悪役少女〜ライと一緒〜
私はよく組織の仕事を教わったジンと一緒にいた。
その自覚はもちろんあったけど。
「まるでジンのchick(ひよこ)だな」
とほぼほぼ初対面で言われたとき、あっこの人嫌な人だと思った。
ジンも彼、ライのことを好かないようでライと顔を合わせているときはとても不機嫌そうだった。
たぶん少しでも隙を見せたら殺したいと思っているのだろう。それくらい犬猿の仲だった。
別に私はジンが嫌いだろうとどうでも良かったけど、私のことを馬鹿にしているのだろうかことあるごとに可愛いお菓子をくれたり可愛いぬいぐるみをくれたりして子供扱いしてくる。
だから私は「馬鹿にしているのか」と渡されたお菓子を受け取りながら睨み付けると「馬鹿にしてなんかいないさ」と裏の仕事をしているくせに穏やかに見つめてきた。ライなんてすごく苦手だ。
なので私はジンがそばにいる時はなるべくジンの後ろに控えることにした。そういう時にライが私にお菓子をくれようとするとジンがお菓子をライの手から払い足で踏みつけるのでライも空気を読んで物をくれるような子供扱いをしないからだ。
とはいえライと二人で組む仕事もあるので。
私はライの運転する車の助手席に乗り、外を見ているとライに話しかけられた。
「君は表の世界でも生きているのだろう。そちらで生きたいとは思わないのか」
「何よ。いきなり」
私はライの方に振り向いて睨み付けると、ライも視線だけこちらに向けていた。
口調は軽いながらも真剣な表情だ。
「私のリアルはこの世界よ。どちらかを選ぶというなら私はこの世界を選ぶ。だいたいその質問まるで組織に疑問を感じているみたいじゃない。私は優しいから今回は他に言わないであげるけどそういう発言は気を付けた方が良いわよ」
「そんなつもりはなかったのだがね。ご忠告痛み入るよ」
「せいぜい感謝しなさい」
私は軽口を言って再び外へと視線を戻した。
表の世界。
もしも拾われたのが普通の人だったのなら、私はスクールの子達のように普通に生きていたのだろうか。
想像して気持ちが悪くなる。
私は十分に幸せだ。
確かに危ない仕事はあるけど私の場合は強要されている訳でもないし、堅気の仕事をしている人の殺害依頼はボスの根回しのせいか来たことはない。それは明らかな特別扱いだ。私はボスのためならなんだってやるのに。
私は十分愛してもらっている。
だから裏切らない。
「はあ。早く帰りたい」
早くライから離れたいと思ってそう呟いた。それにライがちらりと私を見る。
「眠いのなら寝ていても構わないが」
「だから子供扱いしないで!」
見当違いな言葉が返され、私はそう言った。
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