現実見ろ! ドリーマー

■男前リヴァイさんと乙男エレンちゃんの話(?←)
■現代パロ
■企画もの。魅也さまに捧ぐ


「えーっと。……お、と……めん、っと……あっこれか?」

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オトメン(乙男)とは、

乙女的趣味・考えを持ち、料理・裁縫など家事全般に才能を発揮する男子。また乙女な心を持ちつつ、男らしさを兼ねそろえた(若い)男性(イケメン)のことを言う(後述の漫画『オトメン(乙男)』では充太が命名)。英訳は「girlish boy」。…ーー

そこまで読み上げて、エレンはそっとスマートフォンのホームボタンを押した。画面は自動的にホーム画面に戻る。眉間に皺が寄り微妙な顔になっていたエレンの表情が、更に歪んだ。
画面の向こう側では、最近十代の女子の中で流行っている、可愛らしいうさぎのキャラクターが笑っていた。

エレンは健全な15歳の男子高校生だ。毎日学校に行き、友人と他愛のない話をして、そこそこ勉強もするし、部活は無所属だが知り合いの頼みで助っ人だってする。
そこまではエレン自身、どこにでもいる高校生だと思っていた。
何故過去形かというと、エレンが数ヶ月前、他の男子高校生との好みの違いに気づいたからだ。
高校生になると、大抵の人間は携帯電話を親から買ってもらったり買ったりして、SMSやアプリゲームを楽しんだりする。
彼ももちろんそんな若者の中の一人なのだが、ある日ふと覗き込んだ友人のジャンのホーム画面を見て驚いた。

*・*・*

『お前……』
『あ? なんだよエレン、勝手に見てんじゃねえよ』
『あっ、いや、悪い……なんか、地味な壁紙だなと思ってな』
『あぁ? 地味? どこがだよ。俺の好きなアーティストの写真だろうが。確かに派手とは言わねえが』
なあ、普通だよな?
え? ああ、別に地味だとは思わないけど……
すぐ隣で話を聞いていたマルコに問いかけるジャンと彼の会話を聞きながら、エレンは静かに打ちひしがれていた。
自分のスマートフォンを起動する。ロック画面はお気に入りの写真だ。幼馴染三人そろって撮った写真。
パスコードを入力しホームに移る。無料でダウンロードした壁紙。パステルカラーのピンクで飾られているそれは、最近お気に入りの可愛いうさぎのキャラクターだ。
『エレン? どうしたの、なんか顔色悪くない?』
問われ、エレンはすかさずスマートフォンをズボンのポケットに収める。
『いっ、いや! そんなことねえよ! あっマルコ、お前の壁紙も見してくんねえ?』
『いいけど……僕のガラケーだからあんまり面白くないよ』
『いいって』
はい、と言ってマルコは胸ポケットから携帯電話を抜き出した。個人情報の詰まっているそれを手放すことに、あまり執着してないようだ。
エレンはさんきゅ、と短い礼をいって、携帯電話を受け取ると、すぐさまガラケーの上方を開いた。
表には出さなったものの、エレンはやはり驚く。画面には美しい夕焼けのオレンジに染まる空が。
『僕、綺麗な風景の写真撮るの好きなんだよね。はは、ちょっと女々しいかな』
『! いや、別にいいんじゃね……っ? わり、ありがとな』
蓋を閉じてマルコの手元へ返す。ジャンはそれを見ながら片眉を上げた。
『いきなり壁紙見せてくれって……なんか怪しいな。ていうか、手前のやつはどうなんだよ』
『えっ』
『なんかズリーじゃねえか。お前のスマホの壁紙も見せろよ』
ほれ、と手を出してくるジャンの顔と手を交互に見て、エレンはポケットに収まっているものを布越しに抑える。
何故だか他人に見られたくなかったのだ。特にジャンには。脳内でミカサがダメだと言っている。
『べっ、別にいいだろ! 俺、アルミンんとこ行ってくる!』
『あっ、おい!……なんなんだよあいつ』
特にどうしても見たい! と思っていた二人ではないので、廊下に逃げて行くエレンのことを追いかける姿勢は見えない。
『うーん、単純に見られたくなかったんじゃないの?』
『いや、ますます怪しい……。まっまさか好きな女子の写真……! みっ、ミカサとか!?』
『いやいや、無いない。それに好きな人の写真て……そんな女々しいことしないだろう、あのエレンが』
マルコのセリフが、廊下へ出る直前だったエレンの背に突き刺さった。

*・*・*

思い出して彼は頭を抱える。
あの後アルミンの物の画面を確認させてもらったのだが、エレンがロック画面に設定しているものと同じ、三人が写ったた写真が壁紙で更にショックを受けた。
ドラマの受け売りもあってそういう" 趣味 "の人は少ないのだな、という考えもあった。乙男、という単語は朝のテレビで特集を組まれていて知っていたけれど、同じ好みや趣味を持つ人はやっぱりいるよなあ、という程度の感想を抱きながら見ていただけ。
人の携帯を覗き込む理由も価値も、特に無かったので今までなんとも思わなかったのだ。

自分の好きなことが 女々しいこと、 に分類されることが。

彼の部屋には物があまりなく、ある人のせいか綺麗にしておく癖がついていたので、他の人より片付いてるように見える。
ただ、趣味や好みで集めているそれ等がなかったら、だが。
ベッドの上には通販で買った、可愛いクマの大きな抱き枕。ベッドに備え付けの棚には、幼い頃母が作ってくれたテディベア数点。
枕元には貰い物の、携帯の壁紙と同じうさぎのぬいぐるみ。
客が来たとき用に使う座布団は可愛らしい花柄だし、その時に使う座卓は優しい色合いのピンク(ちなみにこればかしは母が買ってきた)。
いつも使う学習机には、UFOキャッチャーでとったキーホルダーや、彼の趣味を知っている家族や幼馴染のミカサ、アルミンから貰った置物、ストラップが整頓され飾られている。
ここまで没頭している可愛いもの集めと可愛い物好きがバレなかったのは、色々な運が重なっているとしか思えない。
まずは、自室に出入りする人間があまり居ないこと。その僅かな人たちも、エレンのことを誰かにいう人がいないので、どうにかなっていた。
あとは彼自身が、鞄などに物をジャラジャラ付けるのが嫌いだったから、可愛いキーホルダーは外にでることはなかったし、スマートフォンカバー(黒一色)を買ってくれたのが父であったりしたから……。
と、公にならなかったのがこれらが大きいのだろう、とエレンは考える。
しかし十五歳にもなった男がこんな少女趣味なのはどうなのだろうか。
数ヶ月前のあの日から、携帯からはじまり、男子の手荷物や会話を聞いて確信した。
この趣味は 異常 だと。事情を知るアルミンからは、自分の好きなことはした方がいいと言われたが、これが周りにバレたら、さすがに羞恥で死んでしまうかもしれない。
ただでさえ、学校では「わりと男気」だと言われているのだから、たまったものではない。
「……決めた」
エレンはスマートフォンをの設定画面を開くと、壁紙をシンプルなものに変えた。
「俺は……少女趣味をやめてやる!」
そう、これは(彼にとって)名誉を賭けた戦いなのである。

*・*・*

「と、言うわけで、俺はこのぬいぐるみとも卒業しますよ」
客用の座卓の上には、美味しそうなホットケーキが、ほかほかと湯気を立てて食べられるのを待っている。
用意された座布団は二つ。向かい側には若い男が胡座をかきながら座っていた。
「ほう……。そう言う奴は、わざわざ自分でホットケーキ作って、男の俺に提供するもんなのか?」
「うっ……それは……」
「この布のコースターも、お前の母親と作ったってこの前聞いたような気がするな……?」
「えーっと……」
「今も膝にぬいぐるみ乗せてるしな。卒業できねえだろ、それじゃあ」
「降参です、リヴァイさん!」
もうやめてください! と叫んでエレンは恥ずかしさから頭を伏せた。リヴァイはふっと笑ってエレンの用意したアイスコーヒーを飲み込んだ。
氷が溶けても薄くならないように少し濃いめに作られたそれは、砂糖もミルクも入ってなく、完璧にリヴァイの好みに作られている。
「第一、最近は家事ができる男なんてたくさん居るだろうが。それに好みは人それぞれ。馬鹿にされる筋合いなんてねえだろ」
そう言うのはリヴァイだ。イェーガー家の近所に住む、エレンの父の母の弟の嫁さんの……いわば遠い親戚だ。補足することといったら、彼はエレンの恋人という立場にもある。そこに辿り着くまでに色々あったのだが……今回は割愛させていただこう。
頭脳明晰な生徒が排出される、某有名大学に通う彼は、もちろん頭が良い。
上の大学を目指すエレンに毎週日曜、勉強を教えてくれる無料の家庭教師(恋人)だ(今は休憩中)。
「そうですけど……。軟弱だと思いませんか?」
エレンが伏せていた顔を上げた。
「知らん。まあ俺が初めて知った時は、少し引いたがな」
「やっぱり!」
「……頭を下げたり上げたり……忙しい奴だな手前は」
エレンが項垂れている間に、リヴァイは冷めない内にと、フォークをホットケーキに切り込みをいれる。ふんわりとした感触が食器越しに伝わった。口に含むと、優しい甘みが広がってゆく。美味い。
「エレン」
「……はい?」
「美味いぞ」
二口目に切り込みをいれて、正直な感想をのべた。すると面白いほどに、エレンの周りの空気が華やいでいく。表情はわからなくとも、今どんな感情を抱いたはわかった。
言葉も空気も正直な子ども。ごく少数しか知らない姿に、リヴァイは少しした優越感に笑った。
「嬉しいです!」
恋人の甘い空気が部屋に広がり、満ちていく。エレンは嬉しそうににっこりと笑いながら頭を上げた。
「でもやっぱり、ぬいぐるみとかからは卒業しますよ」
「っち……」
ん? 舌打ち? エレンはしていないのだから、どう考えても舌打ち犯はリヴァイだ。
「おいエレン、なんでそんなに頑ななんだ」
「だ、だって、学校でこういうものが好きなのバレたら、恥ずかしいじゃないですか! むしろ、貴方こそなんでそんな頑ななんです」
膝の上で耳を揺らすうさぎは、リヴァイからの誕生日プレゼント。
腕の下に手を通し持ち上げ、ずい、と相手に見せつける。
「何を今更。つうかそれ買うのすげえ恥ずかしかったんだから文句言うんじゃねえ」
「特にバレたら厄介なやつがいるんですよ! っていうかこれ店で買ったんですか? てっきり通販かと……ありがとうございました」
新たな真実に驚愕しつつ、エレンは想像した。ジャンとコニーがにやにや笑いながら、楽しそうに噂を広めていくサマを。
『なーあ、知ってるか〜? エレンって可愛い物大好きなんだってよ!』
『さすが、名前もエレンなんて女っぽい名前なだけあるよな〜! エレンちゃんって読んであげようか? ぶふっ』
にやにやにやにやにや。
ふざけんな全世界の男のエレンに謝れ! 想像しただけで腹が立ち心中言い返す。あいつ等ならやる。絶対にやる。
「……俺は」
「へ?」
「俺は、そのメルヘンチックな人形と戯れてるお前が好きだが?」
「!? た、戯れっ?」
自分の目の前に突き出されているぬいぐるみを、リヴァイは長い指で指した。
とんとん、とぬいぐるみの鼻部分を突つく。
「お前。この前この人形にキスしてたろ」
「!!? なっ、なんで、知って」
「手洗い行った後に戻ってきたら、扉が少し開いてたもんだからなんとなく覗き込んだら、あとは想像通り」
「わかりやすい説明ありがとうござっ、嘘なんで気づかなかったんだよ俺ええぇえ」
耳まで真っ赤になって、ぬいぐるみを抱き寄せる。からかうように楽しんでいたリヴァイは、表情が見れなくなって一瞬むっとした。
だがそこは経験豊富な大人というべきか。
リヴァイは少し考え、立ち上がるとエレンの横にしゃがんだ。気配が横に移ったのを感じて、少年は更に柔らかいそれに顔を埋める。
「ーー料理を作るときの楽しそうな後ろ姿も」
「………」
「抱き枕抱えて眠るお前も」
「………」
「馬鹿みてえにガキくさくて」
「………」
「馬鹿みてえに女々しい」
「……ッ」
びくり。
エレンの肩が揺れた。女々しい自分はやはり嫌われているのだろうか、と考えてしまう。
しかし、少し落ち着きを取り戻したあたりで気づく。声色も雰囲気も、けっしてギスギスしてなく、逆に甘ったるいような、そんな雰囲気だった。
「……?」
そっとぬいぐるみから顔を離す。
見計らったかのように、唇にそっと何かが触れた。準備も何もしていなかった彼は目を開いたまま、それを受け入れる。眼前には、リヴァイの顏が。
「むっ……、……!?」
本当に触れるだけの優しいキスに、それ以上のことをしている関係なのに、初々しさに赤面する。彼が離れていく中、エレンはばっと口元を手で覆った。
「だが、馬鹿みてえに可愛いんだな、エレンよ」
それは恋人だけにこぼす優しい笑み。恋人のエレンにだけ触れる、優しい手。耳にかかっていた髪をそっと触り離れていく。
滅多に見れない表情に、エレンの脳内はやかんが沸騰するがごとく発熱していた。
「まあ、今度からはぬいぐるみじゃなく、俺にできるよう頑張るんだな」
「ふぁ、ふぁい……」
ぷしゅう。気が抜ける音が聞こえたのは、おそらく気のせいではない。
「お前のことがまとめて好きなんだ、自分の趣味や好みを変えるなんて、できねえことするんじゃねえ」
「はい……」
「じゃあエレン」
突如肩をつかまれ、押し倒される。数秒たって何事かを理解したエレンは?マークを頭上に大量に浮かばせた。
キス以上のことをしている間柄、この状況は想像に固くない。
「あっあのリリリリヴァイさんっ!?」
「なんか不都合でもあるのか。手前の家、今日親いねえんだろうが。明日は連休だし」
「いやっ、なんでこんな状況になるか意味がわかんな……!」
「ああ? だってお前さっき、はい、っつたよな?」
「趣味や好みを変えないことで……? それとこれどう関係が……」
先程の甘ったるい気配は無い。完全に雄の顔になっているリヴァイに、エレンは涙目で質問した。自分より背が低くとも筋肉のあるこの男に、この少年が力技で勝てたことは、残念ながら無い。
「だから。俺はお前の好みとやらを知り尽くしてやるってんだよ」
「おっ、おっとこまえ〜リヴァイさん! って、これが目当てだったんですか!? リヴァイさんの変態!」
「ほお……言うようになったな」
「ごめんなさい嘘ですすみません」
「自分の言ったことには責任を持て、エレン・イェーガー」
「いっ、いやほら、まだ夕方ですし……ね? ホットケーキ冷めちゃいますよ?」
「チッ……良いからさっさとヤらせろ」
「ちょっ、まっ、少しはさっきの甘い雰囲気味わらせて下さいよおおお!」

ーーその後のことは、彼ら本人と、ベッドの上のぬいぐるみ達のみ、知る?


いや、まあpixiv投稿するときはR18タグつけませんし……ね?\(^o^)/
なんかもうだれちゃう…… 冒頭の検索結果は、wiki先生からいただきました
■前に比べて三人称書けなくなりました……>_< それで一人称書けないから、もう残念としか言いようが無い
■それにしてもまたまたありがちネタで、被ってしまっている人がいたらごめんなさい> < ■男前も、乙男も、私にはわかりませんは……。正直、ジャンとマルコとの会話の下りが一番楽しかった
☆魅也ちゃん//企画参加ありがとう、こんな駄文でよけらばもらってくださいな! 長いお付き合い、これからもよろしくお願いしやす、姉御! サイトも頑張って。お互いやっていこう。では!

(2013.09.05)
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