スチュワートとスリザリン

※Z.can't celebrateの時の話






 スチュワートが夜に食堂で食事をしていると、隣にドラコが座った。

 今日はいつも一緒にいるミリアはいない。いや、いつも一緒と言うのは語弊がある。彼女とは約束があるわけではなく、ただ同じ時間に授業が終わるので近くに座るというだけのものだった。
 ミリアとスチュワートは考え方や好みが似ているため、選択教科の科目も同じものを取っているのだ。

 今日は……というよりも最近彼女は年齢規制がかかっていたにも関わらず三大魔法対抗試合へ立候補したハリーへの嫌悪が交じる食堂の空気が気に食わないらしく、持参したタッパに料理を詰め込むと足早に寮へと戻って行った。


 「先輩はどうやってポッターがゴブレットに紙を入れたと思いますか?」


 スチュワートが紅茶を飲んでいると、隣からドラコが声を掛けてきた。
 嫌味ったらしい言い方をするのはもう彼のデフォルトだとスチュワートは思った。

 ドラコが食堂で声を掛けてくるのは珍しい。見た目がマッドサイエンティストという良い印象を与えないスチュワートと公の場で話すのをドラコが好ましくないと思っているのは、ドラコが1年生の時から付き合いのあるスチュワートは言われずとも分かっていた。

 今回それでも話しかけてきたのは、他の先輩がその方法の見当を付けられなかった事に苛立っての事だろう。
 本当はスリザリン6年生で次席でもあるミリアに聞くのが一番良いとは思うが。スチュワートには理由が分からないがドラコはあまり彼女の事を好きでは無いようだった。


 「俺の予想でも構わないか?」

 「ええ、構いませんよ。期待なんてしていませんから」

 「そう」


 スチュワートは少しだけ迷うように間をあけてから答えた。

 「俺はポッターが紙をゴブレットに入れたんじゃないと思う」

 「は?」


 ドラコが口をあんぐりと開けたのを見て、スチュワートは困ったように眉を寄せた。

 同じようにこっそりスチュワートの言葉を聞いていた近くのスリザリン生は会話を止め、スチュワートを睨んだ。


 「先輩はポッターの味方なんですか?」

 「そんな訳ないよ。これはただの俺の見解だ。」


 スチュワートはなぜ否定=ハリーの味方となるのか意味が分からなかった。彼はポッターに味方する気など欠片も無かったし、正直彼の事はその辺に生えている雑草並に興味も無かった。


 「もちろん、ポッターがゴブレットに名前を入れた可能性が皆無という訳じゃない。けれどたった4年生の彼が校長や教師、魔法省を欺いて名前を入れたというより、誰か優れた魔法使いがゴブレットを騙して彼の名前を入れたと思ったほうが可能性としては高いだろう。」


 それに近くに座っていた同学年の男が噛み付くように口を挟んだ。


 「けど、ポッターは今までだって信じられないことをやってきたんだぜ。今回だって、なにか詐欺まがいな方法でゴブレットに名前をいれたに違いない。」


 スチュワートはその横槍に顔色を変えることも無く話を続けた。


 「そう、その可能性だってある。それは認めるよ。けど、だからって、それだけを真として考えていては視野が狭くなる。俺の考えは現状ではポッターがやっていない可能性が高いと思うだけの個人的な、証拠もない考察だ。俺の考えを否定するのは正しいことだよ、大いに結構だ。ただもしこの裏に真の犯人がいたとしたら、俺たちが今ポッターがやったんだと囁きあっていることを彼もしくは彼女は愚かだとあざ笑っていることだろう。そう考えると悔しくないかい?」


 スチュワートは手に持っていた紅茶を置くと、デザートとしてバスケットに入っていた人型のクッキーを手に取った。
 そのクッキーにはにこやかに笑う顔がチョコで描かれている。


 「だからこそ、俺たちは疑うことを放棄してはいけない。誇り高きスリザリンが何者かに笑われているにも関わらず、手のひらで踊らされるなんて腹立たしいことこの上ない。」


 スチュワートはクッキーを頭の部分を折ると、口に入れた。
 クッキーは思っていた通りに甘ったるくて、スチュワートはなんとかそれだけ飲み込むと、残りは皿に置いた。


 「まあ、俺の見解なだけだ。忘れてくれ。」


 それだけ言うとスチュワートは食事を再開した。

 スチュワートの話を黙って聞いていた周りの人達も次第にポツリポツリと話し始め、やがて何事も無かったように賑やかになった。

 まるでスチュワートの”忘れてくれ”という言葉の暗示にかかったように


 ドラコはその食事の間。誰かが話しかけても何かを考えるように黙り、時々スチュワートを見ながら食事を続けていた。











 〜〜〜〜〜〜

主人公もここらへんでやけに饒舌でしたが、スチュワートも饒舌になりました。

 二人は行動が似ています。が似ていません。



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