日常 | ナノ
61日目(木曜日)

今日は父が珍しく「かぶき町に行きたい」と言い始めたのでお供することにした。とはいえ仕事があったので付き添えたのは休憩中の1時間だけだけど。色々あったので日記に残しておこう。

「東の方向に行く」と大雑把な行き先を告げる父に付き添って歩いていると、どういうわけか万事屋に行き着いた。「入るぞ」とズカズカと進んで行く父。父の突飛な行動にはいつもちゃんとした理由があるので止めることはしない。

父が玄関前に立つや否や「ワン!」と可愛い鳴き声と共に、やけに大きい犬が扉を突き破って出てきて、父に頬擦りを始めた。一瞬父がかみ殺されるんじゃないかと慌てたけど犬はお利口だしそんなことしないかと思い直して傍観する。父より万事屋の扉が大変なことになっていた。

中から新八くんが全力疾走で駆けてきて「扉ァァァ!!この間リフォームしたばっかりなのにまた壊して…って、あれ…どちら様?」といぶかしげに父を見る。「父です」と、観察…と言うかもはや触診なの?ってレベルで犬を触っている父の代わりに挨拶をしておく。父は何かに夢中になると周りが完全に見えなくなるタイプなのだ。危なかしくて仕方がない。

新八くんに、父が夢中になっている犬のことを尋ねると、大分前にすぐそこで拾ったんだそうだ。神楽ちゃんが定春(定めるに季節の春という字だと聞いた)という名前をつけて可愛がっているらしい。白くてキレイな犬だった。しかし父が「君は今後この子に何があっても捨てずに飼い続ける覚悟はあるか?」とやけに真剣なトーンで新八くんに聞いていたので、なにか訳ありなのかもしれない。

「え?なんですかそれ。なんか怖いんですけど」とたじろぐ新八くん。少し考えるそぶりを見せてから「捨てたりなんかしませんよ」と話し出す。「まあ…可愛くないときもあるしエサ代もバカにならないけど、定春は僕らの大事な家族だからってイタイイタイ!!!え?!僕今めちゃくちゃ良いこと言ってたよね?!!何この仕打ち酷くない?!!」信じられないことにこの台詞の最中に定春が新八くんの頭に噛み付いたのだ。

流血沙汰になっていたので慌てて何か使えるものはないかとカバンをあさる。父はそんな新八くんに「この子が飼い主面するな、と言っているが…もしかして君がこの子に飼われているのか?」と真顔で聞いていて、直ぐさま新八くんに「んなわけあるァァ!!!」と渾身のつっこみを食らっていた。父さんちょっと天然なんだよね…

このあとは、先日お兄さんへのプレゼントとして多めに買っておいた包帯がカバンの奥底に眠っていたので、それを新八くんに渡してから父を家の近くまで送り届けてコンビニに戻った。ていうか書いてて思ったけど、父さん犬語わかるの?すごくない?今日も父の偉大さをかみしめる一日だった。たくさん書いて疲れたなー寝よ。結局定春くんは何者だったんだろう。父が関心を寄せるってことは何かあるんだろうけど…まあいっか。




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