4月1日の仮想

■スティングとナツの立場が逆の、エイプリルフールネタ in大魔闘演武





■スティング→妖精の尻尾の滅竜魔導士。天狼島の件で七年の間、眠り続けていた。事件時の年齢は、原作のナツと同じくらい。大魔闘演武では妖精の尻尾Aチームで参加。エクシードの相棒はお馴染みのレクター。
因みに、ローグも妖精の尻尾の一員。だが大魔闘演武自体に興味がないので、フロッシュと共に応援席にいる。
妖精の尻尾の一員として、初めから頑張ってたので、二人とも仲間想いの良い子。原作の大魔闘演武終了後ぐらい明るい。
育ての親(ドラゴン)は原作と同じく、致し方なく殺した。第三世代。

■ナツ→剣咬の虎の滅竜魔導士。滅竜魔導士が多くいる、妖精の尻尾に憧れていた。元々、妖精の尻尾に入る気満々だったが、その頃には主要メンバーが天狼島にて行方不明になっていたので、仕方なく勧誘されていた剣咬の虎に入った。
天狼島事件の頃、年齢はウェンディと同じくらいだった。なのでスティングと同じくらいの年齢で、大魔闘演武に挑む。
育ての親(ドラゴン)は、原作と同じくイグニールで、777年の7月7日に姿を消す。第一世代。
相棒のエクシードはお馴染みハッピー。
剣咬の虎のやり方が好きでなく、表立って反抗はしてないが、あまり上の言うことを聞かない。いつか仲間想いの結束されたギルドにするのが夢。
破天荒だが、馬鹿正直で剣咬の人にしては明るいので、ギルドマスター以外には、割と好かれてはいる。最強の五人の一人。
原作のローグの場所には初めからミネルバが入ってる。最強のもう一人はギルマス。大魔闘演武には参加できないので、ユキノが入ってる(因みにこの設定いらない)。
大魔闘演武で、相変わらず仲間想いの妖精の尻尾を見て、更に彼等への憧憬を強めている。

■ギルドマークは、お互い原作と同じところに入ってる。



* ・ * ・ *



フィオーレ最弱のギルド、妖精の尻尾。
七年もの間、主力となるメンバーが天狼島で消えて、世界は新ギルドの時代へと移ろいでいった。
かつては国一番の最強ギルドとして名を馳せていた頃など、なんのその。本拠地のマグノリアにも、新ギルドが出来ていて仕事はとんでもなく少ない。

――七年という月日は、思っていたより、俺たち妖精の尻尾を窮地に追い込んでいた。

天狼島で消えた魔導士は、七年後の並の魔導士にさえ、中々 勝てやしなくて。
けれどそんな状況に、妖精の尻尾のメンバーが満足するわけがない。
俺たちがいない間に開催が続く、フィオーレ最強ギルドを決める『大魔闘演武』。それに参加し勝利すべく、三ヶ月の修行を経て――漸く。
最強を取り戻すチャンスが来た。



「――っあぁ! もう我慢できねえ!」
「落ち着いてください、スティング君! 僕も気持ちはわかりますが、問題は起こさないようにと、エルザさんに言われてますからね――ハイ」
「ぅ……。わーってるよ、レクター」

開催地、花の都と称される首都、クロッカスにて。
その綽名の通り、街中が甘い花の香りに包まれている。
だが、街の人間はそう甘くないらしく、先程からコソコソと陰口が聞こえてきていた。

「――あれって、妖精の尻尾?」
「そうみたい。左腕のところ。マーク入ってるじゃない」
「結構、男前なのに、妖精の尻尾だなんてね! ウフフ」

「今年もどうせ最下位だろー? とっとと帰って、泣き寝入ってろ!」
「言ってやるなよ。ほんの少しの奇跡を信じて、遠路遥々 来てくださったんだぜ? ハハ!」

――腹が立つ。

「わかっちゃ、わかっちゃいるけどさ、レクター。俺、マジでそろそろキレていいか? いいよな? なあ?」
「我慢! 我慢です、スティング君!」

常人より遥かに発達している聴覚が、聞きたくない言葉の細部まで聞き取ってしまう。
心無い一言ひとことが聞こえるたび、握りしめている拳の力が強くなった。
それも相棒の言葉でどうにか緩めて、どうにもならない気持ちに溜息を吐く。
予選当日の今日。開催側の指示で、零時までは各自 自由行動オーケーだ。
長い間、訪れたことのなかったクロッカスは、実に変貌を遂げている。
その街を観て歩きたいだなんて、野暮だろうか。
初めはローグとフロッシュも、と誘ったのだが、どうせ暇な奴らに絡まれるから嫌だ、フロッシュをそんな目に合わせられない、と半ば宿から追い出されるようにして断られた。
ほぼローグの理由じゃねえか、と思いつつ、部屋に鍵まで閉められてしまったら、反論も飲み込んでしまう。

行くところ行くところ、先々で俺のギルド――妖精の尻尾の陰口ばかりが目立つ。こればかりでは、折角の観光も最悪な気分だ。俺の堪忍袋の緒は切れる寸前、レクターだって俺を宥めてはいるが、気分は良くないに決まっている。
なにせ大事なギルドを馬鹿にされているのだから。
……それに。

「やっぱり、今年の一位も剣咬の虎で決まりよね!」

誰かの台詞が聞こえて、通りすがりに聞き耳を立てた。
新ギルドの先頭を仕切っている、現フィオーレ最強ギルド、剣咬の虎。
俺らに言われる陰口と同じくらい、剣咬の虎への賞賛の声がすでに聞こえていた。
七年前にはなかったこのギルドは、ある五人のメンバーが加入してからグングンと実績を上げたらしく、今では名を聞いただけで、泣く子も黙る最強へと登り詰めたらしい。
それだけだったら、俺も今大会のライバル、とだけの認識で終えていただろう。勝つのは俺たち。そう俺の中では決まっているのだから。
だがそれ以外に気になるのが一つ。
最強の五人と称されている、その中に。
『火竜』と呼ばれる『滅竜魔導士』がいるらしい、ということ。

今の所、俺が知る中で、滅竜魔導士はソイツを入れて七人。妖精の尻尾に俺、ローグ、ガジルさん、ウェンディ、ラクサスさん。闇ギルドに一人――コブラ。そして件の、剣咬の虎の火竜。
探してみたら、滅竜魔導士はもっといるのかもしれない。けれどその存在はとてつもなく貴重なハズで、少ない。
更に、噂ではその火竜は、第一世代――竜の魔水晶を入れてはいないが、竜に育てられた魔導士と言うじゃないか。
名はまだ知らないが、ガジルさんとウェンディは、同じ第一世代として、とても興味を持っていた。俺やローグも、同じ魔法を使う者として、それとなく興味を抱いていて。
きっと強い。大魔闘演武にも出場するだろう。興味本位でだが、その姿を一度でいいから拝んでおきたかった。
――と言っても、これもまた噂だが……その火竜、とてつもなく破天荒な上、とんでもない破壊魔だそうで。
あまり想像したくはないが、それはそれは屈強な男で、その名に踏ん反り返り、その上至る所で傷害事件を起こしているような――いや、それは言い過ぎか。
でも多分、凄い嫌な野郎なんだろう。これも噂ばかりの超偏見なのだけれども。

「どうしました? スティング君」
「……ああ、いや。なんでもねえよレクター。行こうか」

ぼう、と物思いに耽っていた所を、レクターに問われ現実に戻る。
そろそろ宿に戻らなければならないだろう。時間に遅れて仕舞えば、エルザさんにとんでもない罰を受けさせられてしまうに違いない。
レクターにも思案が伝わるように声をかけて、――その場を立ち去ろうと足を踏み出したところで。

「喧嘩だー!」

ざわ、っと周囲が一瞬だけ騒めいた。ふと足を止めて、叫び声が聞こえた方へと振り返る。レクターも同じようにそちらに目を向けた。
喧嘩か、大会に……いや、祭に喧嘩はつきものだよなァ、と他人事のようにに思う。まあ実際、他人事だし。
もっと立場が違ったら、喜び勇んでそのテには参加する方なのだが、今日はいかんせん、騒ぎを起こしたくはない。

騒ぎの中心であろう人だかりを一瞥しつつ、今度こそ帰ろう、とレクターに声をかけようとして、

「どこの馬鹿が喧嘩してんだ?」
「あぁ――あれだよ、アレ! 噂の最強が一人……桜色の髪の!」
「桜色って……。剣咬の虎の、火竜か!?」
「っ、そうそう、ソレ! 火竜――確か、ナツ・ドラグニルだよ!」

喉につっかえた。
騒ぎの中心へと駆けながら、男たちは器用にも会話して俺の隣を去っていく。
レクターが下から、驚いたように俺の顔を覗き込んでいた。きっと俺と同じ会話を聞いたんだろう。
その目に少しだけ興味が抱かれ、瞳が輝いている。

「スティング君!」
「ああ……。レクター、まだちっとだけ時間あるよな?」
「ハイ!」

同じことを思っているに違いない相棒に聞けば、やけに明るい返事が返ってきた。

共に、喧騒の中心部へと駆けていく。



人だかりの中心部は、面白いくらい綺麗な円を描いて空間が出来ていた。
もちろん件の火竜と、喧嘩相手がいるからで、その被害を被りたくないからこそ。
人を押し退けながら、火竜の顔が見れる位置へとたどり着く。
最初に見えたのは――赤く燃え滾る、炎。
一瞬だけ、とてつもなく鮮やかに見えたのは、幻覚なのだろうか。

「くっそ、ふざけんな! お前等がしつこく喧嘩ふっかけてくるから、仕方なく相手してやったのに! 弱いじゃねえかよ、怒られんの俺なんだぞ!」
「ナツぅ、もう全員気絶してるよぉ」
「っ〜! 不甲斐ない!」
「それにこの人たち、喧嘩売ってきたんじゃなくて、ナツのことナンパしてたんだよー。罪作りだね、ナツ」
「? は? 難破……?」
「細かくいことは気にしなくていいよ! あい!」

ガクガクと相手の襟首を掴んで、それ以上揺らしてやるな、ってくらいに少年が男を揺さぶっていた。
少年の周りには、男たち数人が綺麗に弧を描いて倒れている。少年の身体より一回り二回り大きい奴等が、だ。
……正直、愕然とした。
先ほど聞いた火竜の情報は、ナツ・ドラグニルという名前。――レクターと同じような青い猫が「ナツ」と呼んでいた。そして、桜色の髪。――見紛うことなき華麗な色が、少年の髪を彩っている。
じゃあ、お世辞にも青年と呼べぬような外見の、この男が!

「火、竜?」

つい声に出ていた。
すると、男の襟首から手を離した、火竜と思しき少年が、言葉を聞き取ったのかこちらを見た。
バッチリ、視線が合う。
数分にさえ感じとれるような、けれどもたった数秒の間。俺は即座に相手の体躯を眺めた。
筋肉はついているのに、同年代より少々 身体が薄い。肌の色素も、平均的な男のそれよりは、薄いような気がする。特に目を引くのは、やはり桜色だろう。火竜と称された所以でもあるのだろうか、少しの明かりでも淵がキラキラと光り、炎の様な。目は、女のそれに負けずとも劣らない大きな釣り目。その色は、これまた猫のような金色だった。
――って、何を見てんだ俺は、とここまで数秒間で考えて、思考を止める。

火竜が……ナツ、が、なんだかとても目を輝かせて俺を見ているのを感じて、だ。
なんだか居心地が悪くて、目が合ったのも縁だと、反応を示した。

「そこの桜色の男の子、お前が剣咬の火竜?」
「え、あ。そ、そうだけど」

照れたように頬を赤くして、火竜は俺の問いに答える。肯定。どうやら本当に、剣咬の虎が最強の一人、火の滅竜魔導士らしい。
男に対して失礼というか、思いたくもないというか……もちろん言うつもりもないけれど。
こんな『可愛らしい』背格好の少年が、破天荒で破壊魔だという、火竜その人とは。
返せ、俺の想像図――いや、それはいいかな。

「そ、そういうお前、は……妖精の尻尾の、白竜?」

今度はこちらの番だ、と言わんばかりに、ナツという少年が問い返して来た。
先程とは違い、その瞳は輝きを失って、疑っているかのようだ。
青い猫は、いつの間にかナツの頭上に鎮座して、興味ありげに俺をジロジロと眺めている。
しかし、口を出す気は無いようだ。
じっ、と見つめてくる一人と一匹に、少したじろぐ。

「まあ、……一応ね」
「っ――!」

途端、さっきのなんて比べものにならないくらい瞳を……表情全体を、ナツが輝かて。
つい、ギクリと身体を揺らしてしまう。あんな全身から好意を伝えられるのは久しぶりだ――しかも、初対面の相手に。

「わぁ、わあ! 本当か? いや、本当ですか? うわあ。マジで? 消えた天狼島から帰って来たって話、本当だったのか!」
「ナツ、落ち着きなよ」
「これが落ち着いてられるかっ! ……ま、マジで? 嬉しい!」

彼の緊張していた表情が、ふにゃりと破顔される。
うわ、これまた可愛いらしい。
ハッとして、この思考は異端か、と慌てて打ち消そうとするが、周りもその向日葵のような笑顔に、若干頬を染めている。
その笑顔が、自分に向けられているわけではない、とわかっていても。好意を溢れ出させている、裏表のない笑顔に、なんだか気恥ずかしくなるに決まってる。
だから――俺の思考は普通なはずだ。
多分、割と、結構、……絶対。

「オレ、オレな! 妖精の尻尾にすっげえ憧れてたんだ! ってこれじゃ過去形……今も! 超憧れんの! そのメンバーに会えて良かったぁー」
「そ、そう?」
「しかも滅竜魔導士とか! オレ、他にそーゆーの、会ったことなかったし――白竜とか、週ソラで見てから一番 憧れた!」

にっこり。
屈託のない笑顔に、俺としたことがタジタジになる。ふと下げた視線の先に、レクターも少しだけ頬を赤くして、呆然とナツを見ていた。

「ねえナツ、そろそろ行かないと……。他はともかく、ユキノに心配かけちゃうよ?」
「あ、そうだな。そろそろ集合時間だし」

興奮冷めやらぬ相棒に、青い猫は冷静に伝えた。
俺もその言葉に我に帰る。道の途中にある時計には、あと一時間ほどで零時になる位置に、長針が座していた。
レクターもこちらを仰ぎ見ていたので、了解の意として頷く。

「それにまた喧嘩しちゃったからねー。ギルドに連絡行く前に、トンズラしちゃおう!」

何を言うかこの猫。
可愛い顔してとんでもない毒を吐いた青い相棒に、疎いのかスルーしているのか、ナツはそうだなとだけ頷いた。
喧嘩を見に集まった人だかりは、それが終わっているのを感じ取って、次々と解散していく。倒れていた何人かの馬鹿は、その人混みに混じって居なくなっていた。

「あ。な、なあ」
「?」

俺らも帰ろう、とどさくさに紛れて踵を返していたところを、二の腕を掴まれて阻止される。
俺の目線より低い場所に、ナツの顔が見えて、何か他に用でも、と少しだけ足を止めることにした。
こちらとしては、少しの予想外が多く起こったものの、気になる顔や体躯も見れたし、ほんの少しだが魔法も見れたので、大収穫の万々歳なのだが、少しくらいならと気分で乗ってやる。
それに、好意だけの感情が、陰口のせいで霧のかかっていた心に良かったから。その礼みたいな。

「あ、握手してくれ!」
「へ? あ――別に、いいけど」

そう答えるとすかさず右手を掴まれて、ぎゅっと握られた。
たかが数秒、されど数秒。火の魔導士だからか妙に高い体温を感じて、こちらも少しだけ握り返す。
するとナツは、更に表情を綻ばせて。離す直前、また強めに握られてから、手を離された。
へへ、と照れ臭そうに笑いながら、ナツはくるりとこちらに背を向けて、俺とは反対方向へと歩いていく。

「妖精の尻尾と白竜スティングは、オレの憧れだけど――俺は剣咬の虎のナツだから、明日から敵な。憧れの人でも、オレは絶対 手加減しないからな!」
「そ、それはこっちの台詞」

変に上機嫌な彼が、街灯をバックに大きく手を振った。ハッピーみたいな赤い猫もじゃあな、と声が聞こえたので、多分レクターのことだろう。こっちを見て歩きながら手を振る姿は、俺と年があまり変わらないはずなのに、危なっかしい。

俺と同じような顔をしたレクターが、一言。

「いやはや――なんというか。聞いていた実力主義の剣咬の虎のメンバーにしては――底抜けて明るいような――」
「そう、だな」

未だ彼の体温が残っているような右手を眺めながら、俺は内心、ひどく項垂れた。

『嘘だろ、なんか、なんか、

――滅茶苦茶、可愛かった……!』

本来、血の気が引くだろう呟きは、俺の頬を無駄に熱くさせるだけで。
ストンと気持ちとして落ち着いて――更に、俺は項垂れてしまったのだった。



「良かったね、ナツ! 天狼島の事件からずーっと気にしてたもんね!」

剣咬の虎が泊まっている宿への道中、桜色の友人に言えば、ひどく嬉しそうな笑顔が返ってきて。

「ああ、本当よかった。これで、正々堂々……妖精の尻尾と闘える」

今までの妖精の尻尾が、本来の力を扱えなかったのはわかっている。
それでも手を抜くことは、ギルドマスター ジェンマの手によって許されず、ナツはずっとやきもきしていた。
しかし、今なら。主力のメンバーが戻ってきた、今年の妖精の尻尾ならどうだろう?
憧れていた、仲間想いのギルド。かつて最強と言われていた、とびきり騒がしいけどカッコ良かったギルド。そして憧れの滅竜魔導士と、彼らが多く集うギルド、妖精の尻尾。
多くのメンバーが三ヶ月ほど前に戻ってきたと聞いて、跳ね上がりそうなほど喜んだのは言うまでもなく。
今日に至るまでには、その感情は落ち着いたものの、やはり白竜その人に会ってしまえば、簡単に憧憬は戻ってきてしまうようで。

週間ソーサラーでしか見たことのなかった、白竜スティング。彼がこのクロッカスにいるということは、妖精の尻尾はきっと参加だ。
そして、多分白竜も――。
これはナツの憶測にしか過ぎないのだが、何故だろうか、そう思えて仕方ない。
そうでなくても、気分は高揚していく。まさに右肩上がりだ。

本当だったら、今頃あのギルドで、そのメンバーの一員として出場していたのかもしれないけれど――。

そこまで考えて、ナツは頭を振った。

「オレは、剣咬の虎の一員だからな。みんながそう、思ってなくても……オレは家族のために、闘うんだ!」

拳を高く突き上げ、叫ぶ。通りすがりの人々が数人、何事かとこちらを見るが、ナツだとわかった途端に、点頭したように目を細めて去っていく。

――いつか、実力主義の剣咬の虎を、変えられたら。

それはナツだけの細やかな夢に過ぎない。だが、産まれた時からナツに多くの愛情を与えられたハッピーは、いつかナツなら、とずっと陰ながら応援してきた。
いつかその夢が、その感情が報われるのを、それこそハッピーが夢見て。

「応援するよ、ナツ! 白竜だろうが影竜だろうが――天竜も鉄竜も雷竜も、けちょんけちょんにしちゃえ!」

青く小さな相棒の応援に、ナツはハッピーを抱き締めてもちろん、と破顔したのだった。



――その頃。妖精の尻尾の宿にて。

「だから、滅茶苦茶に可愛かったんだって!」
「そんなことは聞いていない。俺はその、火竜というのがどれくらい強いのかと」
「それは……肝心の喧嘩シーンを見てないから……。ワカリマセン」
「お前――舐めていると、足元掬われるぞ」
「フローもそーもう」
「ま、魔法は炎っぽかったぞ!」
「そんなの、綽名が火竜の時点でわかる」
「っ、だってよー、なんか可愛かったもんな、な? レクター!」
「えっ。ああ、まあ……剣咬関連で聞いた噂よりは、怖い感じはしませんでしたけど……」
「だよなあ!」
「……自分の相棒を困らすな、スティング」

妖精の尻尾の双竜とその相棒たちが、終わらぬ論議を繰り広げていたとか、なんとか。



next?



* ・ * ・ *



次回予告!?

いよいよ開催された大魔闘演武!
スティングのギルド 妖精の尻尾は、新ルールの適用により二つに分かれていて……!?
スティングたちAチームは、予選順位最下位の八位からのスタート!
対する軍勢はBチーム他に、蛇姫の鱗や人魚の踵、大鴉の尻尾――そして最強最高の剣咬の虎!

「ぜってー勝つから!」
「え、何? 知り合い? スティング」
「あー……。あれが噂の火竜、ナツだよ」
「へーあれが……って、えぇっ?!」

今まで多くを知られてこなかった最強の一人、火竜に会場騒然!

そんな中、いよいよ手加減無用の本気戦闘(バトル)が始まる……!!

「馬鹿にすんな、和で繋がれた妖精の尻尾は強ぇーぞ」
「やっぱ……やっぱりカッケーなあ……。妖精の尻尾……」

家族の和で繋がれし、かつての最強、妖精の尻尾が勝つのか!
最強で構成された、現在の頂点、剣咬の虎が勝利するのか!
その鍵を握るのは、いったい誰……?!

「なあ、一緒にご飯食べに行かね……ですか。オレ、奢るから!」
「いやー、なんだかなあ。……とびきりの好意って、なんか恥ずかしいな」

そして、スティングとナツの関係に、進展はあるのか!?



次回、20XX年、4月1日更新!
デュエル☆スタンバイ!!



* ・ * ・ *




……なんて嘘だよ!嘘嘘!
エイプリルフール終わってるのも嘘!
書き終わらなかったのも嘘!
今年も終わってしまいましたエイプリルフール……
初めてちゃんと、季節ものというかイベントもの描いたのに……
自分の優柔不断さ、ほんとねーわですよ、ええ。
アッ、とんでも設定で申し訳ない。矛盾等々、無視でお願いいたします。
因みに4/2は、本当のことしか言っちゃいけない日だそうです。
……私の時計はまだエイプリルフールその日なので、大丈夫ですね。

(2015.04.02)
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