雨模様 | ナノ
第41話

やっぱりオレだけ素顔を見れなかったのって不公平だと思う。頑固なこいつからサングラスを外させる方法を考えた結果、素直に頼むのが一番だという結論が出た。

「なーハル、頼みがあんだけど」

「ん、聞く。何でも…言って」

「ぶはっ、そんな硬くなんなって!」

一体どんな大役を任されるつもりだったのか。表情を硬くし神妙に頷くハルに耐え切れず吹き出した。

「あのさ、それとってよ」

「え…あ…こ、これ…?」

自分の目の周りを指差してそう頼むとハルは出会った頃のように吃り始めた。動揺してんなあ。

「あ、あの、め、目があるだけで、何も面白いものはついて…ないし、おまけに泳ぎまくって…不快な気分にさせると、思う…」

「んなの気にしねーよ」

出会った頃のハルはサングラスに加えてマスクをして黒いマントを羽織り目深にフードを被っていた。それはハルなりの他人を遠ざけるための手段だったらしい。

マスクを取りフードも外した今でも他人と目線を合わせられないことを気にしてサングラスだけは外さないままだ。理由も気持ちもわかるけど…

「オレ、ハルの目見ながら話したい」

「で、でも…」

「どうしてもダメか…?」

俺の問いに対して不快にさせるとか眩しいとか小さな声でごにょごにょと呟くハル。おっ、抵抗が弱い。やっぱりハルには真っ直ぐ頼むのが一番効果あるな。

「……とっていい?」

ハルに近づいて、もう一押し。

ハルは落ち着きなくキョロキョロとしていたけどやがて観念したのか小さく頷いた。これで了承は得た。サングラスに手をかけてゆっくり外していく。

「………」

な、んか…サングラス外してるだけなのに神聖な儀式みたいで…変な気分になるっていうか…雑念を振り払ってサングラスを外すとハルの目は硬く瞑られていた。ふっと理性が飛んで思わず顔を寄せると薄く開いた目とバッチリ視線が合って、我に帰った。

「ま、眩しい…」

「外曇ってんぜ?」

「キルア光って見える…神様…?」

「神様?!あははっお前って本当変!」

さっきまでの変な気分も吹っ飛んでゲラゲラと笑っていると、ハルも釣られたのか目を細めて笑った。……へーこいつって笑うと目がなくなるんだ。可愛いじゃん。

「……あ、正夢」

「ん?なにが?」

「ううん…何でもない」

ハルはそう言って嬉しそうに微笑んだ。ハルの目はつり目の俺とは違って優しく垂れている。ハルの優しい性格をそのまま体現したようなそんな目元だった。

「サングラスさ、ない方がいいよ」

「…視線…合わせられない、けど」

「徐々に慣れるって。気にすんな」

精一杯の褒め言葉。伝わってんのかビミョーだけど今のオレにはこれが限界。

このあとゴンたちの所に元に戻った途端にゴンが「わっハルまたサングラス外したんだ!やっぱりその方が可愛いよ!」とストレートに褒めているのを見てなんとも言えない気分になったのはまた別の話だ。




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