双子2

(ジョージ視点)


 それは俺が3年生の時、校内を1人歩いているとグリフィンドールの1年生のネビル・ロングボトムが階段から落ちかけているのを目撃した。


 その階段は騙し階段で、確かに目では見えるが三番目の段は実際は存在しない事をネビルはまだ覚えていなかったらしい。
 ネビルがあと一歩を踏み出せばすぐに階段から落ちるだろう。


 相変わらずマヌケな奴だなと思いながらも、助けるにはこの位置からでは間に合わないから。俺はネビルが落ちるのを見守ることにした。
 たとえ落ちてもケガをする高さではないから。


 けれど、ネビルが階段から落ちる事はなかった。

 彼の手を後ろから来ていた人が掴み止めたのだ。


 それだけなら別に大したことでもないが。

 ネビルの手を掴んだのはミリア・ファストだった。


 俺は、いつもグリフィンドールを快く思っていない彼女の、有り得ない行動に目を瞬いた。


 けれど、何度瞬きしてもやはりネビルを助けたのは彼女で。
 ただ俺は驚いた。


 ミリアは手を掴んだネビルをグリフィンドール生にいつも向ける冷たい視線で見たので、ネビルは小さく悲鳴を上げる。

 ネビルはスリザリンに良い思い出なんてないようだから、彼女が怖かったのだろう。

 そんなネビルにミリアは口を一度開いたあと、閉じて、また開いた。


 「その段に降りたら落ちますよ。お気をつけなさい」


 ミリアはニコリともせずにそう言うと。
 ネビルの手を自分で掴んでおきながら振り払うように放して、彼女はネビルが踏もうとした階段を一段飛ばし歩き去った。


 それから残されたネビルは呆然と彼女を見えなくなるまで見送ると。

 我に返った様子で足元へと視線を下げて、恐る恐る階段を一つ飛ばして次の授業へと慌てたように向かって行った。




 俺はそんな様子を見て、驚いたような、戸惑うような、複雑な思いがした。







 もし、階段から落ちかけたのが俺だったらだなんて。

 考えてなんかいない。

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