スチュワートとセドリック

 ※].shall we dance?の後の話





 「君は、ミリアの事が好きなのか?」

 「それはディゴリー、君だろう。」


 スチュワートが気分転換に学校のテラスで風に当たっていると、いつの間にいたのだろうセドリックに声をかけられ、差し障りの無い事を話しているとこのような問答へと発展した。

 スチュワートはセドリックがミリアへ好意を持っている事は知っていたが、彼が自分にそのような疑いをかける事は鬱陶しい事この上ない。

 だいたいこの質問はもう何度も彼に尋ねられていたし、答えている。
 そもそもセドリックとはじめて話したのもこの質問からだったと記憶している。


 「なら、君がミリアをダンスパーティーに誘ったのは友達としてかい?」

 「ああ、彼女しか俺に誘われてくれる人を思い浮かばなかったからな」


 そう言うとセドリックは端正な顔を悔しげに歪めた。


 「別に他の女性だって、誘いを受けてくれただろ」

 「お前みたいな人気者と一緒にするな」


 品行方正なセドリックと違い、スチュワートは自分でも分かるくらいにダサい見た目をしているのだ。
 そんな彼の誘いを受けてくれるほど女は生易しくない。特にプライドの高いスリザリンならなおのことである。


 「だいたいミリアは例え俺に誘われなくてもお前とダンスパーティーに行くことは無かったんだ。ドレス姿を見られるだけありがたいと思え」

 「…思える訳が無いだろ。それに最近少しはミリアに近づけていたんだ。何度も誘っていたら、もしかしたらOKしてくれたかもしれないじゃないか」




 ………何度も誘うつもりだったのか。


 前回ミリアを壁に押し付けていた事といい、あっ、こいつヤバいなと一瞬スチュワートは思った。

 見た目は清廉潔白な整った容姿であるのにもったいない。


 確かにホグズミートには一緒に行ったようだが。ミリアはセドリックの誘いを受けてから、「あの時の私は徹夜明けでどうにかしていました……」とドンヨリと落ち込んでいたところから見ても別にセドリックに好意を抱いているようには思えない。




 とはいえ、彼もそれだけ必死なのだろう。

 普段はどちらかといえば温和しい彼がミリアへは積極的に行動するのはミリアの性格を思えば仕方がないのかもしれない。

 彼女は行動しなければ振り返ることもないのだから。


 「お前は本当に、ミリアが好きなんだな」

 「当たり前だろ。好きすぎてどうにかなりそうなくらい、僕は彼女の事が好きだよ」

 「…なら、それを本人に言えば良いだろ」

 「言ってもフられるに決まっているのに告白できる訳がないじゃないか。それに彼女には優勝したら告白をするって言ったんだ。それなのに先に告白するなんて、できないよ。」


 一応、セドリックは告白しても玉砕する事は分かっているらしい。
 スチュワートも彼が一刀両断で断られることはもう、思考するまでもなく想像できた。


 …有り得ないことだが、それは自分でも同じだろう。


 「そうか、なら試合を頑張れば良い。俺はそろそろ部屋に戻って本が読みたいから戻る」

 「ああ。バックス、君は本当に彼女の事を好きじゃないのか?」

 「もちろんだ。」


 最後にかけられた質問にスチュワートは間もおかず答えるとテラスを後にした。


 テラスを出るまで背中に感じる視線に、早くくっつくなり玉砕されるなりしてしまえとスチュワートは思った。








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2人の仲は悪くありません。
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