攫いのはなし


※JGが結婚する少し前の話。




「ジェイド先生はひとさらいだから嫌いだ」
ガイの隣で小さな口を尖らせながらぽつりと呟いたルークの可愛さにガイは頬を緩めた。
ルークとは反対側のガイの隣に座るアッシュも俺もアイツは気に入らない、と小さく零す。

「まぁ、何ですの2人共。ジェイド先生はガイの旦那様になる人です、それを人さらいだなんて!」
「だってジェイド先生はガイをさらった悪いやつだ!あんなやつ…あんなやつだいっきらいだ!」
ルークの大きな瞳が潤んだかと思うとすぐに大粒の涙が頬を流れる。わんわん泣き喚くルークを自分の膝に乗せてやりその小さな体を抱き締めた。
「ごめんごめん、俺が急に家に帰らなくなったからびっくりしたんだよな」

ジェイドとの新居が出来るまではこの家に居るつもりだったのだが、とにかく結婚式までの時間がなさ過ぎた。
決めなければならない事、やらなければならない事が山ほどあり、とりあえず式が終わるまではジェイドのマンションで一緒に暮らす事にしたのだが、どうやらそれが原因で双子達の機嫌を損ねてしまったらしい。
あれだけジェイドの事を気に入っていた2人も今ではこの有様だ。子供らしい可愛い嫉妬につい笑みが零れるけれど自分の夫になる人がこうも嫌われているのは如何なものか。

「ジェイド先生は人さらいなんかではありませんわよ!結婚したら夫と一緒に暮らすもの。ガイがジェイド先生の元に行くのは当然の事ですのよ」
子供らしからぬ言葉に驚きつつも、それがナタリアらしいと思いながらガイは頷いた。
「男はみんな人攫いなんだよ。自分の好きな子を攫うんだ。アッシュだってナタリアと結婚すれば人攫いになる」
「おれがティアと結婚してもひとさらいなのか?」
「そうだ、でもそれでいいんだよ。女は好きな人になら攫われたいって思うもんなんだ」
「それではいつか私もアッシュにさらわれますのね。楽しみですわ」

頬を赤らめるアッシュは照れ臭そうにそっぽを向いたままいつかな、と答えた。
その微笑ましいやり取りに目を細めながら視線を落とすと胸の中でぐずぐずと鼻を啜っていたルークと目が合う。
「なぁ、ガイはジェイド先生にさらわれて嬉しいのか?先生のこと好きなのか?」
「ああ、ジェイド先生の事が大好きだ。攫われてすっごく嬉しいよ」
「そっかー、ならいいや。さびしくてもガマンする。おれには父上も母上も、それにアッシュもいるからな」
にっこりと笑いながら抱き付いてくるルークと、ガイの服の裾をぎゅっと掴むアッシュを同時に抱き締める。
私も!とガイの袖を引っ張るナタリアも抱き上げ、3人共大好きだよと囁いた。

いつか自分もこんな可愛い子供を持てたなら。
ジェイドとの結婚に踏み切れなかった自分を後押ししてくれたのは他でもないこの子供達なのだといつか伝えられたらいい。

(俺の初恋がこいつらだなんて、ジェイドには死んでも言えないな)


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