 そんな方法は先人だって知り得なかったことなのでいつまで経っても捗りません。

 そして彼は教師となることになりホグワーツへやってきました。

 そこには昔と変わらない。
 しかし自分を覚えていない彼女がいました。

 めでたしめでたし

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