スチュワートと白いたち
スチュワートがミリアと大広間で食事をしていると、グリフィンドールのテーブル付近でドラコがムーディに白いたちにされているのを見かけた。
ハリーとケンカをして腹を立てたドラコがハリーに後ろから魔法をかけようとしたのが、ムーディの逆鱗に触れたのだ。
スチュワートは椅子から立ち上がると、静かに騒動の場に近づいた。
ムーディが魔法でドラコである白いたちを空中に浮上させたのを見て、スチュワートは杖を振り呼び寄せ呪文を唱える。
すると宙に浮いた白イタチはスチュワートの胸へと飛び込んできたのでスチュワートは丁寧にそれを胸へ抱いた。
突然現れた第三者に食堂中の視線がスチュワートに集まったが、スチュワートは気にすることなくジロリと睨むムーディを無表情で見つめ返した。
「おまえはスリザリンか。知らない顔だ。」
「知らないでしょうね。自分の家族は闇祓いでも闇の魔法使いでもないので。」
「ほう。」
ムーディはその言葉になにが面白かったのかニヤリと笑った。
白いたちとなったドラコはスチュワートの手の中で震えていたので、スチュワートは大丈夫だと言うように周りから分からない程度に優しく抱きしめた。それは別に気遣ってではなく、腕の中で下手に暴れないようにするためである。
少しの間、何をするでも無くスチュワートとムーディの二人が見つめあっていると、騒ぎを聞きつけたマクゴナガルが食堂に姿を現した。
「な、何をなさっているのですか?」
「教育だ。」
ムーディは怯える白イタチを見つめて、低く言った。
「教・・・・・、ムーディ、それは生徒なのですか?」
叫ぶような声と共に、マクゴナガルの腕から本がボロボロ零れ落ちた。
マクゴナガルは杖を出すと、ドラコを元に戻した。
スチュワートが白いたちを抱いていたので、元に戻るとドラコはスチュワートに抱きしめられている形となった。
一瞬の間だけスチュワートを見上げ呆然としていたドラコだったが、すぐに顔を真っ赤に染めると胸に手を当て突っ張ったためスチュワートは手を放した。
手を放すとドラコは少しよろめいたが、頼りなくとも立つことができたのでスチュワートは手を貸すことをしない。
それからマクゴナガルとムーディの少しのやり取りの後、ドラコはムーディに何かを言い上腕をつかまれて、スネイプ先生のいる地下牢へと引っ張っていかれた。その時にドラコと視線が合ったが、スチュワートは今度はスネイプ先生がいるなら大丈夫だと思いドラコを助けはしなかった。
「貴方が助けに行くとは思いませんでした。」
「一応、魔法薬学について楽しく話せる後輩だからね。」
食事の席へ戻ると向かいに座っていたミリアが軽く声を掛けてきたので、スチュワートも軽く返した。
わざわざ彼がドラコを助けたのは、ドラコはスチュワートにとって魔法薬学の事のみでだが唯一懐く後輩で、それが危ない目にあっていたのが一つの理由だった。
四年の時に参考書を教えて以来、ドラコはたまにスチュワートに魔法薬学で分からない事があると聞いてくるようになった。
とはいえ未だに話し方に少し棘があるが。
それに・・とスチュワートは内心思う。
スチュワートはムーディが嫌いだった。
具体的な理由は無かったが、嫌いだった。いや、嫌いと言うよりも彼を見ると絶えず胸の中の警報機が作動しているような感覚に陥る。
スチュワートにはその感覚に覚えがあった。3年前闇の防衛術を担当していたクィレル。彼にも同じような感覚を覚えていた。
・・・今回は闇祓いだからヴォルデモートとは関係ないと思うが。
それでも、スチュワートは彼に注意することにした。
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