「苦しくないですか?」 「ん、大丈夫。でもちょっとジェイドが遠いなあ」 ジェイドの肩に自分の額を押し付けながら小さな幸せに浸る。 正面から抱き締めて貰うのは大好きだけど、今は膨らんだお腹に阻まれてジェイドの顔が遠いのがちょっと寂しい。 広いベッドの上で重い体をもぞもぞと動かし、自分の背中をジェイドの胸にくっ付けた。 密着した体から彼の規則正しい心音が伝わってきて、ただそれだけなのにすごく安心する。 少しだけ丸くなった俺の肩と胸のあたりを撫でていたジェイドの手を取り自分のお腹に導く。 「なあ、本当はちょっと後悔してるだろ?子供作ろうって言ったこと」 「いいえ、後悔はしていませんよ。ただちょっと早まった、と思ってはいますけど」 「ははっ。もうちょっと独り占めしたかった、だっけ?」 「あなたが私だけのものでいてくれた期間はたったの1年でした。あまりにも短いと思いませんか?」 「そうだなあ。確かに短いっちゃあ短かかったかもな」 ジェイドと2人、子供を作ろうと決めてから幸いな事にすぐこの子を授かった。 まさかこんなに早く家族が出来るなんて思ってなかったから本当に嬉しかった。 エコーの画像に映る小さな体も、少しずつ大きくなっていく自分のお腹も、ただただ愛おしくて。 自分だけの家族。俺とジェイドの、2人だけの赤ちゃん。 大きなお腹に触れば、いつでも確かめられるしあわせがここにはある。 「でも、あなたが幸せそうなので結果的にこれで良かったんでしょうね」 「ジェイドは?もう幸せじゃなくなっちゃった?」 「まさか。とても幸せですよ。何せあなたを私のもとに縛り付けておく理由が1つ増えたのですから」 「……あんたのそういう独占欲の強いとこ、結構すき」 その言葉にジェイドはただ黙って肩を竦めた。 「あんたの気がすむまで、好きなだけ傍で縛っておいてくれよ、旦那様」 指と指を絡めて、頬に頬を寄せて、ジェイドが好きだと言ってくれた笑顔を向ける。 初めて自分を見つけてくれた人。自分でいる事を許してくれた人。 自分よりも、自分に執着してくれた人。 「ありがとう、ジェイド。俺と結婚してくれて。俺を、母親にしてくれて」 「…あなたもつくづく難儀な人ですね。私みたいな悪い男に捕まって、あまつさえその男の子供を産まされようとしてるのに」 「それがどんなに幸せな事か、きっとあんたには一生わからないさ」 途方もない幸せに堪えきれない笑みが零れる。 そう、きっとあんたには死ぬまでわからない。 好きな男の子供を産めるのがどんなに幸せな事か! (しあわせすぎて、どうにかなっちゃいそうだ) |