スチュワートと好み

 それは5年生の時。


 「ミリアさんってどんな男の人が好みなの?」


 図書室の机で本を読んでいるとこそこそとミリアに質問をするハッフルパフの女生徒を見かけた。

 おそらくはセドリックのためにそんな事を聞いているのだろうなと思いながらも、俺も少しだけ気になったので耳を傾けてみた。


 「好みの…人ですか」

 「うん。なんでもいいよっ。かっこいい人とか真面目な人とか、クィディッチのシーカーで真面目で優しくてハンサムな人とか」


 最後は少し具体的だ。

 けれど、女生徒が何を言いたいのか気づかない様子の名前は、口元に手を当てて少し迷い考えた後に口をひらいた。




 「面白い人、が好みですかね」





 ……………………ミリアが答えたことも予想外だったが、好みのタイプも予想外だった。


 それは女生徒も同じだったようで、「えっ、ミリアさんて面白い人が好きなの!?」と確認している。


 それにミリアは「はい」と間違いはないようで頷く。


 「へぇー。うっふっふっ、面白い人が好みなんだ。教えてくれてありがとっ!」


 女生徒はミリアへ嬉しそうに元気にお礼を言うと、司書に睨まれながらも図書室から出て行った。






 「ミリアは面白いのが好みなのか?」

 「聞いていたのですか?」

 「ああ。聞こえてきた」


 俺は女生徒が立ち去ってから、本棚の前で立ちながら本を吟味するミリアへと近づき声をかけた。

 するとミリアはページを開いたまま、身長差があるのでまっすぐと俺を見上げる。


 「そうですか」

 「ミリアは具体的にはどんなのが良いんだ?」

 「あら、スチュワートは恋愛話が好きなのですか?」

 「いや、君の好みが意外過ぎて気になっただけだ」

 「そんなに意外ですか?………そうね、具体的には」


 ミリアは少し上を向いて思考してから俺の質問に答えた。

 「くだらない話をしない人ですかね。精神的に幼くない人が良いです」

 「…………………なるほど。つまり馬鹿ではない人って事かな」

 「そうですね、確かにそういう方は苦手です」

 「ちなみにウィーズリーの双子についてどう思う」

 「好ましくありません」

 「そうか」


 どうやら彼女の面白いということは冗談を言ったり、人を笑わせたりする人ではなく。

 知識があり、愚かではない人という意味なようだ。


 それなら確かに彼女らしいが。


 きっとあの女生徒は勘違いをしたままセドリックに伝えるだろうな。

 俺は一つ頷くと、彼女の近くにあった気になる本を取って机へと戻った。








 そして、後日。


 「バックス、面白い人ってどうすれば良いんだろうね」


 と深刻そうに俺に聞いてきたセドリックに説明するか、けど説明をするのはめんどうくさくてどうしようか迷った。




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