jealousy

 仕事が終わり私は魔法省のエントランスホールでセドリックを待っていました。約束はしていませんが仕事が遅くならなければ来るはずです。

 来なければそれはそれで帰ろうと思っていましたが、セドリックは現れました。

 腕に若い女の子をまとわりつかせて。

 まだ新しい服からしても新人なのでしょう。男性にモテそうな可愛い子です。胸も程よくありますし。それをセドリックに押し付けるようにしています。


 「………」


 二人はまだ私に気が付いてはいない様子でしたので私はセドリックの元へ近寄りました。

 近寄ると声が聞こえました。彼は彼女へ「離してくれないかな」と言っていますが、女の子はにこにこと笑い甘えるように離そうとしません。
 一応はセドリックは嫌がっているようです。それでもいらっとしますが。


 「私の恋人に何をしているのですか?」


 私は近寄り早々に女の子へと冷たく話しかけました。
 それに私に気が付いた女の子は目を見開き、セドリックは慌てた様子で女の子の腕を振り払いました。


 「ミリア、待っていてくれたの?」

 「そうですが。私は邪魔でしたか」

 「そんな訳ないよ。彼女はただの別の部署の子でさっき会ったばかりなんだ」

 「さっき会ったばかりでもう腕を絡ませているのですか」


 私はセドリックを睨みつけます。
 そんな私に女の子は怯えたようにセドリックを見上げますが、セドリックは彼女へまったく視線を向けません。


 「本当にミリアが勘違いしているものではないよ。彼女はただの……部下でもないし、同じ職場の人だから。腕を掴まれたのもついさっきのことで許可した覚えもない。昔も今も僕にはミリアだけだよ。信じてほしい」


 セドリックは女の子を見ずにそうきっぱりと言いますと、女の子は傷ついた表情をして私を鋭く睨みつけて去って行きました。


 「セドリック、もし貴方が浮気をしたら怒りますから」

 「そんなこと絶対にありえないよ。僕は本当に君しか見えていないから」


 そう恥ずかしいことを言います。けど誤魔化されません。


 「別に私だって貴方が浮気をしたとは思っていません。ですがもし私が誰かに腕を取られていたらどうです。嫌ではないのですか?」


 ですからこんなこと金輪際やめてほしいです。

 そう思いセドリックへ尋ねましたが、これで気にしないなんて言われましたら平手打ちをするつもりでした。
 ですが、セドリックは一瞬だけ瞳の奥にほの暗いものを浮かべた後首を横に振りました。


 「そうだね。それは、嫌だな」


 セドリックは真剣にそう言い、必死に弁解します。


 「ミリアが嫉妬してくれたのは嬉しいよ。いつも嫉妬をするのは僕ばかりだと思っていたから。でもミリアに不安も勘違いもさせたくないから次からはすぐに振り払うし、ああならないよう気をつけると誓うよ。それじゃ駄目かな」

 「破ったら承知しません」

 「うん。ありがとう」


 セドリックは私の言葉を聞きますと安心したように笑い頷き、私を抱きしめました。


 「僕が恋するのはずっとミリアだけだよ。絶対に浮気なんてしない。本当に愛してる、ミリア」

 「はい」


 私は頷きますと、セドリックは安心したように息を漏らしました。

 まあセドリックが人気があるのは仕方がないことですが。
 私だって恋をしたのですから他の人が欲しがる気持ちも分かります。

 けれど恋人となった今、誰にも渡すつもりなんてありません。

 ですからエントランスホールという人目のある場所でセドリックに抱きしめられるのはとても恥ずかしいですが我慢しました。

[ 141/179 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]