誘い

※ダンスパーティー前のお話
(ジョージ視点)


ダンスパーティーに誘う人を俺は迷っていた。

誘いたい人として、まっさきに思い浮かんでしまった人ならいた。
それは、ミリア・ファスト。スリザリンの同級生。

けれど、彼女を誘っても確実に断られる。
OKをくれる可能性なんて、スネイプがフリルのドレスを着てダンスパーティーに参加することより有り得ないだろう。


そう、ありえない。


だいたいなんで真っ先に思い浮かんだのが彼女なんだ。

2年生までは確かに嫌いだったはずだ。

それをどうしてダンスパーティーに誘いたいと思うのだろう。

好きなのか。いや、そんなこと………。


けど、彼女がいる度にイタズラを止めた今もその姿を目で追ってしまうし、仲良さそうにスチュワート・バックスと話していると無性に悔しくなる。

いつからなのだろう。

もっと周りに良い子なんてたくさんいるはずだ。
俺をダンスに誘ってくれる可愛い子だってたくさんいる。

あんな性格の悪い女を好きになる理由なんかない。いや、彼女にも優しいところはあるみたいだが。
いやいやいやもちろん性格の悪いところの方が勝っている!
ありえない、本当にありえない。

それなのに、彼女とダンスパーティーに参加すると想像すると、とても幸せだった。



ぐちゃぐちゃと考えながら誰もいない廊下を1人歩いていると、目の前からミリア・ファストが歩いてくるのが目に入った。


「ミリア」


俺は思わず彼女の名前を呟いたが、彼女は聞こえている様子もない。


けれど、これは絶好のチャンスだろう。


俺は覚悟を決めることにした。


「ミリア、俺とクリスマスダンスパーティーのパートナーにならないか?」


俺は目の前まで来た彼女にそう声をかけた。
ぶっつけ本番だったので声が震えた。

そんな俺にミリアはいつも通りなにも反応を示すことなく、通り過ぎようとしたので。
俺は慌て過ぎ去る彼女の腕を掴んだ。


それにより彼女の動きは止まったが、振り向いてもくれない。
俺は何か気の利いた言葉をかけようとしたけど、いつもなら簡単に動く口からうまく言葉が出なかった。口を開こうにも言葉にならない。
余程、緊張していたのだろう。


「あ、あのさ。返事を貰えたら、嬉しいんだけど」


なんとかミリアにそう伝えると、ミリアはこちらをはじめて向いて、俺を相変わらず冷たい視線で見た。
きれいに澄んだ瞳に見つめられ俺の心臓がドクンと鼓動する。

「嫌です」


彼女はそう返事をすると、放心した俺の手を振り払い去っていった。







(夢主視点)



私は廊下でいたずら双子のどちらかにダンスパーティーに誘われました。

彼が私を誘う理由なんて、おそらくはまたイタズラの延長でしょう。

誘いを受けましたらきっと片割れが出てきて笑い物にでもするつもりだったのだと思います。
めんどうですね、本当に。
何よりそんなイタズラに引っかかると思っていることに腹が立ちます。


3年生からは何かしてくる事は無かったので油断していましたが、まだこのようなイタズラをしてくるなんて。


本当に油断できません。

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