背の高い綺麗な人妻を初めて見たのは去年の冬。
俺のアパート(築30数年)の前に建てられた家はそれはそれは豪華なものだった。
やたらとデカい豪邸は古いアパートばかりの景色の中でとても浮いていた。
そしてそこに住むであろう夫婦は豪邸と同様にデカかった。何がって、身長が。

俺とフレンも世のカップルに比べたら大きい方だと思うが、その夫婦はそれよりもデカい。
世の中上には上がいるもんだなぁ、と思いながら学校への道程を歩き出した。


初めて話をしたのはその数日後。ゴミ捨て場で偶然会った人妻にお早う御座います、と声を掛けられた。
カーティスと名乗ったその人妻はなかなか気さくで感じの良い人だった。
聞けばまだ21歳で、旦那は14歳も年上らしい。すげーな、リタも頑張ればレイヴン落とせるんじゃねーか?

そうやって何度か話すうちに俺達は仲良くなった。性格もさっぱりしてて気が合うっつーか似たもの同士というか。
旦那の方は仕事が忙しいらしく数える程しか見た事ないが、これまた美形でガイと良くお似合いだ。
気のせいかもしんねーが、たまに目が合うとものすごい殺気の篭った目で見られている気がする。
いや、多分気のせいだと思う。あの旦那にだけは何だか勝てる気がしないので気のせいであって欲しい。


「ふーん、そんなに綺麗なんだ、その奥さん」
学校からアパートまでの帰り道。仲良く片方の手で1つずつスーパーの袋を持ち、空いてる方の手でお互いの手を握る俺達は何処から見ても幸せなカップルだ。
泊まりに来るフレンの為にハンバーグを作ろうと買った材料が詰まった袋を最初は上機嫌で持っていたフレンだったが、ガイの話をし始めてからあからさまに不機嫌になる。

もしかしてこれはヤキモチってやつですか。思わずにやけてしまう口元を隠しながらフレンの表情を伺うとぎゅっと唇をかみ締め、碧い瞳は心なしか潤んでいる。
意地っ張りなくせにすぐ泣くフレン。それは俺の前でしか見せない本当のフレンだ。俺だけの特権に心が弾む。

「俺にとってはフレンが一番可愛くて一番綺麗だぜ。お前が好き。チューしていい?」
言うのと同時に素早く柔らかな唇を奪った。途端に耳まで真っ赤にしてバカ!と繋いでいた方の手を離して顔をべちん!と叩かれた。
離れた手をもう1度捕まえて、今度は指を絡ませて繋ぐ。恋人繋ぎってやつだ。
反省してるの?なんて口を尖らせて怒るフレンも本当に可愛くて2度目のキスをした。

今度はしっかりと手を繋ぎながらゆっくりと唇を離す。目の前には恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかむフレンの顔があった。
アパートはもう目の前だ。両手が空いたら思う存分フレンを抱きしめよう。


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