隠しボス

ある日、ダイアゴン横丁でカフェの外にある椅子に座っているといきなり前の席に綺麗な男の人が座りました。

「ミリアさん久しぶり」
「ええ、久しぶりです。リル」

人懐こい様子で挨拶をしたリル、彼は私の寮違いの後輩でホグワーツの戦いで一緒に戦いスチュワートの従兄弟です。

「ミリアさんって今一人なの?」
「そうですね。ここで17時にセドリックと待ち合わせです」
「へえー今付き合っているんだっけ?仲良くしてる?」
「仲良くかは分かりませんが普通なのではないでしょうか」
「ふーん」

リルは頬杖を付いて間延びしながら立て続けに質問をしてきます。
何か様でもあったのかと不思議に思っていますとリルはどうでも良さそうに言葉を続けました。

「俺さ、実は貴女の事が好きだったんだよね」
「はあ」
「何その気のない返事。全然信じてないでしょう。そもそも好きじゃなかったらホグワーツの戦いでダンブルドア軍団に加わる時、貴女に強力してなかったし」
「そうでしたか。ありがとうございます」

確かにスリザリンである私がレジスタンスであるダンブルドア軍団に入りたいと言った時に彼は快く迎えて下さりました。もしリルがいなければ私はホグワーツの戦いにレジスタンスとして参加できなかったでしょう。
私がお礼を言いますと、リルはどうでもよさそうに息を吐きました。

「けどさ、俺にはスチュワート従兄さんのこととかいや従兄さんのことだけだけどそれがあって恋愛にかまけていられなかった訳。というかどう考えても従兄さんとくっつくかと思っていたから遠慮していたのに何でセドリックを選んでるの。どう考えても俺の従兄さんの方がずっと格好いいじゃん!」
「えっと、はい。スチュワートは格好いいですね」
「でしょ!」

徐々にヒートアップしたリルに私はまあ嘘でも無いのでそういうと、リルはハンドシェイクでもしそうなほど目を輝かせました。余程スチュワートのことが好きなのでしょう。

「ミリアさんはどうして従兄さんじゃ駄目だったの?」
「駄目と言いますか、そもそもスチュワートは私の事をそんな風になんて微塵も思っていないですし」
「うっわ鈍い!」
「に、鈍い?」

リルは本気で驚いているようにそんな事を言います。表情がとても豊かです。
リルはそう言いますけどスチュワートは特にそんな様子もありませんでしたしリルの勘違いの方が可能性としては高そうです。

「……とにかく、だからもし今付き合っている彼氏が嫌になったらすぐに別れてね。従兄さんか俺のところにきたら付き合ってあげるから。約束だよ」
「えっと」
「スチュワート従兄さんには悪いけど、できれば俺のところにきてね。ずっと一緒にいたのに何もしなかったわけだから取られるくらいならやっぱり遠慮なんてしなければ良かった」

「愛してるよミリアさん。だから早く別れてね」


リルはそう言い残すと、セドリックが来る前に去って行きました。
冗談かと思う内容でしたが、饒舌なのとは裏腹にずっと顔を真っ赤に染めていた彼に、本当なんだなと思いました。

私も彼の事が嫌いではありませんし好いて貰えることは有難いですが。

「ごめん、待ったかな」

申し訳無さそうに愛しそうな様子で現れた恋人を見て、たぶん彼の願いを叶えることは難しいことだと思いました。





※※※※

実は一番の強敵だったのかもしれません。

セドリックと鉢合わせにすることも考えましたが『そんな当て馬みたいなことする分けないだろ。馬鹿?』みたいな声が聞こえたので断念。

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