友達以上恋人以上2

 「君にはそんな俺が分からないだろ?君は俺と違ってたくさん愛のある恋愛はしてきているみたいだし。逆に俺も君の気持ちが分からないからお互い様だよね。それにさ、俺は君への気持ちも分からない。」

 「………私への気持ち?」

 「うん。俺は君の事をどう思っているんだろうね。君は好みでもないし、性格が良いという訳でもない。それなのにどうして、君に俺はこんなにも執着しているのかな。君はどこにでもいる少し変ってるだけの女なのに。ほんとうにどうしてなんだろう。分からないよ。」
 

 臨也は笑いながら言う。

 笑っているのに泣きそうだと、なぜか私はそう思った。



 「何年も何年も、本当に俺はよく君なんかを構っていると思うよ。君を縛って、縛るのは楽しいし楽しかったけど、別にそれは他の女でも良い筈なのにね。君みたいに生意気な女が良いなら君以外にもたくさんいる。」

 「なら、その子で良いんじゃない?」

 「そう、そういう事を言うのがムカつくんだよ。本当・・・殺してやりたくなる」


 臨也は目を細めた。
 本当に殺されそうだと思う。

 けれどそう思うのに私はそれを怖いと感じなかった。


 「君を殺したいな。そうすればこの疑問も解決できるのかな。ふふっ、俺はまだ君をころさないからそんなに眉を寄せるなよ。そんな顔になっちゃうよ。」

 「そうさせてるのは臨也でしょ。で、貴方はいったい何が言いたいの?私を殺したいってだけ?」

 「違うよ。俺は君に恋愛感情は無いけど、君の事を特別に思っているって事。」

 「・・・・・友愛とか?」

 「そうかもね。だから離したく無いし、君を束縛したい。だから結婚したいんだ。」


 ・・・だからになぜ結婚が結びつくか分からないが。これはプロポーズなのだろうか。

 いや、違うだろう。少なくとも普通のプロポーズではない。

 これがプロポーズなら全ての順序が逆だ。


 「それに役場の役員には根回ししているから、婚姻の取り消しは君じゃできないよ。」

 「は、あ?」

 「言っただろ?君を束縛したいし、結婚したい。俺は自分の欲しい物は手に入れる。」

 「そん「結婚するとなったら一応奥さんになる訳だから、遥の希望はできるだけ叶えてあげるよ。俺なら結構な贅沢だってさせてあげられる。言ってごらん、何が欲しい?それとも何がいらない?欲しい物は買ってあげるし、いらない物は消してあげる。」



 俺って良い旦那さんだろ?とテーブル越しに臨也は私の手を取り笑顔で言う。
 
 臨也に買って欲しいモノなんて無い。

 ただ、今私が消して欲しいのは婚約届だけだ。 



 私は思わず臨也を殴った。
 
 避けられただろうに、臨也は私の拳を受け入れるとソファへ沈んだ。



 ……とりあえず、朝が来たら役所に行こう。


 臨也が無駄だと言うのだから、行っても無駄なんだろうけど。  
 



[ 17/22 ]

[*prev] [next#]