スチュワートとドラコ
ドラコとスチュワートがはじめて会話をしたのはスチュワートが3年生、ドラコが1年生の時であった。
始業式から1ヶ月程経過したころ、スチュワートはホグワーツ魔法学校の図書室にいた。目的は暇つぶし用の本を借りるためである。
図書室へ入ると彼はまっすぐ魔法薬学の本棚へと向かった。
スチュワートは魔法薬学が科目の中で一番好きだ。
他の教科はそれなりにこなすだけだったが、魔法薬学だけは図書室の様々な本を読み漁っていたので学年の中でも秀でて優秀だった。
その日、スチュワートが目的とする魔法薬学の本棚には先客がいた。
彼は今年入学したばかりの同じ寮の後輩、ドラコ・マルフォイである。何かと彼は目立つので周りに興味のないスチュワートも彼のことは知っていた。今はいつも一緒にいる大柄な二人の少年はいない。
彼はどうやら、彼の身長ではまだ届かない上段の方の本をジッと睨みつけているようだった。
視線からおそらく『死の魔法薬学』という本を取りたいのだろうなと彼は検討がついたので、スチュワートはドラコの背後からその本を取った。
それにはじめてスチュワートの存在に気がついたドラコは驚いたようにスチュワートに振り返ると、怪訝そうに眉をしかめた。
おそらく長めの手入れのされてない髪、そして無駄に分厚い瓶底メガネのスチュワートを見て不快に感じたからだろう。彼は少し潔癖であることは糊の効いた制服から見ても想像できる。
だからといって、スチュワートからしたらどうでも良い事であったが。
「ほら、これを取りたかったんだろ。」
「いりません。」
スチュワートがドラコに本を差し出すと、ドラコはその本を見ることなくピシャリと否定して受け取らなかった。
「これだと思ったが、違ったのか。」
「なんだっていいでしょう。僕に構わないでいただけますか、先輩?」
先輩の部分に特に嫌味を込めてドラコは言った。スチュワートの家は名家でも何でも無かったので、家の違いから彼は自分を見下しているのだろう。
「そうか?」
スチュワートはあっさりと頷くと手に取った本を本棚に戻し、近くにあった別の本を取った。
「借りるならこちらの方が良い。一年に習う分野を網羅しているし、図解もあって分かりやすい。それに付録も興味深いしな。」
「いっ、いりません。余計なお世話です。」
「そう。」
スチュワートはドラコにオススメの本を差し出したが、やはりドラコは彼から本を受けとらない。
まるで懐かない猫のようだとスチュワートは実家にいる猫の事を思い出した。
あいつも昔は懐かなかったが、今はだいぶ懐いた。どうせまた家でたくさん餌貰っているだろうから帰ったらダイエットさせよう。
スチュワートは表情を変えることなくそんなことを考えながら本を低い位置へと戻し、借りようと決めていた本を抜き取るとドラコに何も言う事なく踵を返した。
ドラコはスチュワートが去るのを見ると、誰も周りにいない事を確認してからスチュワートが勧めた本を手に取った。
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