猫の恩返し裏側

※ブチャラティ視点

1人の少女を拾った。
名前はルイと言うらしい。
見ない顔で途方に暮れたように困っているようだから「迷子かい?」と怖がらせないように優しく声をかければ彼女は頷いた。

俺は初めは虐待から逃げてきたのかと疑った。そういう子は少なくないからだ。
だから使っていない家の鍵を渡し、少し様子を見ることにした。

その間に仕事の合間を縫って彼女について調べたが余程遠くから来たのかルイの情報はどこにもなかった。

だから俺の知っている警察に引き渡そうかとも思ったが。

「おかえり、ブチャラティ!」

俺が家を訪ねると嬉しそうにそう言うルイに駄目な事だと分かってはいても、いつも延期された。


すぐにでも警察につき出せば良かったのだろうか。

「ブチャラティ、私、ポルポさんに認められてパッショーネに入ったの。スタンドも使えるようになったよ」

俺が組織の一員だといつ知ったのだろうかルイはいつの間にか試練を受けてスタンド使いになり、組織に与することになっていた。

思わず俺は彼女を怒ってしまった。組織に入ることがどういうことか分かっているのかと。

俺の言葉を全て聞いた後、ルイは笑い

「ありがとう、ブチャラティ」

と言った。

思われることより思うことの方がどれだけ易いのだろう。

俺はそれ以上何も言えなくなった。

せめて目の届く範囲にとルイを自分のチームへ入れるためにチームに紹介した。
チームのメンバーは初め子供のような容姿のルイを子供扱いしていたが、彼女の努力家で自然な性格にだんだんと馴染んで行った。

それまでルイは近所の女性との付き合いだけだったから、知り合いが増えることは良いことだ。
だが、少しだけ寂しくも思った。


それから一年後くらいだろうか、俺のチームにジョルノが入った。
ギャングスターになりたいと夢のある少年だ。

彼を連れて行った時、彼女以外のチームの奴等は素っ気なかったが、ルイは初めての後輩にあたるからか目を輝かせていた。……少しでもチームの仲が良いことは良いことだ。


それからば怒濤にたくさんのことが起こった。
幹部であるポルポが死にチームの全員で遺産を取りに行き、幹部となり、ボスの娘を護衛することになった。

女同士だからかトリッシュとルイはまるで姉妹のように早くに打ち解けていた。

化粧っ気の無かったルイがトリッシュに教わり化粧をした時は「そういえばお前女だったんだな」とミスタが言って笑顔で怒るルイが背後にスタンドを出すと言うこともあった。

確かに幼い容姿でどちらかと言うとボーイッシュな雰囲気を持つルイだが。特に嬉しそうに笑う時なんかは化粧をしなくともルイは女にしか見えないと思うが。
首を傾げて言い争うルイとミスタを見ながらそれを言うと「それは貴方にだけですよ」とフーゴは息を吐いて言った。


それから更に時間が経ち、俺はトリッシュを守るためにボスと戦いその結果、まるでスリラーのように生きる死人となった。
命が短いと知った絶望よりも俺はこの事をルイに悟られないようにしようと決意した。彼女のスタンド能力は危険だ。俺を助けられてしまう。

幸いにも普段なら俺がピンチだと知ると駆けつけるルイはジョルノ以外の他のチーム達と共にボートに留まっていたので知らないはずだった。

その時点でおかしいと思うべきだったのに俺は安心して考えるのを止めてしまった。


さらに時が流れてボスとの最後の戦いが終わった。

俺は受け入れる体が無いから魂はそのまま還っていくのかと思っていたが、何故か俺は目を覚ました。
俺の体の横には覆い被さるようにあるルイがいた。
彼女の深い傷口からは血が一滴も流れていなかった。

彼女は俺の体の状態と俺の体の状態をスタンドの力で交換したのだ!

恐れていたことなのですぐに気がついた俺はすぐに交換を止めるんだと叫んだが、もう聞こえていないようで。

「大好きだよ、ブチャラティ。ありがとう」

と小さな微かな声でそう言うと、それ以上は動かなくなり、その姿は一匹の猫へと変化した。

俺は駆け付けたジョルノに猫の手当てを頼んだ。不思議そうにしていたがジョルノは何も言わずに猫の部品を作り直したがもう猫は目を開けることは無かった。

彼女は猫だったのだろうか。

結局俺はルイの事をよく知ることもなく、彼女以外チームは命を欠けずに終わった。




もう何回、何十回目だろうか。

俺は忙しい合間を縫っては何度も行っている猫の墓参りに行っていた。
今日はその途中、旅行鞄を背負って途方に暮れた様子の少女を見つけた。

旅行客が道に迷ったのだろうか。

麻薬も無くなり治安がよくなったとは言え、旅行客の少女1人では心配だ。
困っている彼女に声をかけようと近寄り、彼女の顔を見て、俺は息を飲んだ。

ルイだった。

そんな訳がない。彼女が死ぬのを俺は目の当たりにしているのだから。

「また、迷子かい?ルイ」

それでも俺はルイの名前を呼ぶと、ルイは俺の顔を見て驚いた表情を浮かべた後。

可愛らしく嬉しそうに笑った。

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