召喚少女は怯まない

気がついたら私はどこか西洋の建物の中の廊下にいた。確か私は高校から帰ってお母さんの作ったあじの開きを食べて、ひのきの入浴剤のお風呂に入った後に布団に入って眠るところだったはずだけど。
そう思いながら長い廊下であるこの場所を見渡すけど、特に何も変わったところはない。

そこでなんとなく目についた一つのドアを開けて部屋の中へ入る。
中は薬臭く、ゲテモノな標本やよく分からない植物や液体などの入ったビンが棚にたくさんあった。
黒板もあるので教室だろうか。

そしてさらに教室から続く扉を入り奥の部屋に行くと、そこには私には大きいサイズの机やたくさんの本、そして一つ黒い革でできたソファーが置かれていた。

「よしっ」

私は目当てのソファーを発見すると遠慮なくそこに寝ころがった。

私はとても眠かったのだ。

「……ぉぃ、 きたまえ」
「お母さん、まだ寝るぅー」
「我輩は君の母親ではない。起きるように言っている!」

男性のうるさい声に目を覚ます。
目を覚ますとそこには映画で見たことのある黒髪黒ずくめのスネイプ先生がいた。

「なんだまだ夢か、すぴぃ」
「なぜ起きたのにまた寝るのかね!」

二度寝、いや夢の中だから二度寝ではないをしようとしたけど、私はスマホのバイブ機能じゃないんですよと言いたくなるほどスネイプ(仮)にぶるぶると揺すられたので私は仕方なく目を覚ました。

「あの、私は夢の中であろうと寝たいのですが」
「ここは夢ではない。君は誰かね。いつ我輩の部屋へ忍び込んだ?」
「えーと、さっき夢に入ってその夢の中でベッドやソファーみたいなちょうど良いものを探してさ迷った時です」

私は真面目に答えたのに全く話が通じていないようでスネイプ(仮)は眉を寄せて私をダンブルドア校長のところへ連れて行った。

それが最初の出来事である。
そこでダンブルドアに私はどこからか召喚されたのじゃろうとか話されて、魔法は使えますか使えませんでマグルと名付けられて魔法省に引き渡されることになったけど、何故かホグワーツの外には出られない不思議。
ホグワーツの庭から出ようとしてもその先へは進めないのだ。
試しに手だけを出してみると私の手は敷地の外からは消えて敷地の中へ戻ってくる。手だけが私へ向いて浮いているグロ映像です。痛くもないし手を引っ込めると元に戻る。

とりあえず、記憶を消すかということになったけどあら不思議私に魔法は通じないらしい。全く忘却呪文が効かないと役人さんたちは焦ってたさすが夢。

そんな訳で私は一応はホグワーツの制服を与えられて齢15にして10才の一年生と一緒にホグワーツで勉学に励むこととなった。
魔法はまったく使えないし無駄だけど何もさせないのもどうかというダンブルドア先生の優しさによるものです。ただ日本人なので少し年上だろうと思われているけど本当の年齢を言うのはなんか嫌なのでどうせ夢だし鯖を読むことにした。

しかもちょうど主人公の入学する年だったらしくちっちゃい主人公三人組や私をマグルマグルとめっちゃ見下してくるドラコは可愛かった。

「ドラコー、元気ですかー!」
「来るな寄るな近寄るな!」

私が声をかけると一瞬杖を出そうとしてけれど私に魔法は効かない事を思い出して回れ右して逃げるドラコはまるで天使。

「穢れた血が僕に近寄るなあ!」

と逃げ回るドラコを追いかけるのが楽しくてよく追いかけていた。

どうせすぐに夢から覚めると思っていたのだ。それなのに。
何年も私は夢から覚めることはなく見た目も変わることは無かった。


だから私が5年生になった時

「形勢逆転だな」

いつも追いかけ回していたドラコは今私の上に馬乗りになり悪どい笑みを浮かべている。大きくなったなーこれだから外国人は。
今までからかっていた復讐だろう。私はドラコに捕まり床に押し付けられたのだ。

慌てて人を呼ぼうにも人のほとんど通らない隅の廊下なので助けを呼ぶに呼べない。
だが、大丈夫だ。学生として過ごしている間に気がついたことだが私は物理的な攻撃も攻撃の意志があるものは受け付けないのだ。まあ夢の中で痛すぎるのもおかしいしね!
攻撃でない自分が転んだりするのは怪我するけど、前に階段から落ちて骨折した時はみんなに心配されたわ。うん、痛かったし次からは気を付けるよ。魔法が効かないから直すのにも時間がかかって大変だった。
なのでドラコに殴られたりしても平気だがドラコはそんな様子もなくじっと私を見下ろしてくる。

「ルイは」
「うん?」
「ルイはどうして見た目が変わらないんだ」
「え、夢だから」

ドラコの質問に私は即答した。だってこれは夢だから姿が変わるわけないじゃん。

「夢?」
「そうそう。ホグワーツに来る前私は寝ていたからこれも夢の途中なんだよ。だから目を覚ましたらちゃんと起きるわけ」

だから私の事が気にくわなくても安心してそのうちいなくなるから、とそう励ますように伝えるとドラコは目に見えて動揺したようで目を見開いた。

「そんなこと」
「?」
「そんなこと穢れた血のお前が…」

そう言うとドラコの顔が私の顔へと降ってきた。
そして唇が触れたかと思うと舌が入ってきたんだけどこのやろう。

「ちょっ、ぅん」
「ふざけるな、お前なんかに選択肢なんてない」
「ゃめっ」

止めようと背中を叩くけど、ドラコは一心不乱に噛みつくようにキスしてくる。
暫くそのままキスをされてドラコは息を荒くして顔を引いた。
私がかき回したせいで髪は乱れ唾液で唇が濡れていてなんだろうまるで私が襲ったかのように卑猥な顔をしている。

「なんで、」

ドラコは小さく言った。

「なんで、ルイはマグルなんだ」

いつもならふざけて返すけれどドラコの初めて見る悲痛な面持ちに私は何も言い返すことはできなかった。

まるで私がいなくなるのが寂しいというように言わないで欲しい。

私だって、これが夢でしたで終わるのは悲しいよ。みんないい人で終わりがあるのが辛い。
でも帰らなきゃいけない。
年も取れない私はやはりこの世界で異質な存在なのだから。




とセンチメンタルに思った時もありました。

あれから時が流れて私は現在1児の母です。

いやあ、あの後主人公のハリーの物語が終わる少し前、ホグワーツの戦いの時なんか知らないけど魔法が効かないとかホグワーツから出られないとか年を取らないとかいうチートや制限が外れて普通の一般人になりました。そしてその代わりなんかめっちゃ魔法が使えるようになったのよ。あれ私一般人じゃないね。
ともかくちゃんと勉強しておいて良かった!そのおかげでスネイプ先生も助けに行けたしね。

ちなみに物語で死んじゃう人を他にも何人か救ったよ。イエーイ。

そんな困難がありながらも、結局夢から覚めることもできず、相手の親の反対やあれやこれや「えっ、さすがに夢の中で結婚するのは…」から始まった喧嘩もありながらも結婚してこうやってちっちゃい時のドラコによく似た子供もできました!


めでたしめでたし!

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