スチュワートとドラコ2
※第二章 9.get away 後の話
スチュワートは後輩のドラコ以外誰もいない魔法薬学の教室で簡単な魔法薬の実験をして過ごしていた。
今は奥の部屋にいるスネイプ先生から教室を借りているのだ。
そして作業をしながらも横で魔法薬学の分厚い本を参考に読みながら宿題のレポートを書いているドラコからダンブルドア軍団に所属していたセドリックをミリアが庇い助けたという話を聞かされた。
視線はお互い作業するものへと注がれ合うことはないがドラコの言葉の節々にはあわよくばスチュワートがミリアを嫌いになればいいという思いが見て取れた。
スチュワートはドラコの話を聞いて考え、ドラコが話の区切りをつけてからはじめて言葉を発した。
「ミリアはお前を庇ったんだろ」
スチュワートの言葉にドラコは目を丸くして、スチュワートへ勢いよく顔を向けると口をポカンと開けた。
そしてすぐに不愉快そうな顔になる。
それを視界の端に見て表情が豊かだなとスチュワートは思った。
「はあ?どうしてそう思うのですか。少し先輩はミリア先輩を美化し過ぎではないですか」
「……」
ドラコはスチュワートがドラコよりもミリアを庇うことが許せなかったのだろう。不満そうに尋ねた。
スチュワートはそのドラコの様子に話してから改めて説明するのが面倒くさいなと思ったが、言ってしまった手前仕方がないので口を開いた。
「話を聞くにその場にはディゴリーがいたんだろう。それに他のハッフルパフ生はそこまでではないがハッフルパフの中では優秀な生徒。そして相対するのがドラコ、お前とあのむしろ足を引っ張りそうな三人。まともに戦ってお前たちが勝てるわけがない。だからもしミリアが本当にディゴリーに味方をするなら、そもそもディゴリーを庇う必要はないんだ」
「なっ」
スチュワートの言葉に自分が弱いと暗に言われたと思いドラコは怒ったようで顔を真っ赤にする。
けれどすぐに反論の言葉は出ないようでスチュワートは構わず話を続けた。
「ミリアが争いに参加するなら勝敗はどうなるかは分からないが。分からないからこそミリアはそんな確実でないことに首を突っ込んだりはしないだろう。ミリアがディゴリーをどう思っているかは知らないが仲の悪くない相手がいるなら尚更な」
スチュワートはキッパリと述べた。
とはいえセドリックのことをどう思っているか知らないとは言ったが、スチュワートはミリアがセドリックのことを好意的に見ているということは知っていた。
ミリアは最近ではセドリックをほとんど拒絶しないし嫌な顔もしなくなった。
彼女の中で何かが変わったのだろう。
「だからミリアは争いを収めるためにドラコに嘘を吐いたんだろう。お前を争わせないために」
「争わせないため?」
「ああ、彼らが違反をしていないとなれば手を出す必要がなくなるからな。勝敗もなくなる」
「……仮にそうだったとしても。だからって……、先輩が僕たちを裏切ったことに変わりはありません」
「そうだな。本当に味方をするならミリアはお前たちを助けるべきだった。けど、もし俺がミリアと同じ立場だとしても同じことをしただろう」
「先輩も、ですか」
ドラコは傷ついた顔をしてスチュワートを見た。
なんだかんだドラコは付き合いの長い後輩だ。
ムーディーにイタチにされた時は助けたこともある。
だからこそドラコは自分が1も2もなく庇うと信じていたのだろう。
「俺もミリアも不必要な争いを嫌うからな」
それに加えスチュワートあまり目立つ行動もしたくない。
これは根本の理由が違えどミリアも同じ考えだろう。
だがそのことはドラコに話すことはやめた。話をややこしくするだけだ。
「だが本当にお前がどうでもいい後輩なら、俺たちはお前を信じたフリをして何もせずにその場を去ることを選択しただろう。けれどそれは選ばないし、ミリアも選ばなかった。ドラコ、それを選ばないくらいには俺たちはお前を大切な後輩だと思っている」
「っ!!?そんなことじゃ、誤魔化されません」
スチュワートの言葉にドラコは再び違う理由で顔を赤く染めるとふいと顔をそらした。
そんな後輩へスチュワートはチラリと視線をドラコへやった。
単純な後輩だ。だが、それが優しくなりきれないスチュワートにとって有り難かった。
自分は良い先輩にはなれないだろうが。
この後輩のためにせめて残り少ない学期の最後までは悪くない先輩でありたいとスチュワートは思う。
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