日常 | ナノ
36日目(日曜日)

なぜだかわからないけれど今朝起きたら父に、明日はかぶき町に行ってはいけない。今日中にコンビニにバルサンを焚いて、明日は店を閉めなさい。と、とても真剣なトーンで言われた。

そんな無茶が通るわけないだろうと思いながらも一応店長に話したら、「夕崎さんってお寺の娘さんなんだっけ?もしかしたら何かあるのかもしれないからそうしようか」と信じられないくらい柔軟な対応をみせてくれた。明日はジャンプの発売日だけど店の売り上げは大丈夫だろうか。というか明日一体かぶき町で何があるんだろう、とても怖い。だけど明日のことは明日にならないとわからないから考えるのはやめにしようと思う。

明日がお休みになったので代わりに今日働くことになってしまった。渋々レジを打っていたのだが、今日はなんと私を辻斬りから救ってくれたお兄さんが来店した。上手く言えないけど、他の人とは明らかにまとっている空気が違うので、中島くんもレジを打つ手が震えていた。一般人ではないであろうお兄さんがコンビニで何を買ったのかとても気になったが、なんだかストーカーぽいので探るのはやめようと思う。

お兄さんが店を出る間際に先日のお礼が出来ていないことに気づいた私は、咄嗟に店の商品を掴んで、店の外でお兄さんを呼び止めた。なんと呼べば良いのかわからず振り向いてもらうために「あの!!!」と声を張ったので喉が今も少し痛い。

お礼を言いながら持っていた品を差し出して、愕然とした。なぜアイス。もっと高価なものがあっただろう。命を救ってもらったお礼にアイスってどんだけお手軽。一周回って逆に嫌がらせになってしまっているんじゃないかと冷や汗を流していると、お兄さんはそのアイスを受け取って「キリがねぇな」と呟いた。「こないだのはたこ焼きの礼のつもりだったんだぜ」って、どんだけ義理堅いのこのお兄さん。どうやら私はあのときのたこ焼きに命を救われていたらしい。

そのあと「そこで働いてんのか?」「はい、そうです」「近いうちにまた来る」「そうですか。またのご来店お待ちしております」というやり取りでクールなお兄さんが盛大に吹いたのだがどこが面白かったのか全く理解できなかった。さ、寝よ。あ、ご褒美買ってないや、まあいいか。




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