スチュワートと両親

 ※ホグワーツ卒業後。
 ※エンド後推奨


 (スチュワート視点)


 卒業後数年ぶりに両親に会いにきた。
 三人しかいない真っ白い部屋の中で、溶け込むように白く死んだように眠る両親に持ってきた花を横の机ににおいて、俺はじっと両親を見つめた。


 「ホグワーツを卒業しました」


 両親にただそれだけを伝えて、応えのない二人にそれ以上何を話せばいいか分からなくて俺は口を閉じた。

 いつ目が覚めてくれるのだろう。
 俺が赤子の時から眠ったままの両親の、俺は二人が目を覚ましているときの記憶はない。

 もう俺は成人になってホグワーツを卒業して、それなのに会えない。
 眠っている親の代わりに今は俺を本当の家族のように育てている親がいる。誰も本当の両親だと疑わないくらい。
 彼らには本当に感謝している。

 けれど……。

 俺は両親をずっと、眠り続ける原因の呪いを解いて俺の力で助けたいとスネイプ先生にたくさん教わって魔法薬学を勉強した。けれど成人になった今もまったく俺は何もできていない。
 結局俺は両親のために何もできなかった。
 そんな自分への恨みごとのような言葉が頭の中に浮かぶ。

 こんなことは話したくはないのに。

 悲しくなって、けれどふと俺はホグワーツ最後の列車の中を思い出した。

 それはとくに変わらない日常と同じ、友人のいる風景だった。


 「……母さん、父さん。ホグワーツは、楽しかったです」


 ぽつりとそんな言葉が出てそれはストンと心の中に落ちた。


 「良い先生に会えました。たくさん魔法薬学を教わりました。いつも俺が困っているとさりげなく助けてくれて俺の、恩師です」

 「良い後輩にも出会えました。最初は好かれていませんでしたが。だんだんと俺を慕うようになって。俺はけど、俺も本心では彼を苦手だと思っていました。どこか危うくて俺を鏡で見ているようで。でも放ってはおけなかった。最後に彼から花を貰いました。感謝の言葉ももらいました。嬉しかったです」


 そして、一度言葉を切ってから俺は震える声で続けた。


 「良い友達にも会えました」


 視界が霞んで仕方がなかった。


 「俺は、彼女に会えて良かったです。たくさん助けられた。ミリアに会えなかったら俺はホグワーツが楽しかったと言えなかったと思う」


 はじめて会って強い彼女に憧れて、あのようになりたいと思った。彼女の存在は両親に会えなくてただ悲しく必死だった世界を色づけてくれた。
 そんな人に出会うことができた。そんな人の誰よりも近くの友達になれた。

 母さん、父さん。
 俺は二人に話したいよ。楽しかったこと、悲しかったこと、何でもないこと。

 話したいから。
 たくさん話したいから、いなくならないで。

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