オフレコ

■自身が落ち着いたので息抜きに。原作もアニメも見きれてない、ダメ人間が書いたので、かなり注意です。
お題はツイ診断から。




それはまだ、俺が片想いしていた頃の。俺の想いが相手にバレてないと、青く思っていた頃の話。

願い倒して、漸く同じクエストに就いてくれたナツさんと共に、任務先近場の街へ赴いた。
それなりに大きな街の中央広場で開かれていたのは、『大告白チャレンジ大会』。その名から想像できると思う。ルールは簡単、当たって砕けず想いを成し遂げよ、青年たちよ。まあ、あわよくば砕けてしまえ。ってルールだ。
性愛はもちろん、友愛、親愛まで幅広い愛が、広場に響く。子供が親へ、親が子へ、友が親友へと好きだ、と想いを告げていく姿は、なんだか微笑ましい。
が、やはりというかなんというか。
その参加者の殆どが男。その中でも想い人に当たって砕けなかった者少数、砕けた者多数。
拡声魔水晶で、広場どころか街全体に伝わるのは、告白のみならず、悲しいかな相手の御返事付き。
街全体に響く、多様な愛の告白が、己の耳に痛い。
せめて親愛という形だけでも、隣にいる桜色に告げられたらいいのに。
――なんて、砕けるのも厭わない勇者たちに、己が加わることもできずに思った、僅かな隙だった。

「なあ、お前はオレに告白しねえの?」
「……はい?」

くい、と服の裾を引っ張られ、意識をそちらに向けると、不思議そうな顔で俺の眼を覗き込む愛しい桜が、何かを言う。
言ったことが理解できず、思わず素っ頓狂な返事を返してしまった。
もう一度言ってくれ、と間違って伝わったのだろうか。ナツさんは、だから、と繰り返す。

「オレに告白してくんねーの?」

あれで、と細い指でナツさんが指したのは、大会のステージ上。拡声魔水晶。つまり。……つまり。

「俺が、あそこに立って、ナツさんに、告白をしないのか、って、こと?」

一字一句、ハッキリゆっくりと聞き直すと、返ってきたのはまるで『当たり前』と言わんばかりの声色。

「だってお前、オレのこと大好きじゃん。好きじゃなくて、愛してる的な意味で」

的な。
大きな猫目をぱちぱちと瞬かせながら、どうしてそんな事を聞くの。クエスチョンマークがナツさんの頭上に浮かんでいる幻覚が見えてしまった。
そんな表情したいのは俺の方だよ。

「……いや、なんで知ってんの?」

我ながら慌てすぎだ、もっと上手いこと返せよ!
もう遅いながら心中で己を罵倒する。

「ばあか、バレバレだ」

悪戯が成功した子供のような、憎たらしくも、思わず許してしまうような甘い笑顔で、ナツさんは答えた。
いつからだ、あの時か、この時か。いや、もしかしたら初めっから。
って、今 そんなん考えてても意味ないし!
時間にして0.2秒。どうにか次の言葉を選んで急ぎ口に出す。

「うん、まあ、あぃ愛してるけどさ」

くそ、最悪だ。吃るなんてなんと格好悪い。

「……この想いはさ、ナツさんが俺のこと、目が離せないくらい、匂いで追ってしまうくらい、――そんくらい好きになってくれるまで、伝えんの待つつもりだったんだよ。……だからさ、もうちょい、」
「……お前ほんとーバカだな!」

途中まで真剣な顔をして話を聞いていたナツさんが、いきなり声を上げた。真剣な表情から一転、呆れたような苦笑いで俺の眼を見つめている。
俺からしてみたら、理想の告白には程遠いにしても、想いを打ち明けてるには変わりないのだから拍子抜けだ。

「オレはお前のこと、嫌いだなんて思ってない。……好きだとも言ってないけど、お前に告白しろって言う。この意味、バカでもわかるだろ?」
「……ぇ」
「あーあ、白竜はとんだ間抜けだな。オレの返事も聞かないで自己完結かよ、バカ」

拗ねたようについと顔を逸らす姿は、惚れた弱み抜きに愛らしい。
ていうか。ここまでされたら白竜の名どころか、俺の中の男が廃る。もしかしたら既に、廃れてるのかも。ああでも、彼の中ではとっくのとうに廃れているはずだ。
そんなの、格好悪すぎるだろ。

「ああ、クソ。やっぱり好きだ……敵わねえ」
「当たり前だろ、お前が惚れ込んだ相手だぜ?」

惚れ込んで惚れ込んで惚れ落ちた、向日葵のような笑顔。そんなん、惚れてなくても反則だ。

「……とりあえず、受付 探したくるわ」

桜色の向日葵は、満足したように、いってらっしゃいと言った。


読み返すのも恥ずかしい……!
(2015.03.20)
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